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[選手権]指揮官入院、10人での戦い・・・逆境乗り越えた星稜が3回戦進出!

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[1.2 全国高校選手権2回戦 鹿児島城西高 0-0(PK3-5)星稜高 NACK]

 第93回全国高校サッカー選手権は2日、2回戦を行い、NACK5スタジアム大宮(埼玉)の第1試合では08年度準優勝の鹿児島城西高(鹿児島)と昨年度準優勝の星稜高(石川)が激突。0-0で突入したPK戦の末、星稜が5-3で勝ち、米子北高(鳥取)と戦う3回戦(1月3日)へ進出した。

「支えてくれている保護者であったり、メンバー入っていない部員のみんなであったり、スタッフであったり、またここにいない(河崎)監督であったり、みんなの目標になっているので、自分のためではなくてみんなの想いを感じながらということを今一番、大事にしている。みんなのためにも優勝したい」。星稜のCB鈴木大誠主将(3年)は、PK戦で競り勝った鹿児島城西戦後にそう力を込めた。昨年度大会決勝で残り3分まで2-0でリードしながら、そこからの大逆転負けで準優勝。鈴木やFW森山泰希(3年)ら去年の決勝を経験した5人らイレブンは日本一を掲げて全国舞台へ戻ってきた。だが、昨年12月26日に河崎護監督が直前合宿へ向かう途中に発生した自動車事故によって入院。また指揮官不在のまま迎えたこの日は後半6分に森山が退場するアクシデントが起きた。逆境が続く中でのゲームとなったが、それでも鈴木が「監督いなかったり、森山いなかったり、そういう状況でも自分たちの力を示すためにっていうような気持ちでやっていました」と説明した星稜は強い気持ちで逆境を乗り越えた。

 互いの守り堅くスコアは動かなかった。ジュビロ磐田内定の注目FW岩元颯オリビエ(3年)を擁する鹿児島城西は早い段階から前線へのロングボールを入れていたが、鹿児島城西の小久保悟監督が「ヘディング強かったですね。なかなか後ろに落とさせてくれませんでした」と讃えた星稜は鈴木、高橋佳大(3年)の両CBやMF平田健人(3年)がほぼ完ぺきに跳ね返していく。鹿児島城西は7分に左SB徳田勇人(3年)の左アーリークロスがファーサイドのMF福丸聖也(3年)まで届いたが、シュートは星稜のU-16日本代表MF阿部雅志(2年)がブロック。15分にもMF大塚健太郎(3年)がダイレクトで背後へ出したラストパスで岩元が抜け出しかけたものの、星稜は高橋が食い下がってシュートを打たせない。また星稜は岩元へ入ってくるボールを鈴木がしっかりと封じて攻撃の形をつくらせなかった。

 星稜は攻撃に移ると、オープンへの配球を交えながら縦横にボールを動かしていく。2分に阿部が右足ミドルを放つと、8分にはチャージを受けながらもボールをつないだMF藤島樹騎也(3年)の好パスから左の阿部が中央へラストパス。これをFW大田賢生(3年)が左足ダイレクトで叩く。そして21分には左サイドでDFの股間を抜くドリブルを見せたSB宮谷大進(3年)のクロスを再び大田が左足で合わせた。30分にも左ゴールライン際でDFと入れ替わった藤島がシュートまで持ち込んだが、スコアを動かすことができない。今大会屈指のCBである鹿児島城西DF上夷克典(3年)が相手FWの前に身体を入れてボールを奪い取り、インターセプトから攻撃参加するなど抜群の存在感。パートナーのCB東郷大志郎(3年)も要所を締めた。

 そして後半開始から、MF中村亮(3年)、MF伊集院雷(2年)の両SHを同時投入した鹿児島城西へ試合の流れは傾く。6分、カウンターから抜け出そうとした森山を鹿児島城西のMF長谷川雄志(3年)がスライディングでストップ。ここで転倒した星稜・森山がシミュレーションを取られたか、この日2枚目の警告を受けて退場してしまう。数的優位を得た鹿児島城西がそれを活かしてプッシュ。8分に東郷のフィードをPAで胸トラップした伊集院が決定的な左足シュートを打ちこむ。さらに11分には縦へ抜け出した岩元の右足シュートがゴールを捉え、14分には左CKからファーサイドの右SB中村匠吾(3年)が決定的なヘディングシュート。ただ、シュート精度を欠いた鹿児島城西はリードを奪うことができない。

 危ないシーンもあった星稜だったが、勝利への意欲では負けなかった。木原力斗監督代行は「積極的に守備をした森山がああいう結果になってしまって。(だが)グラウンドの選手たちを見ると、声掛けしながら前向きにしようとしていた。選手の勝とうという想いが伝わってきたので良かった」。星稜は13分に右SB原田亘(3年)、22分には阿部に代わって投入されたMF加藤諒将(3年)が思い切ったミドルシュートで前への姿勢を示せば、守備陣も32分に鈴木がバランスを崩しながらも岩元の突破をストップ。際のところで勝利と前への執念を見せる。そして35分から4連続でのビッグチャンス。35分に左クロスをファーサイドで受けた藤島が左足シュートを放つと、37分には右クロスをファーサイドの加藤が左足アウトサイドで合わせる。そして38分には原田の右クロスからファーサイドでフリーの加藤がクロスバー直撃のヘディングシュート。そして39分にも加藤の突破から藤島が決定機を迎えるなど、10人の星稜が気迫あふれる戦いで数的不利を乗り越えた。

 PK戦突入直前に鹿児島城西は「トレーニングでもよく止めていたので、交代をしました」(小久保監督)とGK下野和哉(2年)に代えてPK戦要員のGK領家大貴(3年)を投入。だが、鹿児島城西は4人目の徳田の左足シュートが枠上へ外れてしまう。一方、1人目から4人連続で成功していた星稜は決まれば勝利の決まるキックを5人目の平田が右足でゴールへ流し込んで3回戦進出を決めた。前日、スタッフを通して河崎監督から星稜イレブンに届いた言葉は「心配しなくて、自分たちのプレーだけをやればいい」。その言葉を聞いた鈴木は「自分たちが動揺なんかしている暇はないし、気持ちを切り替えてやっていました」。まだ復帰が未定の恩師のため、仲間、支えてくれた人たちのためにも星稜は「みんなの想いを感じながら」頂点まで勝ち続ける。

(取材・文 吉田太郎)
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