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[MOM2722]大津DF福島隼斗(3年)_優勝インタビューで思わず涙…背負い続けた悔恨の念

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DF福島隼斗(3年)が夢舞台へ臨む

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.17 選手権熊本県予選決勝 大津高 2-1ルーテル学院高 水前寺]

 優勝インタビューで話し始め、卒業していった昨年の3年生について話が及ぶと、思わず涙がこぼれた。1年前の敗戦後からDF福島隼斗(3年)が背負っていたモノの重さと大きさを思い出させる一幕だった。

「本当に、先輩たちに申し訳ない気持ちがあった」

 昨年、各大会の公式戦においてスターティングラインナップのほとんどを占めたのは、福島ら現在の3年生、当時の2年生たちだった。3年生が一人もスタメンにいないことも別に珍しくはなかった。実力主義とはいえ、先輩たちを押しのけて試合に出ている中で複雑な心境がなかったと言えばウソになる。

 その中でゲームキャプテンを務める福島には「先輩たちがどう思っているのか本当に心配だった」という不安も抱えていた。その中で迎えた選手権予選で味わった敗退。その悔恨は「この1年間ずっと残っていたというか、これから先の人生でずっと忘れないで自分の中に残っていくと思う」と振り返るほど重いものとなった。

 だからこそ、今回の選手権予選に懸ける思いは人一倍だった。絶対に負けるわけにはいかないプレッシャーも感じながら臨んだその試合は、福島の主将としての真価が問われるゲームでもあった。心掛けたのは「笑顔」だと言う。精神的にネガティブになったチームが驚くほどにパフォーマンスを落としてしまうのが選手権予選という魔境である。その怖さを知っているからこそ、「とにかく楽しんでやろうという姿勢で臨んだ」という。

 象徴的なのは失点シーンだろう。前半11分という早い時間帯。しかも守備対応の甘さも出ての失点だっただけに怒鳴り散らしても良かったが、そうはしなかった。「本当に信頼している」と言う仲間たちと前向きに言葉を交わして、戦う姿勢を確認する。

 その後も攻撃陣が決定機で外し続けて難しい流れとなってしまい、内心「決めろよ!」と言いたくなるところもあったが、そこは押し殺した。イライラするムードが漂うのは危険な兆候。そう感じてここでも前向きに周囲を鼓舞し続けた。

 プレー面でも十分に冴えていた。実は万全のコンディションではなかったのだが、最終ラインから正確な長距離パスをサイドに飛ばして相手に揺さぶりをかける。SBが絞って守る傾向のあるルーテル学院高に対して、早めの展開でその脇を突くという狙いどおりの形を何度も作り出した。さらに1点差のまま終盤を迎える難しい流れとなってからも、細心のリスクマネジメントと判断の良いカバーリングでピンチの芽を摘み取った。

 ルーテル学院の猛攻については「怖さもあった」と率直に明かすが、「ウチのDFはみんな泥臭いんです」と胸を張ったとおり、全員が体を張った守りを貫徹。シュートから逃げる選手がいない大津らしいディフェンスで、ルーテル学院の反撃を封じ込み、選手権切符を勝ち取った。

「先輩たちがあって、今の自分たちがいる。そこは絶対に忘れないように、感謝の気持ちを持って選手権に挑みたい」

 心に残した悔いと共に1年を過ごし、それを見事に乗り越えた“大津のキャプテン”は、最終学年にして初めての出場となる夢舞台へ臨む。

(取材・文 川端暁彦)
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