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初先発の2年生エースが左足ズドン! 静岡学園FW加納大「一発やってやろうと」

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静岡学園高FW加納大(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 遅れてきたエースの大仕事だった。静岡学園高FW加納大(2年)は準決勝までの全5試合、左膝負傷の影響により出場時間は合計わずか42分。それでも決勝の大舞台で初めて先発に抜擢されると、貴重な同点ゴールを突き刺した。「自分たちがやってきたことが間違いないと結果で表せた」。優勝決定直後にはその目には光るものが見えた。

 1-2で迎えた後半16分、それまでなかなか輝けていなかった背番号9がついに目覚めた。左サイドを攻め上がったMF草柳祐介(3年)と目が合うと、斜めのパスを左足でトラップ。「ヤナギさんが中に入ってくるので使う手はあったけど、自分しかないと思った」。そのまま相手を背負いながら前を向き、豪快な左足シュートでファーサイドネットに突き刺した。

「斜めの角度から打つことは自主練でもやっていた。日頃の練習がゴールにつながった」。そうした積み重ねの末に出た一撃は貴重な同点ゴール。「僕のゴールでチームがイケイケムードになったので一仕事できた」。勢いに乗ったチームは後半40分に勝ち越しゴールを挙げ、3-2で勝利。2点ビハインドをひっくり返し、24年ぶりの日本一に辿り着いた。

 普段は全体ミーティングで伝えられる先発メンバーだが、この日は川口修監督が加納だけを呼び出し伝えた。「目がギラギラしていて、俺を使ってくれというものが見えた」(川口監督)。そんな期待を背負いながらもゴールに絡めず、同点弾の直前には交代の準備が進行中。「交代されそうだったのは知らなかった」(加納)。ギリギリのところで果たした大仕事だった。

 今大会、加納は左膝に抱えていた炎症を落ち着かせるため、開幕節からベンチで試合を眺めることが続いていた。出場したのは3回戦・今治東戦の19分間と準決勝・矢板中央戦の23分間のみ。背番号9は「勝ち上がっていってうれしい気持ちはあったけど、外から見ていることが多くて悔しい気持ちだった」と率直な思いも明かす。

 しかし、そんな鬱憤も晴らすゴールとなった。「悔しい気持ちが大きくて、自分が出たら一発やってやろうという気持ちでずっと準備してきた。準備を怠らずにやってきた成果がこうやって結果で表れてうれしい」。また夢舞台での活躍は「自分の名前を売り出せるし、キャリアアップにつなげる」という野望を体現するものとなった。

 さらに加納は、先輩の思いも背負って戦っていた。これまで5試合に先発し、大会得点王の5ゴールを挙げてきたFW岩本悠輝(3年)はこの日、エースに押し出される形で先発落ち。高校生活のラストマッチをベンチで過ごした。それでも岩本は試合前、悔しさを秘めつつ加納に「頼んだぞ」と声をかけ、日本一の夢を託していた。

「ここまで連れてきてもらった。今日は自分が先発起用させてもらって、感謝を返すためには結果しかないと覚悟を決めて試合に出た。それを形で実現できてよかった」(加納)。岩本からは試合後に「よくやってくれた」と伝えられたといい、加納は「今まで2年間お世話になってきた先輩なので感動したし、2人でうれしかった」と笑顔で振り返った。

 そんな加納は来季、絶対的なエースとして全国の舞台に戻ってくるつもりだ。「こうやって自分の名前を売れたことで背負うものは増えてくるし、厳しいこともあると思う。そういうのを跳ね除けてこその静学だと思うので、自分が引っ張っていくつもりで全国に出て2連覇を目指す。そして自分は今大会で1点しか取っていなくて悔しい気持ちもあるので来年は得点王を目指したい」。力強い宣言とともに新シーズンへ向かう。

(取材・文 竹内達也)
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