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[選手権予選]「国立を沸かせる」技と力、“セクシーフットボール”野洲が草津東を攻め倒す:滋賀

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[11.10 全国高校選手権滋賀県大会準決勝 草津東2-3野洲 皇子山]

 第91回全国高校サッカー選手権滋賀県大会は10日、準決勝を行い、“セクシーフットボール”野洲は草津東に2度のリードを許しながらもFW玉置裕大(3年)の3得点によって3-2で逆転勝ち。綾羽と戦う決勝(17日)へ進出した。

 05年度の全国チャンピオンが今冬、全国で再び衝撃をもたらす可能性がある。山本佳司監督は「よそには真似できない。こんなスキルフルなサッカーをするチームは全国に野洲しかないので、多くの人達にアピールできるように。そのためにはまず全国へ行きたい」と言い切った。野洲は選手間の非常に短い位置取りからトラップ、コントロール、パスとほぼ3タッチ以内でDFのギャップへ、ギャップへとテンポ良くボールをつないでいく。草津東は自陣にブロックをつくりカウンターを狙うが、驚異的なボールキープとどこからでもスルーパスを通してくるMF望月嶺臣(3年、名古屋グランパス加入内定)のパスに2人、3人と連動して動いてくる野洲は決定機を連発。また野洲は非常にコンパクトな陣形で攻めるため、例えボールを失っても、奪われた瞬間に2人、3人が相手ボールホルダーに襲いかかってくる。草津東は野洲の切り替えの速い守備にも苦戦してボールを前に進めることができなかった。

 野洲は前半4分に右サイドの折り返しから玉置が決定的な右足シュート。5分には望月のスルーパスからFW関口悠太朗(3年)がGKと1対1となる。望月を筆頭に玉置らが次々とボールを動かし、隙あらば2列目からMF高野登志基(3年)がスペースへ飛び出してくる野洲は、DF登録だが、完全にサイドアタッカーと化していた右の大本祐槻、左の大園伸明(ともに3年)も加わって厚みのある攻撃で草津東にプレッシャーをかけた。

 だが、先にスコアを動かしたのは草津東だった。前半17分、右サイドのオープンスペースでエースFW村上祐太(3年)がボールを受けると、逆サイドへ絶妙なアーリークロス。必死に背走する野洲を1本のパスで置き去りにすると、FW櫻木亮(3年)のシュートのこぼれ球をFW宮崎隆士(3年)が左足でゴール右隅へねじ込んだ。

 すぐさま反撃を開始した野洲は18分、20分とスルーパスからビッグチャンスをつくったが、草津東もDFが飛び込んでくる相手に食らいつき、GK西村太允(3年)の好守もあってリードを守り続ける。そして村上、宮崎がカウンターから相手のマークを外してゴール前まで切れ込んだ。それでも望月のドリブル突破など攻撃のギアを上げた野洲は38分、中央の望月が右前方のスペースへスルーパス。これを大本が丁寧に折り返すと、走りこんだ玉置が右足シュートを叩きこんで同点に追いついた。

 だが好チーム・草津東は再びライバルを突き放す。39分、MF加藤周(3年)の縦パスから前を向いた村上が、やや前方に位置していたGKの頭上を右足で射抜くファインゴール。前半を2-1とリードして折り返した。ただ、10番の一撃で士気を高めた草津東だったが、前半から相手に動かされ続けた影響か運動量が落ち、後半、野洲のドリブル、個人技に振り切られてしまう。

 前半終了間際の失点は野洲にとって痛恨のビハインド。ただ主将のMF松田惠夢(3年)が「圧勝できるかと思っていたけれど、選手権は甘くなかったです。ただ後ろは前が点取ってくれると信じていた。全然安心していました」と語ったように野洲は慌てない。そして“野洲らしい”鮮やかな2発で試合をひっくり返した。ショートパスにFW武田侑也(3年)や大本のドリブルも加えて攻める野洲は10分、玉置が右サイドからDFを外しながらひとりで中央まで持ち込むと、そのまま左足で同点ゴール。直後にも望月を起点に右サイドを縦に仕掛けた武田の折り返しを玉置が右足でゴールへと流しこむ。華麗なパスワークとドリブルで試合をひっくり返した。

 ベンチから「ギアを上げて、最後行こうぜ!」と声がかかる草津東は、後半半ばからこちらも運動量の落ちた野洲に対してロングボール、セットプレーで反撃。決定機を逃して突き放すことのできなかった相手からチャンスをつくると、30分には右CKからCB西村勇人(3年)がヘディングシュートを放つ。そして35分には左後方からのFKを西村が頭でゴールへ押しこんだが、オフサイドの判定で最後まで追いつくことができなかった。
 
 試合終了の笛とともにうなだれる草津東の隣で、足を攣らせていた野洲の選手たちが1人、2人とピッチに座り込む。互いが力を出し続けた80分間は野洲が制して2年ぶりの全国出場へ王手をかけた。望月、高野、CB水野隼人(3年)ら1年生から全国舞台を経験してきた選手たちがいる今年は「黄金世代」ラストイヤー。全国大会に出場すれば間違いなく大会の目玉選手となるであろう望月が柱となり、実力者が揃う今年は自信を持って野洲サッカーをエンジョイし、頂点へ向けて勝ち進む。武田は「みんな力を出せば全国制覇した時よりもいいサッカーができると思う。自分たちの力を出せば結果は出せる」。そして望月は「みんなが見てて魅力的な、どこにもできないサッカーを披露できれば。運があればまた結果もついてくると思う。自分たちがやってきたことをどんな状況でも、国立の満員のスタンドでもできるように、楽しみながらやりたいと思います」。05年度冬、高校サッカーファンを興奮させた“セクシーフットボール”野洲が今冬、再び国立のスタンドを沸かせる。

(取材・文 吉田太郎)
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