「必ず成功するかはわからないが、成長は絶対ある」。専修大松戸MF藤本飛龍が考えるキャプテンの役割
[10.30 選手権千葉県予選準々決勝 敬愛学園高 1-3 専修大松戸高]
今でもケガの状態は万全ではない。ピッチでチームに貢献したい気持ちだって、強く持っているに決まっている。それでも、決めた。キャプテンとしてできることを、どこが舞台でも、全力で。
「ひたむきに頑張り続けることで、必ず成功するかは正直わからないですけど、成長は絶対あると思っているので、そういうところが自分では養われたのかなって思います」。専修大松戸高を率いるキャプテン。MF藤本飛龍(3年=クリアージュFC出身)は目に見える成功よりも、目に見えない成長の持つ意味を、自分の中で考えている。
敬愛学園と激突した選手権予選準々決勝。2-1でリードしていた後半27分に、藤本がピッチへ投入される。「交代したら内田から受けとることは決めていました」と自ら語ったように、キャプテンマークをMF内田龍馬(3年)から渡されると、左腕にしっかりと巻く。
「ゴールを目指しては常にやっていたんですけど、時間帯と状況を考えて、とにかく変な奪われ方はしないことと、できるだけ前でプレーすることは、自分としてもチームとしても共有していましたし、締めとして喝は入れていきました」。何よりもこの舞台に立っていることが、藤本にとっては嬉しかった。
インターハイ予選が終わり、本格的に夏が到来する少し前の時期。腰が痛み出す。2か月近い離脱期間を経て、一度は練習にも復帰したものの、決して万全ではなかった同じ箇所が再び悲鳴を上げる。「復帰したんですけど、また同じところをケガしてしまって、ちょっと自分の中で苦しい夏を迎えていて、選手権に出れるか出れないかも正直怪しかったんです」。キャプテンを任されながら、なかなかピッチでチームへ貢献することのできない状況に、藤本はさまざまなことを考える。
「チームにも試合に出られている選手と出られていない選手、メンバーの選手とメンバー外の選手といろいろいるわけで、ずっと出ていた人が出られなくなると、普通だったら『何で出られないんだよ』って悔しくなると思うんですけど、まず自分は『プレーでは貢献できないなら、どこでなら貢献できるか』と考えて、声かけだったりチームの雰囲気を良くすることだったり、普段出られていない選手への接し方でアドバイスをしたりと、少し“大人の目”で見て、考えられるようになりました」。
もともと、とにかくサッカーを楽しむことを主眼に置いているチーム。「他のチームとは違う“作り”になっているので、自由というのは紙一重で、やっぱり誰かが締めないと、チームが壊れやすい部分もあって、正直シーズンが始まる前にそういう時期もあったんですよね」と藤本。その中で野村太祐監督と話し合い、あることをスタートさせたという。
「普段は授業から部活になるんですけど、そこで1回気持ちをセットするために、全員を集めて、自分がその日の練習に対することや、今週は何があるとか、いろいろなことを話すことで、練習に良い雰囲気で挑めるようにすることを始めました。これは監督とも話し合ったことで、今まで“センマツ”は県内でベスト4より先に行ったことがなくて、自分たちの自由な部分が悪い形で出たりするところも隙になってくると思うので、少しでも良いトレーニングができるように、新たに始めた部分です。些細なことですけど、それを継続していくことは『チームになる』という意味でも、こだわっていかなきゃいけないところかなと思っています」。自由の中にも、最低限の規律を設けること。指揮官とキャプテンが描いた想いは、“ベスト4”まで確実に繋がってきた。
藤本はここから先の選手権に向けて、こう言葉を紡ぐ。「勝つというところだけにフィーチャーし過ぎてしまうと“センマツ”は正直良い方向に行かないので、いつも通り練習でも雰囲気良くやって、“センマツ”の中でもベストゲームを迎えられるようなゲームにして、それで勝ちが付いてきたらと思います。見ている人が楽しめるような、そういう攻撃的なサッカーを準決勝も決勝もしていきたいと思いますね」。
現実的にフル出場は難しい。でも、自分に果たせる役割は必ずある。ピッチの中でも、ピッチの外でも、藤本は自らが成長してきた証を、チームのために、チームメイトのために刻み続ける。
(取材・文 土屋雅史)
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今でもケガの状態は万全ではない。ピッチでチームに貢献したい気持ちだって、強く持っているに決まっている。それでも、決めた。キャプテンとしてできることを、どこが舞台でも、全力で。
「ひたむきに頑張り続けることで、必ず成功するかは正直わからないですけど、成長は絶対あると思っているので、そういうところが自分では養われたのかなって思います」。専修大松戸高を率いるキャプテン。MF藤本飛龍(3年=クリアージュFC出身)は目に見える成功よりも、目に見えない成長の持つ意味を、自分の中で考えている。
敬愛学園と激突した選手権予選準々決勝。2-1でリードしていた後半27分に、藤本がピッチへ投入される。「交代したら内田から受けとることは決めていました」と自ら語ったように、キャプテンマークをMF内田龍馬(3年)から渡されると、左腕にしっかりと巻く。
「ゴールを目指しては常にやっていたんですけど、時間帯と状況を考えて、とにかく変な奪われ方はしないことと、できるだけ前でプレーすることは、自分としてもチームとしても共有していましたし、締めとして喝は入れていきました」。何よりもこの舞台に立っていることが、藤本にとっては嬉しかった。
インターハイ予選が終わり、本格的に夏が到来する少し前の時期。腰が痛み出す。2か月近い離脱期間を経て、一度は練習にも復帰したものの、決して万全ではなかった同じ箇所が再び悲鳴を上げる。「復帰したんですけど、また同じところをケガしてしまって、ちょっと自分の中で苦しい夏を迎えていて、選手権に出れるか出れないかも正直怪しかったんです」。キャプテンを任されながら、なかなかピッチでチームへ貢献することのできない状況に、藤本はさまざまなことを考える。
「チームにも試合に出られている選手と出られていない選手、メンバーの選手とメンバー外の選手といろいろいるわけで、ずっと出ていた人が出られなくなると、普通だったら『何で出られないんだよ』って悔しくなると思うんですけど、まず自分は『プレーでは貢献できないなら、どこでなら貢献できるか』と考えて、声かけだったりチームの雰囲気を良くすることだったり、普段出られていない選手への接し方でアドバイスをしたりと、少し“大人の目”で見て、考えられるようになりました」。
もともと、とにかくサッカーを楽しむことを主眼に置いているチーム。「他のチームとは違う“作り”になっているので、自由というのは紙一重で、やっぱり誰かが締めないと、チームが壊れやすい部分もあって、正直シーズンが始まる前にそういう時期もあったんですよね」と藤本。その中で野村太祐監督と話し合い、あることをスタートさせたという。
「普段は授業から部活になるんですけど、そこで1回気持ちをセットするために、全員を集めて、自分がその日の練習に対することや、今週は何があるとか、いろいろなことを話すことで、練習に良い雰囲気で挑めるようにすることを始めました。これは監督とも話し合ったことで、今まで“センマツ”は県内でベスト4より先に行ったことがなくて、自分たちの自由な部分が悪い形で出たりするところも隙になってくると思うので、少しでも良いトレーニングができるように、新たに始めた部分です。些細なことですけど、それを継続していくことは『チームになる』という意味でも、こだわっていかなきゃいけないところかなと思っています」。自由の中にも、最低限の規律を設けること。指揮官とキャプテンが描いた想いは、“ベスト4”まで確実に繋がってきた。
藤本はここから先の選手権に向けて、こう言葉を紡ぐ。「勝つというところだけにフィーチャーし過ぎてしまうと“センマツ”は正直良い方向に行かないので、いつも通り練習でも雰囲気良くやって、“センマツ”の中でもベストゲームを迎えられるようなゲームにして、それで勝ちが付いてきたらと思います。見ている人が楽しめるような、そういう攻撃的なサッカーを準決勝も決勝もしていきたいと思いますね」。
現実的にフル出場は難しい。でも、自分に果たせる役割は必ずある。ピッチの中でも、ピッチの外でも、藤本は自らが成長してきた証を、チームのために、チームメイトのために刻み続ける。
(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校選手権2021
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