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大学・プロを基準に淡路島でこだわって選手育成。相生学院が讃岐内定FW福井の決勝点で初の決勝進出:兵庫

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後半40+1分、相生学院高FW福井悠人が決勝ゴール

[11.3 選手権兵庫県予選準決勝 芦屋学園高 1-2 相生学院高 三木陸上]

 第100回全国高校サッカー選手権兵庫県予選準決勝が3日に行われ、相生学院高が初の決勝進出を決めた。相生学院は後半40+1分に讃岐内定のFW福井悠人(3年)が決勝点を決め、2-1で芦屋学園高に勝利。7日の決勝で滝川二高と戦う。

 1-1で迎えた後半アディショナルタイム、相生学院は敵陣右サイドでこぼれ球を拾ったMF山口悠太(3年)が中央へパス。そして、MF井上拓也(3年)が縦へ繋ぐと、前を向いた福井はドリブルから左、右へのドリブルと切り返しで前方の相手DFを動かす。そして左へ持ち出して左足一閃。この一撃をゴールネットへ突き刺した。

 終了間際の劇的な勝ち越しゴール。すでにJ3デビューしている10番はベンチ、応援スタンド方向へ走り出すと、タッチライン際へ滑り込んで両拳を握りしめる。そこへ赤いユニフォームが次々へと駆け寄り、喜びを爆発させた。

 だが、諦めない芦屋学園は前へ出続けると40+7分、左サイドからSB吉田開(2年)がクロスを放り込む。これを交代出場のFW野田恵佑(2年)が競り勝ち、最後はゴール方向へ飛んだボールを交代出場MF政安宏承(3年)がゴールへ押し込む。執念の一撃に芦屋学園はサブの選手もピッチへ飛び出して大喜びしていた。だが、審判団はオフサイドでノーゴールの判定。再開後間もなく試合終了の笛が鳴り、相生学院が決勝進出を果たした。

 相生学院のMF白倉琉聖主将(3年)は「本当に1回戦目から終わる瞬間までしっかり集中するということだけをチーム内で意識してきたので、そこが繋がって良かったなと思っています。出ているメンバーだけでなくてベンチの選手、ベンチ外の選手も本当に勝ちを求めてチーム一丸で空気感を作ってやってきたので、そこをしっかり体現できたのが結果に繋がったと思います」と胸を張った。

 15年度以来の決勝進出を狙う芦屋学園との決勝で相生学院は、各選手が個性を表現していた。山崎遥稀(3年)、日高光揮(3年)の両CBが低く正確なキックで何度もサイドを変え、福井や山口が個人技で相手の守りに穴を開ける。また白鳥や山崎、FW村越優太(2年)がコンタクトの強さを発揮。上船利徳総監督が「チームを強くするというところにフォーカスしていなくて、選手を育てたらチーム強くなるだろうと我慢してやってきました。強度の部分や、個人の止めて・蹴るという部分は基準を設けています。(選手の機嫌取りなどせずに熱量を持って、)個人として大学やプロで活躍できる選手を目指してきた」と説明するように、淡路島の恵まれた練習環境で平日1時間半~2時間の全体練習、その後1時間の自主練習、さらに夜間の約2時間の自主練習、大学などとの練習試合で磨いてきたという個性を繋げる形で試合の主導権を握った。

 その相生学院は前半14分、右SB吉村陽楽(2年)のクロスをファーサイドの村越が胸コントロール。そこから中へ切れ込み、右足シュートを左隅へ決めて先制した。一方の芦屋学園はGK久保優主将(3年)が「入りからガンガン行っていたらもっと自分たちのペースになっていたかなと思います」と反省する前半。普段に比べて重心が重くなってしまったが、それでも40分、吉田の左クロスを右SB岩本康生(2年)が頭で落とし、MF酒井駿一(2年)が右足ダイレクトで決めて同点に追いつく。

 そして、後半開始から注目レフティーのFW出口遼人(2年)ら3選手を同時投入。相手を見ながらボールを動かす相生学院にボールを握られていたものの、GK久保が前向きな声がけを続け、空中戦強いCB柏木雄太(2年)らが相手の攻撃を跳ね返していた。そして、キープ力と左足で違いを生み出す出口にボールが入った際はゴールの予感を漂わせていたものの、攻撃回数を十分に増やせず、後半アディショナルタイムの攻防の末に涙をのんだ。

 相生学院の上船総監督はアーセナルや磐田、神戸、清水のGKコーチを歴任し、今年6月から指揮を執るジェリー・ペイトン監督や周囲に感謝する。「(ペイトン監督は)相生学院の取り組みに協力してくれて最高のチームにしてくれた。(相生学院は)選手もそうですし、コーチ、トレーナーみんなで作り上げている」。この日は指揮官から意識付けられてきたサイドチェンジや試合運びの部分が効果を発揮。神村学園淡路島から昨秋転校してきた選手、スタッフたちが相生学院での挑戦を始めてまだ1年ほどで、周囲からの厳しい声があることも確かだが、チームは選手権出場を本気で目指している。

 福井は「監督(上船総監督)の熱量が全く違うもんやと思いますし、とても良い淡路島の芝生や天然芝があって、自主練できる環境もありますし、人一倍サッカーができる環境というのが魅力でそこに自分が入ってどのチームよりもサッカー練習してきたので、負けないという自信があります。(決勝の対戦相手は名門・滝川二だが)自分たちも名門校になるために頑張っているので、相手が名門校とか関係なく、サッカーで圧倒して相生学院は凄いんやぞと見せていきたいと思っています」と誓った。インターハイ予選準優勝の報徳学園高や神戸科学技術高などの強豪を連破しながら8強、4強と新たな歴史を築いてきた“異質の新鋭”。相生学院があと1勝を果たして兵庫の歴史を変える。

(取材・文 吉田太郎)
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