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富山一は夏から選手層に厚み。2アシストも交代後に涙の2年生FW吉倉「成長するだけ」

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富山一高の2年生FW吉倉昇空

[11.2 選手権富山県予選決勝 富山一高 5-0 水橋高 高岡スポーツコア]

 インターハイ準優勝の富山一高は、夏から選手層も向上している印象だ。準々決勝ではインターハイで登録外だったFW高橋駿斗(3年)が後半終了1分前に劇的V弾。また、FW鈴木崚加(3年)が怪我で不在の中で先発チャンスを得ている2年生FW吉倉昇空が準決勝で2ゴールを決め、決勝でも2アシストを記録した。

 吉倉は180cm近い長身とキープ力、そして相手を欺くようなプレーも特長とするストライカーだ。インターハイ時はシャドーのポジションの控え。全国決勝では出番を得られなかったが、選手権へ向けて成長を目指してきた成果を随所で発揮している。

 決勝では前半32分に左クロスで競り勝ち、FW碓井聖生(3年)の先制点をアシスト。その後もスルーパスで抜け出して決定的なシュートを放つなどチャンスに絡んでいたFWは後半20分、ループパスで抜け出すと、正確な落としでMF高木俊希(3年)のゴールを再びアシストした。

 加えて、コーナー付近に追い込まれながらもDFの股間を通すパス。「大事にしています」という相手を欺くプレーや、観衆を楽しませるようなプレーも見せた。だが、無得点のまま後半23分に交代すると、ベンチで涙。「決勝は絶対に1点獲りたいと思っていたので。チャンスはあったけれど、決めきれなかった。悔しすぎて涙が出てきました」と振り返る。

 ただし、自らのエゴを貫かずにアシストした3点目は、劣勢になりかけていたチームを救うもの。周囲を活かしたプレーと悔しさを露わにしていた姿を加納靖典コーチは前向きに捉えていた。

 富山一のコーチ陣は、インターハイ後のプリンスリーグ北信越2試合で吉倉に10番を与えている。本来10番の高木を欠いていたことも理由だったが、10番を背負うことでの彼の変化を期待。ストライカーとしてゴールにこだわることはもちろん大事だが、加納コーチはFW柳沢敦やFW西野泰正をはじめ「富一の10番は周りも活かせるのが伝統」と語り、次期10番候補の吉倉にその部分も求めている。

 吉倉にとってこの決勝は、前線でボールを収める部分や前を向いてシュートする部分が不十分だったことも含めて悔しい試合となったが、プラス要素も。決めて、周りも活かすことのできるFWになって行くか。ともにインターハイ優秀選手の鈴木と碓井を脅かす存在になる可能性のある2年生FWは、「競争とかは頭の中になくて、ただ成長するだけと言う感じです」と全国大会へ向けて成長へ必死。インターハイ準優勝校は、夏前に負傷離脱するまでアンカーを務めていたMF福岡輝(2年)の復帰や、台頭してきた力など夏からの積み上げにも注目だ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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