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[選手権]丸岡「キセキ」の劇的ロスタイム弾!!

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[1.2 全国高校選手権1回戦 丸岡2-1広島観音 駒場]

県内最多の選手権出場回数を誇る丸岡(福井)が広島観音(広島)ペースに押されながらも試合終了残り10分を切ったところから逆転勝利をおさめた。

お互い選手権初戦となるこの試合、前半は緊張のためかお互いミスの多いゲームとなった。それは時間が経過しても落ち着くことなく、どこかちぐはぐな印象が残る。加えて試合開始から吹き始めた風も試合に影響した。結果、風上に立った広島観音がゲームを押し気味に進めることに。この流れが、そのまま先制ゴールへと結びつく。
前半37分、MF塩谷知哉(3年)が左サイドからクロスを放り込む。多少風が影響したか、丸岡のGK北山和来(3年)がこれをファンブル。そこに詰めていたMF川崎雄太(3年)が押し込む。
「相手は(背が)大きいのでボールをつないでいき、トップに当てて2列目が出て行く。その形が出ました」(川崎)という狙いがはまった先制点だった。
前半は広島観音1点リードで終了。ハーフタイム、先制ゴールを見た小阪康弘・丸岡監督は「相手のようにゴール前にボールを入れないとミスだって起こらない」と指摘する。丸岡の前半のシュート数は2本。ビハインドを負った後半は前半以上に出て行く必要があった。

後半、丸岡の持ち味である速攻が見受けられるようになる。しかし広島観音もディフェンスを固めカウンターを狙うというセオリーにのっとり自由にさせない。前半は味方した風が、後半は向かい風になったためロングボールが失速するという点以外は広島観音がゲームの主導権を握り続けているように見えた。

しかし後半33分、丸岡が「お返し」をする。MF飯田啓祐(3年)がゴール前で切り返し相手DFをかわすとシュート。GK坂井涼(3年)がはじいたところをFW前田亮(2年)が押し込んで同点に。決して押し気味ではなかったところでの同点弾に、ゲームの流れはどっちつかずになった。
ただ、「もう少し高い位置にボールをおさめてほしかったがチームはいっぱいいっぱいだった」(出木谷浩治・広島観音監督)、「風の影響は大きかった。最後の10分は、隙ができてしまいました」(川崎・広島観音)というように、風下に立つ広島観音の方が失速度合いは激しかったかもしれない。後半ロスタイムも2分が経過したとき、丸岡は右サイドからFW寺尾亮佑(3年)が渾身のセンタリング。これを後半出場のFW辻川雄太(2年)がドンピシャのタイミングでダイビングヘッドを決めて劇的な逆転勝利を呼び込んだ。

「力は相手の方が上。奇跡に近いような試合です。我々は一番弱いチーム。一試合一試合フルパワーでやらないとキツい。我慢強く粘っていき、点を取られてもひたむきにいくしかないんです」と小阪康弘・丸岡監督は言う。
たしかにチームスタイルは、技術が洗練されているわけでもなく統制された戦術が光るわけでもない。ウリは背の高い選手の多さとフィジカルだ。近年の選手権に出場するチームの傾向からすると「古い」と形容されそうだが、だからといって「弱い」というわけではない。
たしかに戦術を深めていった方が、ひたむきさといったメンタル面を前面に出すより波がないぶん安定した力を発揮できるかもしれない。ただし丸岡の場合は「6年前に(選手権で)ベスト8に入った時も、13年前にベスト4に入った時も粘ってしぶとくつけ込んでいくチームカラーだった。うちはそれしかないんです」(丸岡監督)と割り切る。丸岡イレブンが見せる「ひたむきなプレー」は、一朝一夕のものではない。過去24回目出場した選手権で育んできた丸岡にしかない伝統なのだ。彼らが勝ち進むことは、組織論優勢の高校サッカー界に一石を投じてくれるかもしれない。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文/伊藤亮)


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