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[選手権]相手も賞賛の技術と攻撃力見せるも…V候補・國學院久我山は開幕戦で姿消す

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[12.30 全国高校選手権1回戦 熊本国府2-1國學院久我山 国立]

 優勝候補の一角に挙げられるなど前評判の高かった國學院久我山(東京B)が、開幕戦で早くも姿を消した。対戦相手・熊本国府の佐藤光治監督が「凄い攻撃力」と評し、同主将のCB西村大悟(3年)が「(思っていたよりも)全然上手くてボールも取れなくて回されてしまった」と舌を巻いた技術の高さ。U-18日本代表候補のMF渡辺夏彦主将とMF平野佑一(ともに3年)を中心に圧倒的にボールを支配し、ビッグチャンスをつくり出した國學院久我山だったが、渡辺が「決めるべきところで決めきれなかった」と首を振ったように、決定力を欠き、また守備から攻撃の切り替えの切れ味も出せずに競り負けた。

 立ち上がりから試合を支配していた。前半5分に絶妙な胸コントロールから右中間を抜けだしたエースFW富樫佑太(3年)の右足シュートが左ポストを叩き、7分にもPAで鋭く切り返した富樫の左足シュートがゴールを襲う。その後も國學院久我山は渡辺と富樫のワンツーなどの素早いパス交換、CB内藤健太(2年)からの好フィードで相手の背後を取るなど次々とチャンスをつくり出していく。熊本国府はクリアするのが精一杯の時間帯が続いていた。ただ23分に富樫のワンタッチパスから右SB鴻巣良真(2年)が放った決定的な右足シュートは枠外。27分に先制点を奪われた後も、押し込んではいた。だが、ワンツーからリターンを受けようとする渡辺が徹底マークにあったほか、サイドアタッカーのドリブルも封じられ、また必死の形相でシュートを身体に当ててくる熊本国府DFの前に1点を奪うことができない。

 後半も13分に左サイドのFW松村遼(3年)からのラストパスにフリーの渡辺が飛び込んだが、右足シュートはGK小野公治(3年)がビッグセーブ。それでも1点差の展開に焦りはなかったという國學院久我山は後半30分、渡辺が前方をDF3人に阻まれながらも通したスルーパスから富樫が右足で執念のゴールを決めてついに同点に追いつく。だが、33分にスルーパスで抜けだした渡辺が体勢を崩しながらもゴールヘ迫り、アディショナルタイム突入後の41分には平野の右足ミドルがゴールを捉えたものの、集中力の高い相手の前に勝ち越しゴールを奪えず。逆に一瞬隙を見せた後半42分に決勝点を奪われた。

「美しく勝て」をコンセプトに相手を圧倒するような攻撃サッカーで東京都予選を勝ち上がってきた。相手DFの距離が近くてもボールを収めてしまう技術の高さと絶妙なポジショニング、また鮮やかなパス交換での崩しなど「美しいサッカー」を17,954人が集まった国立のピッチで披露した。ただ渡辺、平野、富樫らタレントが揃い、目標に掲げていた日本一の夢は全国初戦で潰えた。渡辺は「がっちり守られた中で勝てなかったのはボクらの弱さ。日本一、日本一と言って来た中で初戦負けというのは恥ずかしいし、何より悔しいです。もっと上まで行っていろいろなものを見たかった」と無念の表情。今大会の注目選手でもあった渡辺は「自分の力を出せたと思っていない。1点に絡むことができたのは良かったけれど、勝たせられなかったので不甲斐ない」と力を出しきれなかったことを悔やんだ。

 敗退後のロッカールームで後輩たちに「ボクたちはプリンス(リーグ関東2部から)昇格という形で後輩には残せたと思うので、来年、そこの舞台で思う存分活躍してほしいということと、ボクたちは日本一を目指してきた中で思うような結果が出せなかった。彼らにはその意志をついてほしいし、もっと上を目指してほしいと伝えました」とメッセージを送った渡辺。「美しく勝つ」サッカーで日本一に立つ夢を後輩たちに託していた。

(取材・文 吉田太郎)

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