beacon

執念の同点弾に好守連発の学法石川CB円道竣太郎主将、「アンリだけじゃないんだよ、と福島県に少しでも示したかった」

このエントリーをはてなブックマークに追加

後半33分、学法石川高CB円道竣太郎主将(5番)は尚志高CBチェイス・アンリとのマッチアップで健闘

[11.7 選手権福島県予選決勝 尚志高 2-1 学法石川高 西部サッカー場]

「オマエら、羨ましいぞ」

 後半終了間際の失点で連覇の夢を断たれた試合後、学法石川高の182cmCB円道竣太郎主将(3年=FCみやぎバルセロナ出身)は、ともにクールダウンする後輩たちに微笑みながら声を掛けていた。

「(彼らにはまた選手権を戦う)チャンスがあるので。(自分も)留年できるものなら……。この悔しさや楽しさは高校サッカー選手権でしか味わえないものだと思います。仲間との思いとか、高校時代の、この選手権が一番だと思うので、そういう面では(来年)、もう一回尚志とやって倒せるチャンスがあるってことに対して凄く羨ましいと思います」。激闘となった福島県予選決勝の“もう一人の主役”。円道はやり切った表情を見せた一方、少し名残惜しそうに「センシュケン」を終えた。

 学法石川はプリンスリーグ東北優勝校で全国上位の実力を持つ尚志高に対し、各選手ができることを徹底。特に円道は前半10分にスライディングタックルで尚志FW村上力己(3年)の抜け出しを止めたほか、ゴール前に入って来る相手、ボールを止め続けていた。

 セットプレーでは尚志のU-22日本代表CBチェイス・アンリ(3年)にマンマーク。競り勝って応援席を沸かせるシーンもあった。そして、0-1の後半33分にはロングスロー後の混戦から右足一閃。左中間から強烈な一撃を逆サイドのネットへ突き刺した。

 起死回生の同点弾でチームを勢いづけると、さらに38分にはインターセプトからエースFW佐藤武流(3年)へ絶妙な縦パス。逆転のチャンスも演出した。円道は「今、福島県だと『アンリ、アンリ』と騒がれるのがあると思うので、そこは凄い意識して、『アンリだけじゃないんだよ』と福島県に少しでも示したかったのはありますね」という。

 そして、「今の自分なりには示せました」と円道。だが、後半アディショナルタイム、カウンターから80mを走り切ったアンリに決勝点を奪われるという最悪のシナリオで敗れた。「さすがU-22でやっているだけあって、(あのゴールは)感覚なんでしょうけれども、信じて走って行けるとか……、自分だったら弾いて、あとは前のやつらに『あとは頼む、決めてくれ』という思いで後ろから見ていることしかできなかったと思います」。大一番の勝敗を分けるような場面で、U-22日本代表の実力を目の当たりにした。

 円道は悔しさを滲ませながら、言葉を続ける。「できた部分もあったので悔しいですね。アンリ相手に競りのところや、1対1の球際でバチバチやれたのもあったので、悔しさは残りますけれども、それが今の自分の実力なので謙虚に受け止めて、良い経験をさせてもらったのでこの経験を糧にやっていきたいと思います」。高校生の間にアンリや尚志と対戦することはもう、できない。打倒・尚志は後輩に託し、自身はアンリとの戦いで得た“基準”を忘れずに彼との再戦を目指して力を磨く。

「プロでもあんなに強いヤツはなかなかいないと思います。(そのアンリと渡り合うことができ、)プロの強度に入ってもやれるというのは凄く自信になったので、あとは技術のところなどを突き詰めてプロの舞台でアイツとやりたいです」。稲田正信監督が「大人になりました。芯が強いし、(主力に怪我人が出る中)彼のお陰でチームが前を向いた」と認める存在が海外も選択肢にあるという大学生活で努力を続け、目標の一つを達成する。

後半33分には執念の同点ゴール

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2021
▶高校サッカー選手権 地区大会決勝ライブ&アーカイブ配信はこちら

TOP