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[MOM3029]四日市中央工MF宮木優一(2年)_苦しみから一皮むけた期待のアタッカーが決勝点

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スランプを脱したMF宮木優一(2年)はブレークの予感漂う

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.4 選手権予選準決勝 四日市中央工1-0四日市工 東員町]

香川真司(サラゴサ)みたいな1年生がいて、面白いんですよ」。数多くのJリーガーを輩出した四日市中央工高の前監督である樋口士郎氏が、1年前に口にした言葉をよく覚えている。視線の先にいたのはMF宮木優一(2年)だ。

 武器である滑らかなドリブルとパスを判断良く使い分けながらゴールに迫るアタッカーで、昨年は樋口氏の大きな期待を背負い、1年生で唯一の主力としてプレー。途中出場ながらも選手権のピッチを経験した。

 2年目を迎えた今年は主力としてプレーすべき選手だったが、夏まではベンチを温め続け、思うように出番を得られなかった。伊室陽介監督は試合で使わなかった理由についてこう明かす。「ドリブルでもよく引っかかる。自分の好きなプレーしかしない。今まで出来ていたプレーができなくなり、攻撃が彼の所でストップしていた」。

 宮木は当時を振り返り、「試合に出ながらも何も結果が残せず、“やらなくちゃ”という想いが強くなりすぎて前しか見えていなかった」。インターハイ予選の直前に怪我したこともあり、全国ではメンバー登録されたものの出場機会はなかった。

「インターハイで活躍して名を売りたかった」宮木にとって、全国の舞台に立てなかったことは相当悔しく、練習から意識を変えようと思ったという。これまで走力トレーニングで苦しい時は手を抜くこともあったが、今は「しんどい時こそ頑張ろうという気持ちが身体に染み付いてきている」と話す通り、メニューの終盤でも先頭グループに食らいついている。

 加えて試合での活動量を増やすために、9月にはボランチへの転向も経験した。そうした中で山崎崇史コーチと話し合い、ドリブルを最優先に考えていた以前のプレースタイルを改め、ゲームメークにも力を注ぐようになった。

 そうした変化が認められ、選手権予選からはスタメンに復帰した。迎えた準決勝・四日市工高戦では、MF森夢真(3年)とのコンビネーションで左サイドからチャンスを演出。相手エリアでドリブルを仕掛けながら、上手くDF土江晃貴(3年)やFW田口裕也(3年)を使い、四日市工のゴールに迫った。

 最大の見せ場が訪れたのは前半23分。右サイドを攻め上がったDF永崎楓人(3年)のパスを中央で受けると、ドリブルからの切り替えしで対面するDFをかわし、そのままPA内に進入して左足シュート。このゴールが決勝点となり、四中工が1-0で勝利した。

 決勝進出の立役者となった宮木は、「簡単な試合になるとは思っていなかった。伊室(陽介)監督からも『選手権だから上手く行かない。何が起こるか分からない』と言われていた中で、風下でも1点を獲れたのが大きかった」と喜びを口にした。

 必死になり過ぎて周りが視えていなかった以前とは違い、「余裕を持って楽しくやれている」今予選は初戦から毎試合ゴールネットを揺らし続け、コンディションも上がっている。「自分と向き合いながら、我々の要求に応えてくれた結果、悔しい時期を乗り越えた」と伊室監督が話すように、スランプはもう過去の話だ。苦しい時期を乗り越えた今の彼ならば、決勝でもチームを勝利に導く活躍を見せてくれるだろう。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校選手権2019

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