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[選手権]桐光学園は蔭山弾で高知商に完封勝利も、指揮官「悔しい」

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[1.2 全国高校選手権2回戦 高知商0-1桐光 ニッパ球]

 第92回全国高校サッカー選手権は2日、各地で2回戦を行い、ニッパツ三ツ沢球技場では高知商(高知)と桐光学園(神奈川)が対戦した。地元・神奈川の桐光学園が前半14分にMF蔭山裕之(3年)が決めたゴールを守りきり、1-0で勝利。2年連続の国立へ近づいた。あす3日に行われる3回戦では四日市中央工(三重)と戦う。

 試合後、勝利した桐光学園の鈴木勝大監督の口からは厳しい言葉が続いた。「高知商は素晴らしいサッカーをしていた。我々は我々のサッカーができなかった。初戦で勝つよりも大切なことがあった。自分たちがやってきたことを出せない、出さないというのは悔しい気持ちでいっぱい」。勝利したものの、本来の力を出し切れなかったチームへ歯がゆい思いでいっぱいだった。

 対して19年ぶりに全国の大舞台に立った高知商の松本一雄監督は「子供たちの能力いっぱいは全て出た。やりたいサッカーはあともう少しだったかな。相手が上手いのは分かっていたので10回に1回が出れば良かったが……」と敗戦にも、どこかすっきりとした表情で語った。

 試合は立ち上がりから桐光学園が押し込んだ。しかし、ゴール前での精度を欠き、得点につなぐことはできない。前半2分には左サイドから攻め込むとFKを獲得。これをファーサイドのDF中島駿(3年)が頭で中央へ折り返し、最後はFW小川航基(1年)がヘディングシュートを打つもDFにクリアされた。同7分にはDF関根陸(3年)が右サイドから崩しにかかり、中央へショートパス。受けたFW植木隆之輔(3年)が右足シュートもポスト横へ逸れた。積極的にシュートを狙う桐光学園は、さらに同12分にMF大竹徳幸(3年)がPA手前左から右足ミドル。これはGK谷岡航治(3年)に横っ飛びで止められた。

 それでも前半14分に試合は動いた。左サイドから関根がドリブル突破。クロスを入れると、ゴール正面の植木がヒールで角度を変える。小川のシュートはGKに阻まれるも、こぼれに詰めていたMF蔭山裕之(3年)が右足で押し込み、先制に成功。地元・神奈川の桐光学園が粘り強く攻め続け、1-0とリードを奪った。

 対する高知商はMF井上拓也(3年)が2列目から緩急をつけたパスで攻撃にリズムをつくるも、得点にはつなげない。1トップのFW大野兼嗣(3年)へボールを供給しようとするも、敵陣中央で奪われる場面が続いた。守備陣は失点後も押し込まれたが何とか耐え続け、1失点のまま前半を折り返した。

 迎えた後半3分には高知商がチャンスを迎える。ロングボールからカウンター。抜け出した大野が飛び出していたGK白坂楓馬(2年)の位置をみると、PA手前から技ありのループシュート。これはわずかにクロスバー上へ外れていった。その後もセットプレーを獲得するが、枠内へシュートを打つことができずに時間は進む。

 一方、追加点を狙う桐光学園は後半9分、サイドからチャンスメイク。左クロスに飛び込んでシュートを打つもGK谷岡にゴールラインぎりぎりの位置でクリアされた。なんとかこぼれを展開し、先制点の蔭山がPA左からドリブルで持ち込みシュートを打つも、GK谷岡にキャッチされた。決定機を迎えるもゴールネットは揺らせずに、1点のリードのまま時間は進んだ。

 なんとか追いつきたい高知商は1トップの大野、2列目の井上らがショートパスをつないで敵陣に攻め込むが決定的な場面には至らない。後半32分には右サイドからMF森澤太智(3年)が仕掛け、井上へショートパスをつなぐがDFにカットされた。このこぼれを拾った大野がミドルシュートを狙うもDFに当たり、ゴールネットを揺らすことはできない。獲得したCKから蹴り込んだボールはGK白坂にキャッチされた。

 その後の残り5分は桐光学園が試合を支配した。カウンターからピンチの場面もDF陣が冷静にボールを奪取し、シュートを許さない。攻撃に転じると一気に人数をかけ、相手陣内へ攻め込んだ。獲得したセットプレーでは落ち着いてボールキープ。焦る高知商をいなしながら、逃げ切った。そのまま試合は終了し、桐光学園が高知商に1-0で勝利した。

 1ゴールを守り切っての完封勝利。それでも桐光学園の鈴木監督の表情は冴えない。昨年8月16日には3年生だったFW大西健太くんが病気のため急死した。そのこともあり、指揮官は「こんなゲームでは大西も怒っているはず。彼がいた2年半を今日のゲームでは出せなかった」と話した。

 桐光学園は今大会、24人の登録メンバーの19番には亡くなった大西くんを入れている。これについて指揮官は「彼がつけてきた背番号を誰かが着けるのはプレッシャーもあると思った。登録メンバーが24名と限られたなかで、賛否はあるとは思うが、これは桐光学園の監督として、様々なプロセスを考えて、僕が決断したこと。メンバーに入れなかった選手には納得できない思いがあるのは間違いないが、これ(背番号19に大西くんを入れること)について3年生でゴチャゴチャ言う人はいないと思う」と説明する。

 2年半、桐光学園の一員として努力を重ねてきた大西くんに恥じない試合をみせたかったが、「固かったのか、勇気がなかったのか」(鈴木監督)。思うような試合はできなかった。

 あす行われる3回戦で桐光学園は、四日市中央工(三重)と対戦する。鈴木監督は「昨日までできたことができなくなるのは、頭と心の問題。そこの整理を24時間以内にやりたい」と険しい表情で語った。大西くんの思いとともに、2年連続の国立へ。そのためには今日の反省を糧に、あすの試合で桐光学園らしい戦い方をみせて勝つしかない。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 片岡涼)
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