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赤白に映える黄色い腕章。盛岡商DF宮野隼主将は完勝にもしっかり“兜の緒”を締める

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盛岡商高伝統の黄色いキャプテンマークを託されたDF宮野隼

[10.31 選手権岩手県予選準決勝 遠野高 0-3 盛岡商高 いわぎんスタジアム]

 15年前。日本一に輝いた時のキャプテンと同じ4番を背負ったリーダーが、今年のチームを牽引している。この高校で戦うことの意味は、今までも十分過ぎるほど味わってきた。「自分は全国に出るためにこの学校に入ってきて、1,2年生の時も試合に出させてもらって、それでも行けなくて悔しい想いを2年間してきているので、決勝に懸ける想いは強いです」。

 赤と白のユニフォームに、黄色い腕章。伝統を引き継ぐ男。盛岡商高のディフェンスリーダー。DF宮野隼(3年=MIRUMAE FC ・U-15出身)は堂々と、逞しく、最終ラインにそびえ立つ。

 迎えた選手権予選のセミファイナル。試合前からこの一戦へ挑むチームの雰囲気には手応えを感じていた。「やっぱり岩手の高校サッカーと言ったら、『遠野と盛商』という感じはあるので、『そこは負けられない』という感じはありましたし、みんなで気合を入れてアップからできたと思います」。

 その勢いは前半から相手を飲み込む。13分にロングスローの流れから、FW戸來匠(3年)が豪快なミドルシュートを叩き込むと、34分にはチームのストロングポイントでもあるサイドアタックが炸裂。MF佐藤航(3年)のクロスから、MF工藤春(2年)がチーム2点目をゲット。さらに後半9分にも戸來がこの日2点目をゲット。3点のリードを奪う。

「攻撃陣が決められるところを決めてもらえれば、守備は本当に耐えるだけなので、クロスの対応をしっかりできていたところと、1対1で抜かれてもフォローやカバーをするところが今日はできていて、みんな足も動いていたので、良かったと思います」と守備の手応えを口にした宮野は、センターバックを組むDF佐藤慎一郎(3年)とも良い距離感で堅陣を構築する。

 後半終盤に2度に渡って作られた相手の決定的なシーンも、「アイツのことはたぶんみんな信頼していると思います」と宮野も口にする守護神、GK羽田碧斗(3年)がきっちりファインセーブで阻止。遠野の攻撃陣をシャットアウトした結果は、3-0の快勝。昨年の準決勝でPK戦の末に敗れた相手に、最高の形でリベンジを果たすことに成功した。

 全国だけを目指してきたキャプテンは、それでも勝ったばかりのチームの雰囲気へ、警鐘を鳴らしていた。「自分的には決勝に勝たないと意味がないと思うので、みんなワイワイしている感じで、自分としては喜ぶことも大事なんですけど、もうちょっと次に目を向けてほしいなと思いますね」。しっかり“兜の緒”を締められる、リーダーらしい視点の発言。ただ、このチームの“操縦法”はもちろん誰よりも熟知している。

「逆に言えば雰囲気良くやるのが自分たちの良さかなと思うので、やるところをちゃんとやって、リラックスするところはリラックスしながら、今の感じであの強い雰囲気も保ちながら、決勝で良い勝負ができればと思います」。こういうキャプテンのいるチームは、間違いなく強い。

 高校進学時は県外の強豪校も視野には入っていたが、最後の決め手は中学時代の恩師だったという。「中田(洋介)監督に中学の時のコーチ伝いで、『来てほしい』と言っていただいて、自分は中学の時のコーチに凄くお世話になったので、『この人が言うならここだな』と思って、盛商に入りました」。多くの人の期待を背負って、この赤と白のユニフォームに袖を通した。その選択の正しさを証明するためにも、次の試合は絶対に負けられない。

「専北にも小学校や中学校から知り合っている仲の人が多いので、特徴はお互いに分かっていると思います。攻撃型のチームだと思うので、まずは守備で粘って無失点に抑えて、自分もコーナーからのヘディングは武器にしているので、そこへの気持ちも持っていますし、とにかく守って攻撃で決め切るという形ですね」。

 宮野はまだ今までのサッカーキャリアで、優勝カップを掲げたことはないそうだ。「中学校の時は全国大会でベスト16に入ったんですけど、東北大会は3位だったので、カップを上げたことがないんです。イメージはまだないですね」。

“人生初”を体験するための、格好のチャンスがやってきた。15年前に国立競技場で優勝カップを掲げた背番号4のキャプテンのように、歓喜の中心で弾ける宮野の雄姿を、盛岡商に関わるすべての人たちが待ち望んでいる。

(取材・文 土屋雅史)

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