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「あれほど伸びるとは…」GKをも惑わせた強風に乗った先制FKで支障きたされた帝京大可児のプラン

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チームメイトに声をかける帝京大可児のGK藤間広大(写真協力:高校サッカー年鑑)

[1.3 全国高校選手権3回戦 帝京大可児高0-5上田西高 駒沢]

 帝京大可児高(岐阜)は、同校初の選手権3回戦進出を果たした勢いを持ってベスト8進出を狙ったが叶わなかった。

 上田西高(長野)との試合では風に苦しめられた。ただ、同じ駒沢で行われた2回戦の滝川二(兵庫)戦でも風は強く、前半を風下で戦った条件は同じだった。「県大会でも練習試合でも、前半を風下スタートでいった方がいい結果の出る傾向があった」と堀部直樹監督が言うように、コイントスで選択の権利を得た帝京大可児は“あえて”風下を選択した。

「2回戦も初戦もそうであったように、前半抑えて後半巻き返す、という判断だった」。だが、上田西が前半早々に途中投入してきたFW田嶌遼介(3年)のロングスローなど、風上の立場をフルに使ってくる戦い方に押し込まれる展開が続く。

「ロングスローは嫌でした。リーグ戦でも同じようなことはありましたが、低く速いボールも投げてきたので。ただ、風の影響はそんなにはなかった。対応の仕方にも成長が見られたし、GKのキックも(逆風にも関わらず)センターラインを越えた。よくそこまで蹴られるようになったなと思いました。前半はよく耐えたな、と」(堀部監督)

 だが、「FKは風に泣かされた」とも言う。0-0での折り返しが見えた前半40分、上田西がハーフウェーラインをわずかに越えた位置で得た直接FK。守る帝京大可児からすると左サイドで、距離もある。当然ゴール前にクロスを入れてくると思われたMF丸山圭太(3年)の左足キックはしかし想像以上に伸び、帝京大可児のゴール左上に吸い込まれた。

 このシーン、帝京大可児のGK藤間広大(3年)は「自分のミス」と唇を噛む。「ロングスローは怖かったけど、みんなががんばって耐えてくれていた。高さがある相手でしたが、勝てない相手ではなかった。でもFKは……。ゴールに向かってくると予測はしていましたが、あれほど伸びるとは……」

 コイントス後、エンドを入れ替えてウォーミングアップをしていたとき、仲間にボールを蹴ってもらった際、同じような位置から蹴ったボールがゴールに入ったシーンがあった。「あれは横回転で曲がるボールだったんですが、それが伸びてきた。実際のFKは縦回転だったのでまた伸びが違った」。この判断の迷いが後半にも引きずられることになる。

「決められた(3点目の)ロングシュートも風で流された。ボールはどれだけ回転しているかで軌道が変わってきました」。おそらく、通常の試合であればそこまで判断を惑わせるものではなかったのかもしれない。だが、1失点目の残像が瞬時の判断をいつものそれと違うものにしていたといえる。

「自分のミスで失点してチームの流れを悪くしてしまった。失点したことで後半、前がかりになり、逆に裏を取られることでプランが変わってしまった。(後半開始直後の)2失点目が痛かったです」と自分を責める。だが、堀部監督は違うところに敗因を見出していた。

「思った以上に上田西さんのディフェンスが堅かった。集中力が高く、2~3人で囲んでくる。思ったより早く寄せられたことで、普段ならボールを一度止めるところをワンタッチでいったりすることになった。しかし、あんなに簡単にゴールされるとは……。バウンドの処理ミスや中盤のマークが薄くなるところなど、判断ミスがあったのは(連戦の)疲労の影響なのかもしれません」

 チームの疲労は守護神・藤間も感じていたところだ。「1試合目より動けていないと感じていました。だからこそ、自分がもっとしっかり声をかけてあげればよかった。初戦はみんなで声をかけ合って無失点でしたし、2回戦もまとまってプレーすることができていましたから」。出てくるのは反省の弁ばかり。だが、帝京大可児サッカー部に新たな歴史を刻んだ立役者であることには変わりない。

「歴史を変えられたのはよかったですけど、ロングボールに対する処理という課題もはっきりしました」。結果と課題と、両方を残した選手権。サッカーはまだ続ける。今回の大会が後々大きな糧となるかどうかは、藤間の今後次第だ。「がんばります」。悔しさを噛みしめながら発した言葉、その目はもう泣いていなかった。

(取材・文 伊藤亮)

●【特設】高校選手権2017

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