[選手権]王国の名門が夏の覇者・東福岡を止めた!!「頑張る」静岡学園が3-0で8強進出!!
[1.3 全国高校選手権3回戦 東福岡高 0-3 静岡学園高 ニッパ球]
第93回全国高校サッカー選手権は3日、3回戦を行い、ニッパツ三ツ沢球技場の第1試合ではともに優勝経験を持つ東福岡高(福岡)と静岡学園高(静岡)が激突。名門対決は静岡学園が3-0で制し、06年度以来となる準々決勝進出を決めた。
夏の全国高校総体では1試合平均4得点を越える驚異の6戦26発。今年4月以降は高体連のチームに一度も負けていなかった優勝候補筆頭・東福岡を「サッカー王国」静岡の名門が止めた。静岡学園は76年度全国準優勝、95年度全国優勝の「元祖・技巧派軍団」「ラテンスタイル」の伝統校。ただ常にボールを保持し、サイドチェンジやバックパスを交えながらゆっくりと攻めて、局面をアイディアあるドリブル、ショートパスで打開するという“静学の香り”がするチームではない。
例年に比べるとテクニックは物足りない。ただ、このチームにはユニフォームを汚して戦うことのできる選手が揃っている。CB石渡旭主将(3年)は「先のことを考えずにその1試合に120、130パーセントの力を出すようにと言っていますね。『次の試合とか関係ないから』と。全力で、余力を残さずに。余力残して負けたら意味がないので、その試合で尽きるまでやろうと話しています。みんながそうしないと勝てない。テクニックにみんなの頑張りがついてくれば強くなると思うので自分たちでそれを証明したい」。この日、東福岡が今大会3試合目で、静岡学園がまだ2試合目だったという優位性はあっただろう。ただ、泥臭い守備と頑張りで夏の王者と渡り合った静岡学園は最後“静学らしい”テクニックとシュート技術で差をつけた。川口修監督は「決して美しい、いいゲームではなかったですけど、今年のウチができるサッカーをやれたと思います」と胸を張った。
この日、全国高校総体得点王のFW木藤舜介(3年)が先発から外れた東福岡は横浜F・マリノス内定のMF中島賢星主将(3年)を最前線に上げて試合に臨んだ。前半6分、“ヒガシのクリロナ”ことヴィッセル神戸内定MF増山朝陽(3年)が豪快な中央突破で静岡学園の守備網を切り裂き、最後はMF中村健人(2年)がDFを外して右足シュート。15分には左中間で競り合っていたDFの前へ強引に入り込んだ中島の右足シュートがゴールを襲う。ただ、これを1年生GK山ノ井拓己がストップした静岡学園は、こぼれ球に反応した増山の左足シュートもDFが身体を張ってブロックする。
序盤は局面の攻防で相手に捻り潰されているようなシーンが続いた静岡学園はロングボールを跳ね返され、またセカンドボールを回収することもできていなかった。ただ献身的なプレスで相手のパスの出所を潰し、もしも前線へ入れられても、「(東福岡と)そこまで大したフィジカルの差はないなと自分は思いました。ゴリゴリでプロサッカー選手みたいな感じで来るかなと思ったんですけど、高校級でしたね」と振り返った石渡、DF加佐怜人(3年)、そして怪我をおして先発出場したDF光澤和人(3年)の3バックがしっかりと潰して相手をPAに近づけない。静岡県予選ではともにBチームにいたというMF後藤真(3年)とMF鹿沼直生(2年)のダブルボランチも献身的にボールサイドへランニング。そして攻撃面でも徐々に良さを発揮出し始めた静岡学園は21分にMF名古新太郎(3年)の右足FKがゴールを捉え、31分には後藤のループパスからFW加納澪(2年)が決定的な右足シュート。さらに37分には左サイドからMF旗手怜央(2年)がドリブルでPA近くまで運んでスルーパス。中盤から飛び出した後藤が決定的な左足シュートを打ちこんだ。そして38分には左サイドを縦に突いた加納の弾丸ショットが右ポストを直撃する。
後半はともにボールが収まらず、行ったり来たりの展開。東福岡は加奈川凌矢と小笠原佳祐の両CBがロングボールを弾き返し、スピードのある攻撃もケアしていたが、攻撃面ではミスが目立ち、また思い切った崩しもなく、シュートを放つことができない時間帯が続いた。増山の強引な突破こそ見られたが、それもシュートには繋がらない。その中で23分に静岡学園MF本藤風太(3年)に個人技でDFが剥がされて決定的なシュートを放たれると、直後の左CKから先制点を決められてしまう。静岡学園はキッカーの名古が右足で中央へ蹴り込む。これはDFにクリアされたが、PA外側でクリアボールに反応した旗手が右足ダイレクトのシュートをゴール左へねじ込んだ。
対する東福岡は31分にMF近藤大貴(3年)が右中間へ出したパスで抜け出した交代出場FW餅山大輝が(2年)が切り返しから決定的な左足シュート。だがニアサイドを襲った一撃を静岡学園GK山ノ井がビッグセーブで阻止した。「必ずピンチもあるし、チャンスもある。ピンチで失点しないこと。そしてチャンスをしっかり決める。必ず一発“神様のご褒美”で来るからそこで決めれるかどうか。それが旗手の思い切ったシュートですね」と静岡学園・川口監督。ピンチを守り抜き、必ず訪れると信じていた一発をゴールへ結びつけた静岡学園が勝負どころでアドバンテージを得た。
終盤は「どことやっても点は取れる。1失点だったら2点は取れると思っていた」(川口監督)という静岡学園の攻撃が東福岡との差を広げる。32分、本藤のスルーパスで中央を抜け出した名古が右足シュートを叩き込んで2-0。さらに35分には縦パスに左中間で反応した加納がDFを振り切って右足シュートをゴールへ流し込む。東福岡に反撃する力は残っていなかった。これまで破壊力を示してきた東福岡を完封した静岡学園の石渡は「ここで勝って次の試合に負けるとマグレで勝ったみたいになるので、次も準備していきたいですね。東福岡を零点に抑えられるということはどこのチーム相手でも抑えられると思うので、1点も取られないで優勝したい」とインパクト十分だったこの1勝で終わらないことを誓った。目標は日本一。全国制覇を果たした95年度の復刻ユニフォームをまとう静岡学園が、「120、130パーセント」の力で準々決勝も乗り越える。
(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 吉田太郎)
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【特設】高校選手権2014
第93回全国高校サッカー選手権は3日、3回戦を行い、ニッパツ三ツ沢球技場の第1試合ではともに優勝経験を持つ東福岡高(福岡)と静岡学園高(静岡)が激突。名門対決は静岡学園が3-0で制し、06年度以来となる準々決勝進出を決めた。
夏の全国高校総体では1試合平均4得点を越える驚異の6戦26発。今年4月以降は高体連のチームに一度も負けていなかった優勝候補筆頭・東福岡を「サッカー王国」静岡の名門が止めた。静岡学園は76年度全国準優勝、95年度全国優勝の「元祖・技巧派軍団」「ラテンスタイル」の伝統校。ただ常にボールを保持し、サイドチェンジやバックパスを交えながらゆっくりと攻めて、局面をアイディアあるドリブル、ショートパスで打開するという“静学の香り”がするチームではない。
例年に比べるとテクニックは物足りない。ただ、このチームにはユニフォームを汚して戦うことのできる選手が揃っている。CB石渡旭主将(3年)は「先のことを考えずにその1試合に120、130パーセントの力を出すようにと言っていますね。『次の試合とか関係ないから』と。全力で、余力を残さずに。余力残して負けたら意味がないので、その試合で尽きるまでやろうと話しています。みんながそうしないと勝てない。テクニックにみんなの頑張りがついてくれば強くなると思うので自分たちでそれを証明したい」。この日、東福岡が今大会3試合目で、静岡学園がまだ2試合目だったという優位性はあっただろう。ただ、泥臭い守備と頑張りで夏の王者と渡り合った静岡学園は最後“静学らしい”テクニックとシュート技術で差をつけた。川口修監督は「決して美しい、いいゲームではなかったですけど、今年のウチができるサッカーをやれたと思います」と胸を張った。
この日、全国高校総体得点王のFW木藤舜介(3年)が先発から外れた東福岡は横浜F・マリノス内定のMF中島賢星主将(3年)を最前線に上げて試合に臨んだ。前半6分、“ヒガシのクリロナ”ことヴィッセル神戸内定MF増山朝陽(3年)が豪快な中央突破で静岡学園の守備網を切り裂き、最後はMF中村健人(2年)がDFを外して右足シュート。15分には左中間で競り合っていたDFの前へ強引に入り込んだ中島の右足シュートがゴールを襲う。ただ、これを1年生GK山ノ井拓己がストップした静岡学園は、こぼれ球に反応した増山の左足シュートもDFが身体を張ってブロックする。
序盤は局面の攻防で相手に捻り潰されているようなシーンが続いた静岡学園はロングボールを跳ね返され、またセカンドボールを回収することもできていなかった。ただ献身的なプレスで相手のパスの出所を潰し、もしも前線へ入れられても、「(東福岡と)そこまで大したフィジカルの差はないなと自分は思いました。ゴリゴリでプロサッカー選手みたいな感じで来るかなと思ったんですけど、高校級でしたね」と振り返った石渡、DF加佐怜人(3年)、そして怪我をおして先発出場したDF光澤和人(3年)の3バックがしっかりと潰して相手をPAに近づけない。静岡県予選ではともにBチームにいたというMF後藤真(3年)とMF鹿沼直生(2年)のダブルボランチも献身的にボールサイドへランニング。そして攻撃面でも徐々に良さを発揮出し始めた静岡学園は21分にMF名古新太郎(3年)の右足FKがゴールを捉え、31分には後藤のループパスからFW加納澪(2年)が決定的な右足シュート。さらに37分には左サイドからMF旗手怜央(2年)がドリブルでPA近くまで運んでスルーパス。中盤から飛び出した後藤が決定的な左足シュートを打ちこんだ。そして38分には左サイドを縦に突いた加納の弾丸ショットが右ポストを直撃する。
後半はともにボールが収まらず、行ったり来たりの展開。東福岡は加奈川凌矢と小笠原佳祐の両CBがロングボールを弾き返し、スピードのある攻撃もケアしていたが、攻撃面ではミスが目立ち、また思い切った崩しもなく、シュートを放つことができない時間帯が続いた。増山の強引な突破こそ見られたが、それもシュートには繋がらない。その中で23分に静岡学園MF本藤風太(3年)に個人技でDFが剥がされて決定的なシュートを放たれると、直後の左CKから先制点を決められてしまう。静岡学園はキッカーの名古が右足で中央へ蹴り込む。これはDFにクリアされたが、PA外側でクリアボールに反応した旗手が右足ダイレクトのシュートをゴール左へねじ込んだ。
対する東福岡は31分にMF近藤大貴(3年)が右中間へ出したパスで抜け出した交代出場FW餅山大輝が(2年)が切り返しから決定的な左足シュート。だがニアサイドを襲った一撃を静岡学園GK山ノ井がビッグセーブで阻止した。「必ずピンチもあるし、チャンスもある。ピンチで失点しないこと。そしてチャンスをしっかり決める。必ず一発“神様のご褒美”で来るからそこで決めれるかどうか。それが旗手の思い切ったシュートですね」と静岡学園・川口監督。ピンチを守り抜き、必ず訪れると信じていた一発をゴールへ結びつけた静岡学園が勝負どころでアドバンテージを得た。
終盤は「どことやっても点は取れる。1失点だったら2点は取れると思っていた」(川口監督)という静岡学園の攻撃が東福岡との差を広げる。32分、本藤のスルーパスで中央を抜け出した名古が右足シュートを叩き込んで2-0。さらに35分には縦パスに左中間で反応した加納がDFを振り切って右足シュートをゴールへ流し込む。東福岡に反撃する力は残っていなかった。これまで破壊力を示してきた東福岡を完封した静岡学園の石渡は「ここで勝って次の試合に負けるとマグレで勝ったみたいになるので、次も準備していきたいですね。東福岡を零点に抑えられるということはどこのチーム相手でも抑えられると思うので、1点も取られないで優勝したい」とインパクト十分だったこの1勝で終わらないことを誓った。目標は日本一。全国制覇を果たした95年度の復刻ユニフォームをまとう静岡学園が、「120、130パーセント」の力で準々決勝も乗り越える。
(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 吉田太郎)
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