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定年迎える指揮官と選手のストーリー続く。中京が後半ATの決勝点で岐阜2冠に王手

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中京高が競り勝ち、岐阜2冠に王手

[11.6 選手権岐阜県予選準決勝 中京高 1-0 各務原高 長良川メドウ]

 第100回全国高校サッカー選手権岐阜県予選の準決勝が6日に行われ、中京高各務原高が対戦。試合終了間際に生まれたFW千崎明颯(3年)のゴールによって、中京が1-0で勝利した。

 スコアだけ見れば、辛勝に見えるが、「選手たちにはPK戦も辞さないと言ってきた」(福留直人監督)中京にとっては、厳しい試合になるのは想定の範囲内。福留監督が「一歩間違えばいつやられてもおかしくないという緊張感の中でのゲームだった。勝ち方として悪くない」と続けたように、価値のある白星を掴んで、インターハイ予選に続く県2冠に王手をかけた。

 立ち上がりから、試合の主導権を握ったのは中京。DF小林巧弥(3年)と岩本駿也(3年)のCBコンビを中心に自陣から、テンポよくボールを動かした。時折、交えるMF中村侑哉(3年)のサイドチェンジも効果的だったが、アタッキングサードでのパスがかみ合わない。
 
 またDF大塚航(3年)と大田淳之介(2年)のCBコンビを中心に敷いた各務原の守備ブロックも堅かった。前半10分には、左サイドのMF倉本航耀(3年)、中央のMF塩田航輝(3年)と繋いで、中村がミドルシュート。26分には、右CKのこぼれ球をDF油野匠栄(3年)が狙ったが、各務原の守備陣に阻まれた。

 押し込みながらも、前半を無得点で終えたが、選手に焦りの色は見られない。「前半からボールを回して、後半に相手の足が止まってきた所で、チーム全体で1点でも多く獲って、勝とうと考えていました。前半0-0でも、焦らず行こうと皆で話していました」と話すのは、DF伊藤威達(3年)だ。

「誰が出ても中京スタイルは変わらないトレーニングはしてきた」(福留監督)中京は、後半に入ってから段階的に両サイドハーフとCFの入れ替えを実施。左からはFW野田嵐士(2年)の力強い突破、右からは千崎と油野による連携での崩しが増え、攻撃が活性化した。後半32分には、油野の右クロスを野田が頭で合わせたが、シュートは枠の外。続く33分には、左からのパスを受けたMF佐藤連真(2年)がゴールを狙ったが、DFに阻まれた。
 
 歓喜の瞬間が訪れたのは、40+1分。指揮官が「最近は途中から使っているけど、いつも点を獲っている。ゴールの匂いがする男。ある意味ラッキーボーイ的な存在」と評する千崎が、仕事を果たした。油野の右クロスから放ったFW井上大舞(3年)のシュートは、相手GKに阻まれたが、ゴール前に零れた瞬間を千崎が逃さず、プッシュ。このゴールが決勝点となり、中京が1-0で勝利した。

 今予選は、中京にとって大きな節目と言える大会だ。1984年の就任以来、38年に渡ってチームを率いてきた福留監督が定年を迎えるため、選手権を最後に第一線から退く。「今年、定年を迎えて、俺が全面的に出るのは今回が最後。インターハイに行かせて貰えて、選手権にも行ければ一番良いけど、一応最低限決勝まで来ることが出来た」と満足げに話しつつも、「そりゃ、全国で胴上げしてもらうのが一番良いけど」と悪戯に笑う辺りに、チームに対する自信を感じさせる。

 決勝で対戦するのは、前年度の代表校である帝京大可児高。インターハイ予選の準決勝ではPK戦で勝利したが、帝京大可児がプリンスリーグ東海所属に対し、中京高は県1部リーグの所属。「どう考えても、ワンランクもツーランクも上」という福留監督の評価は間違いなく、苦しい戦いになるのは確かだろう。ただ、指揮官は悲壮感を漂わせない。「うちはインターハイみたいに楽しく、俺が楽しみたいよね、最後だから。コイツらと、一番それが出来たら良いかな」。あと一つ勝てば、年末まで指揮官と選手たちのストーリーは続く。最後の試合にしないために、選手が必ず奮闘してくれるはずだ。

(取材・文 森田将義)
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