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パントは右足、FKでは左足も!? 鹿島実・鹿島GK松本拓也は好セーブでも“異才”発揮:佐賀

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両足で精度の高いキックを見せた鹿島実・鹿島新高GK松本拓也(3年)

[11.3 高校選手権佐賀県予選準決勝 佐賀北高4-1鹿島実・鹿島新高 鹿島市陸]

 右足で鋭いパントキックを蹴ったかと思えば、左足でも高弾道のゴールキックを展開。両足で変わらぬボールタッチができるビルドアップに加えて、鋭い反応に支えられたビッグセーブを見せ、また敵陣からのFKではキッカーも務めるなど、鹿島実・鹿島新高GK松本拓也(3年)が放った存在感は絶大だった。

 便宜的に『鹿島(新)高』と記されている鹿島高は昨年、鹿島実高と旧・鹿島高が合併する形で誕生した。公式プログラムの表記は『鹿島実・鹿島・鹿島新高』。現在の3年生は合併前の学校にそれぞれ籍があり、2年生以下は新校に在籍するため、実質的に3校の生徒が並存しているからだ。

 もっとも、サッカー部員の3年生は全員が鹿島実高の生徒。そこで公式メンバー表には『鹿島実・鹿島新高』と記されている。「実業高校という名前がつくのは今年が最後」(松本)。来年からは単一校として出場することになるため、3年生はそんな思いも背負って戦っていたという。

 鹿島西部中出身の松本を筆頭に、大半の所属選手は地元の中学校出身。「全国で活躍している選手がいないメンバーでやっているけど、実力だけでなく気持ちが大事。気持ちでやっている」(松本)。この日は県総体覇者の佐賀北高と対戦したが、そうしたメンタリティーは随所に発揮されていた。

 前半と後半の立ち上がりに手痛い失点を喫したが、山里友也コーチのハツラツとした指示を受けた選手たちは粘り強い対応をやめず。後半には鋭い速攻からFW田崎文達(1年)が一矢報いるゴールを決めるなど、流れを持って行きそうな時間帯もあった。その中で最も存在感を放っていたのは松本だった。

「レベル的には下のほうだと思っている」と自らを謙虚に語る松本がGKを始めたのは高校に入ってから。小学校ではFW、中学校ではDFとMFを務めていたといい、登録183cm、88kgという恵まれた体格を見込まれての挑戦だった。「最近は上手だねと言われるけど、自分の中では実力のないGK」と自身に求める基準は高い。

 それでも歴代の先輩や佐賀東高出身の中原希コーチに鍛えられ、ハイボールの処理やセービングは経験が浅いとは思えないほど正確。この日の前半には相手の危険なヘディングシュートに対し、「どこに来るか分からないけど、我慢して動かないで対応できた」と片手で弾き出すビッグプレーも飛び出した。

 また「自分はキックしかない」と語るように、両足の扱い方はフィールドプレーヤー以上。「もともと両利き」というキックはどちらも高水準で、パントキックは右足で蹴るが、プレースキックは位置によって両足で蹴り分けができるほどだ。ある程度までなら高い位置のFKキッカーも担い、ここまでの戦いの中ではそこから得点が生まれることも多かったという。

 そんな松本だが、この日は4失点で敗戦。「練習から試合を想定してやっていて、失点しないように意識してきたのに、失点が多くてとても残念」と振り返り、「決勝まで進めば駅スタに行けたので後悔している」とうつむいた。それでもまだGK3年目。高校卒業後は大学に進学する予定となっており、「まずはサッカーを続けていくことが大事」とさらなる未来を切り開いていくつもりだ。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

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