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[選手権予選]昨年決勝の雪辱、注目の実力派・関東一が東久留米総合との延長戦制す:東京B

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[10.28 全国高校選手権東京都B大会準々決勝 東久留米総合1-2関東一 東久留米総合G]

 第91回全国高校サッカー選手権東京都Bブロック大会は28日、準々決勝を行い、2年連続の全国大会出場を狙う東久留米総合と全国大会初出場を目指す関東一との強豪対決は、延長前半にDF小松雄貴(3年)と1年生FW角口大征が決めたゴールによって関東一が2-1で勝利。11月11日に西が丘サッカー場で行われる準決勝へ進出した。

 昨年度のAブロック決勝の再戦は、1年前にPK戦の末に涙した関東一がリベンジを果たした。小野貴裕監督は試合前、選手たちが気負いすぎることを避けるためにあえて昨年の分までという言葉を発さなかったが、選手たちにはコーチングスタッフ、先輩、チームメートの思いが十分に伝わっていた。「(ウォーミングアップは)静かだったけれど、身体はキレていた」と指揮官。雨中の死闘ではボールを支配しながら相手を圧倒していく本来の姿ではなかったが、焦れかけても崩れず。主将のCB星清太(3年)が「我慢というのは昨年から学んだ経験だと思う。昨日、先輩から電話もあって負けられなかった」と振り返ったように、昨年から得た経験、思いを出しきって4強切符をもぎ取った。
  
 エースFW菅谷翼(3年)をトップ下に置き、コンパクトな陣形から攻撃を繰り出す東久留米総合は前半9分に相手クリアボールを拾い、左サイドから縦に仕掛けた菅谷が左足シュート。28分にも右サイドから強引に持ち込んだ菅谷のパスからFW斉藤一輝(3年)が左足シュートを放った。一方、中盤の守りの厚い東久留米総合に対して関東一は個の突破力を活かしてサイドから切り崩しにかかる。15分にFW竹本佳(3年)とのパス交換からFW田中ヨシ(2年)がPAへ飛び込み、こぼれ球を竹本が左足で合わせた。そして27分には右サイドを突破したMF小川絢生(3年)の折り返しを田中が合わせ、34分には左サイドを打開したMF字羽井アハマド(3年)のラストパスから小川が決定的な一撃を放つ。だが東久留米総合はGK野中優志(3年)がビッグセーブ。ともにほぼ隙を見せず、非常に緊張感の高い空気の中で試合は進んでいった。

 後半も立ち上がりにワンツーから関東一FW角口がゴールへ迫れば、東久留米総合もスペースへ飛び出した菅谷のラストパスにMF加藤有騎(2年)が走りこむなど互いに観衆を沸かせる場面をつくりあった。特に関東一はMF忠岡義紀(2年)が狭いスペースでもパスを通し、DF2人にプレッシャーをかけられても難なくマークを外してしまうなど中盤で抜群の存在感。だが、東久留米総合の守りには穴ができない。関東一は前半にやや強引な突破からでもSB佐藤碧らがサイドを攻略していたこともあってか、やや力任せに攻めてボールを失う場面も多かった。ポゼッションで優勢に試合を進めながらも相手の堅い守りの前に決定打を打ち込むことができず、嫌な展開になっていた。

 それでも0-0で突入した延長前半4分、関東一がセットプレーからついにスコアを動かす。忠岡の右CKに対し、中央へ飛び込んだのはCB小松。東久留米総合は2人が必死に身体を寄せるが、一瞬早く頭で撃ち抜いた小松の渾身の一撃がゴールネットへと突き刺さった。84分にようやく訪れた歓喜。東京高校サッカーの聖地、西が丘へ大きく近づくゴールに関東一イレブンは殊勲の背番号3に次々と覆い被さって祝福していた。

「ウチが(先に)取れば連続で取れるのは分かっていた」と小野監督。その読み通りに先制からわずか6分後、再び黄色のユニフォームが喜びを爆発させた。10分、関東一は自陣からのカウンターで右サイドを独走した竹本がそのままPAまで走りきり強烈な右足シュート。東久留米総合GK野中は反応したが、こぼれ球を角口に左足で押し込まれて2点差となった。

 ただ強豪対決はこのままでは終わらない。後のなくなった東久留米総合がPAへ向けてボールを集めてくると延長後半2分、左クロスを関東一のJ注目GK渋谷飛翔(3年)が痛恨のファンブル。これをFW関口昂佑(3年)が身体を張ってつなぐと最後はFW中藤翼(3年)が左足で追撃ゴールをねじ込んだ。驚異的なキックと身体能力で再三会場を沸かせていた絶対守護神のミス。これで「何が起こるか分からない」と勇気を得た東久留米総合はしっかりとクロスにまで持ち込んでプレッシャーをかけていった。GK野中のビッグセーブもあり1点差で追撃を続けたが、関東一は立て直した渋谷と星中心に守りきった。

 大一番を制した関東一はこれで3年連続4強進出。昨年は関東大会予選と東京都1部リーグを制し、今年はプリンスリーグ関東2部で上位につける都内屈指の強豪校は、駆けつけたJスカウト陣の前でプレーした渋谷や星、竹本、字羽井ら個の能力が高く、質の高いポゼッションも合わせて非常にスケールの大きなチームとなっている。あとは同じく大型チームだった昨年阻まれた全国への壁を乗り越えることができるか。小野監督も「西が丘に行くまでの道のりはステップアップしている」と口にするように着実に階段を登ってきている関東一。星は「昨年の市船などのように好守速攻でなく、ボールを持ちながら守備も攻撃もできるチーム。(全国でも)絶対にやれる」。今年必ず、新たな歴史を。東京を制して、全国でインパクトを残す。

[写真]延長前半4分、小松の先制ヘッドに喜びを爆発させる関東一イレブン

(取材・文 吉田太郎)
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