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昨年は4発、今年は「自分の大会に」。青森山田の10番MF高橋壱晟が挑む最後の冬

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選手権の主役候補の一人、青森山田高MF高橋壱晟

 当時2年生だった昨年度の選手権は2度の決勝弾を含む4ゴールで青森山田高の全国4強進出に貢献。だが、MF高橋壱晟(3年)が無得点に終わった準決勝で北の名門の進撃も終焉を迎えた。

 あれから1年、かつてMF柴崎岳らが背負った「青森山田の10番」をまとって戦ってきた高橋はジェフユナイテッド千葉への加入を決め、U-19日本代表にも選出された。選手権では有力な主役候補の一人。パス、ドリブル、シュート、守備の全てをハイレベルでこなす「北の逸材」が今冬、頂点を見据えている。

 今年も11月には一面雪に覆われていた雪国・青森。その地で「プロ」「日本一」、そしてライバルたちに「絶対に負けない」という思いを持って練習に励み、成長を遂げてきたMFが最後の選手権に挑む。

―青森山田で過ごす冬は今年が最後ですが、特別な思いは?
「ずっとこの青森で生きてきて、今回が最後の選手権なので、これに懸ける思いは人一倍あります」

―中学時代から数えると、青森山田で6年間。もう、やり残したことないくらいにやってきた
「山田に入ってきたのは選手権で優勝するためでもあるので、その最後の形が優勝で終われたら一番いいと思います」

―入学した頃を思い返すとどういった思い、“野望”を持って入ってきた?
「正直、最初は選手権優勝だというのは現実味がなかったので、プレーヤーとして成長して試合に出ることが最初の目標だったんですけど、それができていくうちに選手権は特別なものなので、絶対に優勝したいという気持ちは今もどんどん大きくなってきています」

―青森山田は高橋君、廣末君(FC東京内定)だけじゃなく、11人、30人、それ以上にギラギラした選手ばかり。その中の日々は重圧もあって大変だったのでは?
「プロを目指すというのはサッカー始めた時から変わらずやってきて、ここはレベルの高い選手が集まっているんで、そういう意味では危機感もって常に頑張ってやっていました」

―ここで生き残るために必死だった。周りからの目や苦しいことがあっても、ブレなかった?
「他人になんて言われようが目指すものはプロや選手権優勝だったので、あまり気にしないでやっていました」

―仲間たちとの競争は外から見ても凄い
「みんなギラギラした選手ばかりなので、その中で抜け出すにはそれよりも強い、高い意識を持ってやることが大事だなと思ってやってきました」

―それをやってきたという自負は
「あります」

―今の時代、特別なものを持っていたり、相当努力してきた選手でなければプロのステージに立つことはできないと思うが
「人一倍努力はしてきたつもりですし、軽い練習だけやってプロになった選手はいないと思うので、苦しむことを嫌がらずにやってきました」

―苦しむこと?
「黒田監督にも『苦しいことをやれるようになれ』、と言われているので」

―その苦しいことで思い浮かぶことはある?
「自分個人でっていう訳じゃないですけど、チームの人にも『嫌がることを』、と言いますし。苦手なプレーってあるじゃないですか。それでも苦手なプレーを克服できるように。得意なことだけをやるんじゃなくて、『苦手なことを努力しろ』とチームに監督が言ってくださるので、そういう意味で嫌なことをやってきたつもりです」

―ここで培った6年間は特別
「雪国なので関東だったり、関西だったり、雪のないところに比べたら厳しい環境だと思うんですけど、それをポジティブに捉えて厳しい練習をすることで山田は強いんだと思いますし、そういうことをやってきたからこそ、自分たちも試合で勝てるという自信が生まれてきています」

―ここまで積み上げてきた中で、一番プロで戦うための武器となっているのはどういうところ?
「特に去年からなんですけど、ゴールに向かうプレーだったり、点に絡むことをボランチなんですけど求められてきました。ずっと追い求めてやっていかないといけないと思っていますし、誰にも負けないところだと思っています」

―練習参加や代表合宿で外に行った時にここで学んだことの重要さを再認識したりする?
「個人に対して熱く言ってくれるというのが、山田は相当あるので、凄い成長できると感じています」

―小中学校の時はどういうプレーヤーだった?
「小学校の時はもっとドリブルして足ももっと速かったので、だんだん遅くなってきたんですけど(苦笑)。足も速い方だったので、ドリブルとかスピードに乗ってシュートまで行くプレーヤーでした。中学校、小学校6年生の頃からですかね、だんだんスピードが追いつかなくなってきたんで、それからボランチになったんですよ。それまでFWやっていたんで。ボランチになってからは(青森山田・黒田監督の息子である黒田)凱が同じチームだったので、(黒田)監督に色々と指導してもらった。小学校4年生くらいから凄いたくさん教えてもらって。(指導してもらったのは6年じゃない?)もっと、ありますね」

―スピードの面だったり、壁を乗り越えることは難しかったのでは?
「中学校のままの自分だったらプロは決まっていなかったと思っていて、転機になったのは去年の選手権です。2年生の後半になってから監督に『ゴールに対して貪欲になれ』と言われてから一番成長した時期で。その時が一番良かったのかなと思っています」

―プロに近づいたのもあの大会。去年の選手権はどんな大会だった?
「今までやってきたサッカー人生の中で、今のところ一番大きな大会で、本当に自分をプロに近づけてくれた大会で思い入れがあります」

―昨年は、絶対に活躍するんだという前のめりになるくらいの気持ちがあった?
「そうやって考えると、『活躍するぞ』とは思っていなくて、『チームのために』ということだけを考えていた結果がああいう形になりました」

―優秀選手に入っていなかったり、高校選抜に入れなかったのは意外だったけれど
「ちょっとは期待していたんですけど、点を取ることはしましたけれど、まだまだ足りないことが多いなと感じたので、やり残したというよりはまだ足りない部分が多かったという感じです。ボランチとして点を取るだけじゃもちろんダメなので、ボランチとして最低限必要なボールを失わないことだったり、ゲームを組み立てることだったり、守備のところもそうですけど、そう考えると点を取っただけというのは……」

―今年はその部分が強調されている一方で得点数が伸びてはいない印象だが
「そうなってはダメだなということを分かっているんですけど、あまり取れていないのはそういう部分に気をつけているからかもしれないです。ボランチをやりながらも、自分の決定力の部分だったりを出していけるようにしていかないといけないと思っています」

―去年の準決勝は最後の最後のところの1プレーで失点して敗れたが、そこから学んだ教訓とは?
「あのシーンはラインを上げなかったんですけど、一つの守備だったり、一つの攻撃の怠り、怠けた部分でサッカーは決まってしまうのでそういうのをチーム全体として突き詰めていかないと最後ああいう結果になってしまうと感じました」

―終わった瞬間、どのような感覚だった?
「(日本一が)こぼれ落ちた感じだったので……終わった後はやり切った感じだったんですけど、『まだ、やれたな』というのはあったかもしれないです」

―(前主将の)北城選手たちからは何という言葉を
「『自分たちの悪かったところを来年のチームはそうならないようにして絶対に優勝して欲しい』と言われました」

―その悔しさが今年、プレミアリーグの快進撃などに繋がった
「去年の選手権の負けとかを見てきている。スタメンで出ていたメンバーが5人もいるので、チームの中に浸透させてやれていたのかなと思います」

―より頑張るチームに
「自分たちで言っているのは、自分たちは技術がないと捉えていて。技術がない分、チームへの犠牲心あるプレーだったり、チームのために戦ったり、走ったりっていう、誰でも意識で変えられるようなことをやるようにはしています」

―今の山田の一番の強みはそこになる?
「そうですね。精神的なところでも、厳しい練習をやってきているのでチームのためにやろうということを全員が考えていると思います」

―普段の学生生活は
「スポーツクラスがあるので、サッカー部はみんなそのクラスです。野球部とかもいます」

―帰ってからも勉強する?学業の面もかなり優れていると黒田先生はおっしゃっていたけれど
「(自宅に)帰ってからは勉強しないです。学校の中でやって、あとはテスト前に少し。サッカーが一番っていうのはおかしいですけど、サッカーのためにやっています」

―選手権、この選手と対戦したいというのはある?
「プロに行く選手で中盤の選手は普通にやってみたいです。東福岡や市立船橋ですね」

―その2チームに勝たなければ目標は達成できない
「全国優勝するために勝ちたいと思います」

―偉大な先輩たちをもってしても選手権での優勝はまだ、ない。その先輩たちを上回るためのプラスアルファは?
「最近は失点することが多いので、失点していたらトーナメントは勝てないので守備の強化は大事かなというのと、あとは攻撃での形をある程度作れるようにしていきたいと思います」

―個人としてもプラスアルファを加えないといけない立場だと思うけど
「そんな、凄くみんなと違って抜けているという訳ではないと思うので、プロには行きますけれどそんなに変わらないと思うので……。それじゃダメだと思うんですけどそんなに変わらないかと……」

―では、何が違う?
「正直、自分でも分からないんですけど、他の人に比べたらやれることが多いのかなと思いますね。これが全然できないということはないので。特に抜けていいものは自分の中では見当たらないです。本当は作らないといけないですし、武器はもちろん持っていなきゃいけないと思っています」

―それをみんなは、ゴールと期待している
「そうですね。ゴールが一番分かり易い結果なので。もっともっとやっていきたいです」

―ライバル校には『主役になりたい』という選手もいるけれど、どういう大会にしたい?
「去年は取材で『自分の大会になる』みたいな記事があったんですけど、それが達成できなかったのでそれは悔いが残っているんですけど、自分の大会にできればプロへ行っても相当良い活躍ができると思うのでそういう大会にしたいです」

―それができれば優勝も
「そのときは優勝しているかなと思います」

―その高橋選手の足元を支えることになるスパイク。『RED LIMIT』はかなり映える一足
「凄く目立つデザイン。自分、プレーでも目立ちたいんですけど、最近はスパイクでも目立ってもいいかなと、そういう風に思うようになってきているので履きたいです」

―スパイクへのこだわりはある?
「ボールタッチですね。タッチの感覚が良いものを選んでいます。トラップが落ち着くスパイクがいいですね」

―それはプレースタイルが影響している?
「ボールを触る機会が多いので、やっぱりボールコントロールの部分が一番気になります。今までのスパイクもまずパスとトラップは確認しますね」

―ずっと履いてきたスパイク、「ACE」の良さとは
「あまり、足の裏ズレないので走りやすいのがあります。足動くとタッチとか影響があるので」

―このスパイクを履いて全国で、またゴールを目指す
「そうですね。頑張ります!」

(取材・文 吉田太郎)★RED LIMIT PACKの詳細はこちら
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