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[選手権]シーソーゲームを制した鹿児島城西!

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[12.31 全国高校選手権1回戦 鹿島学園3-4鹿児島城西 駒場]

 入り方が難しいといわれる全国大会初戦。あらゆる重圧の中、最初からしかけていった鹿児島城西(鹿児島)が、3年連続出場中の鹿島学園(茨城)との壮絶な打ち合いを制した。

 鹿島学園の特徴はその守備体系だ。GKからして前目に位置取りをし、最終ラインを高めに設定する。「GKが高い位置を取って勝負をする。そして前に前に出て行ってボールを奪いにいく。今日は最初セーフティーにいって徐々にペースを握れればと思っていた」とは鹿島学園の鈴木雅人監督の考えるゲームプランだった。

 しかし、その目論見は開始8分で崩れる。「この試合は中盤でつなぐのではなく飛ばそうと。相手の背後にボールを落とすことで、中盤で奪われてカウンターを受けるリスクを減らす。高い位置では前からプレッシャーを、低い位置では相手背後へ飛ばす。それを前後半通じてやりきった」。鹿児島城西の小久保悟監督のプランは、鹿島学園の圧力を避けるものだった。それが前半8分のゴールにつながる。右SHのMF江崎晃大(1年)からボールを受けたFW加治佐楓河(2年)がロングレンジからループシュートを決める。鹿島学園GK田邊快人(3年)が高い位置取りをしていることを見透かしたような先制ゴールだった。

 早くもプランが崩れた鹿島学園だが、決して自分たちのサッカーを見失わないのはさすがだ。厚みのある攻撃力で盛り返す。前半18分、中央から切り崩し、FW古橋広樹(3年)が技ありのシュートを決めて同点に。前半12分あたりから鹿島学園のやりたいプレーが形になってきたに見えた先にあったゴールだった。

 これでペースが鹿島学園に傾くかと思われた直後、鹿児島城西がまたもつきはなす。前半20分、狙い通り裏に抜けたボールにFW向高怜(2年)が追いつくと、そのまま持ち込んで勝ち越しゴール。鹿島学園も食らいつく。前半22分、MF井黒瑳我人(3年)が中央で古橋とワンツーから抜け出して同点ゴール。試合は、全国大会初戦にはにつかわしくない、壮絶な打ち合いの様相を呈してきた。

 2-2で折り返した後半。鹿島学園は失点シーンを考えれば守備に修正を施すことは難しくなかったはずだ。しかし、“あえて”同じ形で臨む。持ち前の攻撃力は自分たちが培った守備体型があってこそ。失点を避けるより「次の1点。ボールを保持しながら前で勝負する」(鈴木監督)ことを選択した。その狙いは結実するかに思われた。後半開始からポゼッションを高める鹿島学園は、左サイドの井黒を中心に鹿児島城西ゴールに迫る。シュートこそないものの、得点を予感させた。

 だが、想定外となったこの試合、待望の3点目を奪ったのは、先制ゴールを奪った鹿児島城西FW加治佐だった。後半17分、1点目と同じく右サイドの江崎からボールをもらうと、今度は相手DFを背負いながらシュートを決める。狙いどおりにならなく、さすがに意気消沈ぎみの鹿島学園に追い討ちをかけるように、5分後には右サイドをえぐってからのセンタリングをボランチのMF濱上大志(2年)が押し込んで鹿児島城西が2点リードを奪った。結果的に、勝敗を分けるポイントは3点目だった。

 鹿島学園は後半29分に途中出場のFW白須達也(2年)がこぼれ球を押し込んで1点を返すが、同点までには至らず。ゲームは終始主導権を握られ気味だったものの、常に先手をいった鹿児島城西が目標だったという初戦突破を果たした。「いい展開ができていた時間帯にゴールを取れれば…。シュートをもっと打つことが大事。強引にでも打っていかなければいけない」とは鈴木監督。「GKから高めに位置させて前から奪っていく。今日はそこをつかれて負けましたが、今後につながると思います」。失点の原因ははっきりしている。しかし、それでもなお自分たちのスタイルを押し通しての敗戦には潔さがあった。

 一方、鹿児島城西も自分たちの力の足りなさを自覚したうえでのこの日の作戦だった。「本来うちは守って少ないチャンスをものにするチーム。今日も1、2点勝負になるかと思いましたが想定外でした。守備の意識をもっともたないといけませんね」(小久保監督)。県予選決勝ではライバル神村学園と6-5という打ち合いを勝ちきって全国に進んできた。そしてまたも打ち合いの試合となったことに戸惑いを隠せない。しかし、想定外の試合にも勝ち切るというところに、鹿児島城西が今なお成長中だということがうかがえる。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 伊藤亮)

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