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チーム一団となって挑む最後の冬。夏のリベンジを目指す佐賀商が6年ぶりのファイナル進出!

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佐賀商高は台風の目・鳥栖高を下して決勝進出!

[10.31 選手権佐賀県予選準決勝 鳥栖高 0-5 佐賀商高 鹿島市陸上競技場]

 王者への挑戦権は絶対に渡さない――。10月31日、第100回全国高校サッカー選手権佐賀県予選の準決勝が行われ、佐賀商高は鳥栖高に5-0で勝利。2012年度以来の選手権出場に向けて、6年ぶりに決勝進出を決めた。

 インターハイのファイナリスト・佐賀商にとっては難しい試合となった。相手は初の決勝進出を目指す鳥栖。普段のトレーニングは土のグラウンドを他の部活動と分け合いながら利用しており、文武両道の“文”に力を入れる進学校でもある。そのため、今年も例年通り、3年生は夏で引退。オール下級生で挑んだ今予選は快進撃を続け、初の4強入りを果たした。今予選で台風の目となった鳥栖に対し、佐賀商は前半から苦戦を強いられる。

「自分たちの方が強い。そうした想いが必要以上に硬くさせたのかもしれません」。松尾智博監督が苦言を呈したように、序盤から力任せに攻撃を仕掛けてしまう。サイドアタックと中央突破を上手く組み合わせるまでは良かったが、個の力で強引に打開するケースが散見。左SBの米倉藤生(3年)も果敢に攻め上がったが、相手に突っ込むパターンが頻発した。肩の力が入り過ぎ、ゴール前でも冷静さを欠いてしまう。前半26分にはFW原口海斗(3年)が左サイドから持ち込んだが、シュートは鳥栖GK神代怜莞(2年)にブロックされた。局面を打開すべく、29分にはCB山本恵大(3年)が意表を突いたロングシュートを放つ。しかし、これはバーに阻まれた。

 運にも見放された中で、前半終了間際に待望の先制点が生まれる。38分、3列目から攻撃に加わったキャプテン・MF中原魁二(3年)が、ゴール前でラストパスを供給。ボールを受けたFW田雑蓮(3年)が相手DFを上手くブロックしながら、得意の左足でネットを揺らした。

 肩の力が抜けた佐賀商は後半に入ると、攻撃のギアを一段階上げる。中原が左右にボールを散らすと、後半から投入された左サイドハーフのMF上釜武蔵(3年)や米倉が上手く絡んでチャンスを作った。後半8分にはMF中島悠(2年)のお膳立てから上釜が左足で加点。17分には右サイドをえぐった原口の折り返しに中原が合わせ、さらにリードを広げた。

 一気に畳み掛けた佐賀商は、その後も堅実な試合運びで相手に付け入る隙を与えない。鳥栖の攻撃を牽引する主将・MF酒井寧仁(2年)に対しても、素早く対応。良い状態でボールを受けさせず、ペナルティエリアに入れさせなかった。

 終盤に入っても集中力は切れず、攻撃陣も貪欲にゴールを目指す。後半31分には米倉、直後の32分には途中出場のMF新郷快(3年)が決めて勝負あり。後半に攻撃陣が爆発し、佐賀商が勝利を手にした。

 次なる相手は佐賀東。夏のインターハイ予選決勝では先制点を奪いながら、後半に2失点を喫して敗戦。以降は“打倒・佐賀東”を目指してチームの強化を図ってきたが、夏場は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で8月中旬から9月下旬まで対外試合が禁止となり、一部期間は部活動すら行えなかった。

 夏以降、チーム強化の場は部内での紅白戦が中心。それでも選手たちは下を向かずに取り組んだ。「こういう経験をしたからこそ、全国に行こうという想いが強くなったと思う。サッカーに向き合う姿勢が変わった」(中原)。松尾監督も選手の頑張りに目を細め、「ひたむきにやってくれたと思う。彼らの真面目さや誠実さが生かされた」と賛辞を送る。

 このメンバーでサッカーができるのは冬の選手権が最後。一部の3年生は今大会でサッカーから離れる者もおり、仲間たちと1日でも長くボールを蹴るためには勝ち続けるしかない。11月13日の決勝まで約2週間。「思い切り行くだけ。準決勝までは絶対に勝たなければいけなかったし、背負っているモノがあった。決勝は全ての重荷を下ろし、佐賀東と戦いたいです」(松尾監督)。失うものは何もない。チャレンジャー精神で王者に立ち向かう。

(取材・文 松尾祐希)
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