beacon

[選手権]桜色のスタンドに感謝の勝利!被災地から国立目指す富岡が初戦突破!!

このエントリーをはてなブックマークに追加

[12.31 全国高校選手権1回戦 松山商0-2富岡 オリプリ]

 第92回全国高校サッカー選手権は31日、1回戦を行い、ゼットエーオリプリスタジアム(千葉)の第2試合では50年ぶり出場の松山商(愛媛)と5年ぶり出場の富岡(福島)が対戦し、富岡がFW内山翔太とFW高木洋輔(ともに3年)のゴールによって2-0で勝った。
 
 福島県富岡町の名所「夜の森の桜」。富岡のユニフォームの胸のエンブレムにも刻まれている桜の色にスタンドが染まった。富岡側の応援席は1階席だけでなく2階席も桜色のポンチョをまとった富岡サポーターでびっしり。GK高瀬凌平主将(3年)は「入場した時から予想以上に応援の人がいた」と驚き、内山は「多くの人が自分たちのことを応援してくれると思った」という。

 富岡は11年3月11日の東日本大震災に伴う原発事故の影響で、避難指示区域内にある校舎も、自慢の人工芝グラウンドも使用することができず、選手たちは4つのサテライト校のひとつである福島北高校内にある仮設校舎に通学。主に福島市内の人工芝グラウンドを拠点に練習を続け、その中で着実に成長してきた選手たちは今回、震災後初となる全国大会出場を果たした。「もっと全国の皆さんとか、被災された皆さんに全国で頑張っている姿を見てもらいたい」。強い思いを持って戦い続ける選手たちをさらに勇気づけた桜色のスタンド。佐藤弘八監督は「ピンクの色がバックスタンドに映えていたし、人数も多かった。それから地元でも応援してくれている方がたくさんいると思いますけど、選手の背中を押してくれるし、我々にも勇気を与えてくれます」と感謝した。

 県予選優勝後、「おめでとう」という言葉よりも「ありがとう」と感謝されることの方が多かったという富岡。自分たちのサッカーで多くの人々を笑顔にしたいという思いを持つイレブンは「逆に勇気づけられている」(佐藤監督)という感謝の言葉と桜色のスタンドからの声援を背に序盤からラッシュをかける。初出場した5年前、緊張で試合の入りが悪く初戦敗退を喫した反省から、指揮官は前日練習を「ガンガンやった」という。それも功を奏し、勢いで勝る富岡は前半13分までに2点のリードを奪った。

 まずは3分、右FKをファーサイドの内山がDFの頭上からヘディングシュート。「いいボールが来たので当てるだけだった」という内山が逆サイドのゴールネットへ沈めて先制すると、13分には右サイドを駆け上がった右SB須藤桂佑(3年)のクロスを内山がGKの伸ばした手よりも上方で頭で合わせる。そしてゴールライン際に落下してきたボールを高木が頭で押し込んで2-0とリードを広げた。

 松山商は大竹博久監督が「アップのところから硬くて受けてしまった。(相手の勢いに押されて)どんどん下がってしまった」と残念がった序盤が痛かった。14分にDFのマークを外したFW西村郁也(3年)の右足シュートがゴールを襲うが、その後も富岡に主導権を握られてしまう。富岡は各選手がサボることなく、しっかりとボールサイドでのプレッシャーとカバーリングを徹底。松山商もスピーディーなパスワークを見せていたが、アタッキングゾーンに入る前に相手の厳しいプレスに挟み込まれてボールを失った。

 そして富岡はこの日キレのある動きを見せていた左MF佐藤大悟(3年)や両SBがチャンスメーク。22分に右中間でフリーとなった内山が決定機を迎え、36分には左クロスからニアサイドの高木が放った素晴らしいヘディングシュートがゴールを捉える。いずれも松山商GK井上晃貴(3年)のビッグセーブに阻まれたものの、富岡は馬力のある高木、高さと柔らかさも備えた内山の強力2トップと両サイドの攻撃力を活かした攻撃で松山商を押し込んだ。

 後半、守備が安定した松山商もDFラインの押し上げによってチャンスをつくる回数を増やす。だが20分に西村のスルーパスからFW松木良太(2年)が抜け出して迎えた1対1は高瀬の好守に阻まれ、35分に中央突破したMF越智勘吉(2年)の左足シュートはGK正面を突いた。富岡は後半半ばから足を攣らせる選手が出ていたものの、豊富な運動量による高速プレスとショートカウンターで最後まで松山商を苦しめ続けて全国大会初勝利を挙げた。

 富岡の目標は国立4強進出。そして「富岡町・福島県に元気を与える試合を」とイレブンは意気込んでいる。ひとつでも多くの試合を戦い、勝つことが自分たちのできる恩返し。支えてくれる人々のために、水戸啓明(茨城)との2回戦も必ず勝つ。

[写真]前半4分、先制ゴールを決めた富岡・内山(右)がガッツポーズ

(取材・文 吉田太郎)

▼関連リンク
【特設】高校選手権2013

TOP