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[Fリーグ]変わりつつある絶対王者・名古屋FP森岡「チームが気分良くなるように、勝ちたい」

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 Fリーグを7連覇中の絶対王者・名古屋オーシャンズ。リーグで唯一の完全プロクラブとして、これまで他を寄せ付けない強さを見せてきた。今季もFPリカルジーニョ、FP逸見勝利ラファエルが欧州クラブに新天地を求めた中でも、結局、8節を終えて定位置である首位に立っている。

 だが、これまで強烈な個の強さを前面に押し出してきたチームは、より和を大切にするチームに変わろうとしている。象徴的だったのが、名古屋セントラルで見られたチーム内のFP室田祐希への対応だった。7節の大阪戦で、室田は前後半で各1度ずつしか出場機会が与えられず、失点に絡んでからはずっとベンチにいた。

 満足のいくプレーができなかった室田は極度に落ち込んだ。ミックスゾーンで取材を受けていたGK川原永光が「大丈夫かな、アイツ」と、力なく帰って行く後ろ姿を見て心配するほどに。

 迎えた翌日の湘南戦、名古屋は2点リードの前半13分に室田がPA内でファウルを受けPKを獲得する。得点王ランクのトップを争っているFP森岡薫は、昨シーズンまでであれば、躊躇なくボールを受け取り、自らシュートを打ちに行っていただろう。しかし、「薫さん、お願いします」という室田の申し出を、森岡はキッパリと断った。

「点を取りたいけど、チームが気分良くなるように勝ちたい。昨日の試合は勝ったけど、みんなが気分良く終われたかといえば、そうではなかったから。うまくいなかった選手もいるし、そういう選手たちに対しては、僕ら経験ある選手が、引っ張っていくべきなのかなと思うので。PKの場面は、『今日はおまえが打つんだよ』って。昨日、祐希はロッカールームで泣いていた。良い選手だから獲得したのに、名古屋に来たら通用しないんだって思わせたらダメだから。『2-0で勝っているし、外してもいいから思いっきり蹴ればいい』って伝えたんです。決めたら本人もスッキリして、昨日のことも忘れられると思ったから」

 森岡の目論見どおりに、事は運んだ。室田は移籍後のホームアリーナ初ゴールを決めると、自信を回復。その1分後にはクロスに後ろ足で合わせる難易度の高いシュートも決めて、勝利に大きく貢献した。

 他のクラブは、今季こそ名古屋を倒せるチャンスと目の色を変えている。だが、森岡は、そういう相手が、本当にチャレンジャーに相応しいのかと疑問符を突きつける。

「みんな『名古屋に勝つなら、今しかない』とか言っていますけど、そういうチームが下位のチームに負けているからね。それはダメでしょ? 僕らと優勝争いをしたいチームは、他のチームに負けたらダメ。『名古屋と対等に戦えた』って自己満足しているようじゃ、優勝できませんよ。うち以外のチームにしっかり勝たないと、うちと対等に優勝争いはできない。まぁ、それでいいんですけどね。僕らはフットサルで生活しているし、みんなを楽しませる余裕もない。リーグを面白くしたいなんて、まったく思っていないしね」

 リーグ史上初となったオーシャンアリーナでのセントラル開催2日間で、唯一の2連勝を飾り、より結束を高めた王者・名古屋。彼らを倒せるチームは、本当に出現するのだろうか。

(取材・文 河合拓)

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