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相手を見て戦う「ドリブル軍団」聖和学園、攻め方変えた後半の3発で東北学院を撃破!:宮城

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後半11分、MF梅田隆之介(10番)が先制ゴール

[10.27 選手権宮城県予選準決勝 聖和学園高 3-0 東北学院高 ユアスタ]

「東北のドリブル軍団」が選手権王手――。第98回全国高校サッカー選手権宮城県予選準決勝が27日に行われ、インターハイ予選優勝の聖和学園高と県新人戦優勝の東北学院高が対戦。聖和学園が3-0で快勝し、仙台育英高との決勝(11月3日)へ進出した。

 ベースにある「ドリブルスタイル」は変わらない。だが、全国制覇を目指す聖和学園は新たな特性を身に付けている印象だ。今年は相手の守り方を見て攻撃パターンを柔軟に変化。この日も攻め方を変えた後半に3ゴールをもぎ取り、堅守・東北学院を攻略した。

 聖和学園は立ち上がりからMF山下慶次(3年)を中心にボールを支配。DFライン、中盤の選手が空いたスペースへドリブルしてボールを運び、高い位置から左SB金子力丸主将(3年)や左MF梅田隆之介(3年)と右MF局田真伸(3年)の両翼が縦突破にチャレンジする。

 だが、コンパクトな陣形で守る東北学院は1人がかわされても2人目、3人目のところでストップ。梅田にPAまで切れ込まれるシーンや山下にキックフェイントからシュートへ持ち込まれるシーンもあったが、大きな穴を作らずに守り続ける。

 そして守備力を期待されて先発起用されたMF阿部優也(3年)やMF三瓶遼汰(3年)がボールを奪うと、素早くカウンター攻撃。25分には前線でFW熊谷悠里(3年)がボールを奪い返し、エンドライン際まで攻め上がった左SB佐藤大河主将(3年)がクロスを上げきる。また佐藤の左足プレースキックなどから先制点を狙った。

 聖和学園はCB宮城治壮(3年)が落ち着いてその攻撃を阻止するなど慌てない。だが、中央に人数を掛けた東北学院の守りも強固。序盤は1タッチパスに重きを置いていたエースMF古賀楓真(3年)が徐々にボールタッチを増やし、38分にはジャンピングボレーを打ち込む。だが、枠を捉えず、前半を無得点で折り返した。

 ただし、聖和学園は前半のうちに攻略法を見出していたようだ。金子は「前半、サイドで行った時に縦のレーンを5つ分けた時に1と5で勝負していたんですよ。もっと2と4で勝負しないと結局CBに勝負に行っていないから、見た目で抜いていただけだった」と説明する。後半は大外からの突破ではなく、PA脇の「ポケット」への攻撃に変化。梅田と入れ替える形でレフティーの局田を左サイドへ移動させると、後半は「ポケット」へ走り込んだ局田のクロスから決定機を増やした。

 9分、局田の左クロスからFW柴田弦哉(3年)が1タッチで合わせたシュートは東北学院GK菅野輝人(2年)がストップ。だが、直後の11分、局田が左足で右CKを入れると、ニアの梅田が頭でファーサイドのゴールネットに流し込んだ。「(前半のCKは)ファー取られてカウンター食らったりしていたので、ニアで攻めろと話していました」と加見成司監督。ここも攻め方で変化させた効果を発揮し、先制点を奪った。

 リードされた東北学院は選手交代に伴い、佐藤を前線へ。その佐藤が1度、2度とクロスまで持ち込んでスタンドを沸かせる。だが、聖和学園は23分に追加点を奪う。左中間から縦に抜けようとした局田がDFと接触して転倒。ここで一瞬足を止めてしまった東北学院に対し、聖和学園はボールを拾った山下がすぐさまクロスを上げる。これを受けた梅田が冷静に左足で仕留めて2-0とした。

 東北学院は2失点目直前に投入された攻撃的ボランチ・MF小田尚輝(2年)らがボールに絡む形で反撃。27分には左クロスからファーサイドを突いたMF小林優太朗(3年)が決定的な右足シュートを放つ。

 東北学院は反撃の勢いを増したが、聖和学園は交代出場のMF田村聖斗(2年)がゲームコントールし、侵入する力も発揮。加見監督も「ウチは選手層も揃っているので、信頼して出して上手く流れが変わって良かった」と評していたが、聖和学園は交代出場の選手たちが前に出てきた東北学院の背後を取る形で決定機を作り出す。

 そして、アディショナルタイムには梅田がDFラインの背後へループパス。オフサイドポジションにいた選手を追い越す形で抜け出した交代出場FW伊勢本貴翔(3年)が左足で決めて勝利を決定づけた。

 金子は今年のチームについて、「相手の色々な守備パターンを見て、攻撃の仕方を変え続けて戦うというのが一番の武器だと思う。同じやり方で崩すよりは相手がこうしてきたらこうしよう、こうきたらこうしようと色々準備してきている」と説明する。準々決勝、準決勝と中央の守りを固める相手の攻略にやや時間がかかったが、簡単には行かないのは承知の上。焦れず、慌てずに80分間、もしくは延長戦を含めた100分間でしっかりと仕留めることを目指してそれを実行してきている。

 上手さと強さを示して決勝進出。加見監督は決勝へ向けて「なかなかそう簡単には行かないと思いますし、去年ああいう悔しい負け方(PK戦の末に準優勝)を見ている子たちだから。思い切ってプレーしてもらえたら良いかなと思います」と期待し、古賀は「去年出ていた選手もいるし、新チームになってすぐから『全国獲る』ということを目標にやってきて、負けた試合は片手で数えるほど。成長はできてきていると思います。ここ(宮城)で優勝するためじゃなくて全国獲るためにやってきたので、勝たないといけないと思います」と力を込めた。聖和学園が宮城を制して今年は全国でも勝ち上がる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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