指揮官も信頼を寄せるしなやかなキャプテン。西武台DF原田蓮斗は全国での“胴上げ”を誓う
[11.14 選手権埼玉県予選決勝 浦和南高 0-1(延長) 西武台高]
「お調子者の市川とか安木とか、すぐキレる松原とか細田とか、それを冷静に見る武笠とか吉野とか、それをまとめる原田がいて、そこのバランスは取れているチームになっていますね」。教え子たちのことを楽しそうに語る指揮官も最後に名前を出すほど、信頼は厚い。だが、本人はしきりに“自分は何もしてない感”を強調するのが面白い。
「特に目立ったことはしていないですし、オンとオフがあるので、ダメなことはダメって言いますけど、そんなに言わなくてもみんなが勝手にやってくれます。自分は本当に何もしていないんですよ」。だとしても、それはこのキャプテンがうまくチームを束ねているからだろう。
100回目の埼玉を制した西武台高のキャプテン。DF原田蓮斗(3年=HAN FC出身)の謙虚なリーダーシップは、このチームにとって必要不可欠だ。
嫌な展開だったことは間違いない。全国への出場権を懸けて挑んだ浦和南との決勝。攻めても攻めても点が入らず、相手の徹底した戦い方に苦しめられる。それでも、焦りはなかった。「とりあえず1対1で負けないとか、徹底的にやってくるのは分かっていましたし、この1週間は関根先生や守屋先生の指導の元、浦和南戦に向けての準備ができたので、焦りというよりは自信を持ってプレーできたかなと思います」。原田は冷静に戦況を見極めていた。
延長に入ってもなかなかスコアが動かない時間が続いたが、PK戦への突入が濃厚になってきた延長後半7分。右サイドで原田が素早く投げ入れたスローインを、MF丸山実紀(3年)は正確なクロス。飛び込んだDF安木颯汰(3年)のヘディングが、ゴールネットへ到達する。
「PKは毎日この大会が始まってから練習していたので、たぶん相手は実際にPK狙いだったと思うんですけど、自分たちはPK戦に行っても絶対に負けない自信はありました。もし『PKに行ったらヤバい』という感情があったとしたら、絶対に焦りが出て得点も生まれなかったと思うんですよね。チームが『PKに行っても全然いいよ』という感じだったので、あの得点が入ったのかなと思います」。そう話す原田も、チームメイトも、積み上げてきた確かな自信を持っていた。そういう意味で土壇場での決勝点は、偶然ではなかったのかもしれない。
「優しいです。でも、時には厳しくて、良い意味でお父さんみたいな存在です」と評した守屋監督から試合前に掛けられた言葉が、原田にはとりわけ響いたという。「守屋先生が今日の試合前のミーティングの最後に『負けて泣いてくるなよ』と言葉を残したんです。それで『あ、これはヤベーな』と引き締まりましたね。『カッコいいな』って。カッコ良かったです」。
だからこそ、優勝を決めた試合後には少し“心残り”があった。「胴上げしようと思ったんですけど、守屋先生が『自分はいいよ』って(笑)。でも、今日させてもらえなかったのは、たぶん『全国で優勝するぞ』というメッセージだと思うので、全国で優勝して、改めて胴上げしたいと思いますし、そこまで連れていきたいです」。さらなる目標を与えてくれた指揮官に感謝しつつ、ここからは全国の舞台へと照準を合わせていく。
今の西武台には同校を卒業したOBのコーチが揃っている。「外部から入ってくるよりは、OBで西武台を経験している人たちの方が、いろいろなことを言えると思うので、良いかなと思います。西武台で全国大会に行っている先生もいるので、以前は練習を見て『この雰囲気じゃ全国に行けないぞ』とか言われていたんですよ。でも、今年はあまり言われていないですし、『練習の雰囲気で分かる』と言っていたので、『良い雰囲気なのかな』と自信を持ってやれました」と原田。まさに“オール西武台”としての力が結集して、この栄冠を引き寄せたこともよく分かるエピソードだ。
全国での目標を問われ、答えたキャプテンの言葉が力強い。「西武台らしく戦うということと、全国ベスト4以上を目指して戦いたいと思います。まだ西武台はそこまで行ったことがないので、まずはベスト4を目指して、そこからですね」。
あえて言わなかった『そこから』の先。おそらく原田の頭の中には、新・国立競技場の宙を舞う指揮官の姿が、おぼろげながらイメージとして浮かんでいるに違いない。
(取材・文 土屋雅史)
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「お調子者の市川とか安木とか、すぐキレる松原とか細田とか、それを冷静に見る武笠とか吉野とか、それをまとめる原田がいて、そこのバランスは取れているチームになっていますね」。教え子たちのことを楽しそうに語る指揮官も最後に名前を出すほど、信頼は厚い。だが、本人はしきりに“自分は何もしてない感”を強調するのが面白い。
「特に目立ったことはしていないですし、オンとオフがあるので、ダメなことはダメって言いますけど、そんなに言わなくてもみんなが勝手にやってくれます。自分は本当に何もしていないんですよ」。だとしても、それはこのキャプテンがうまくチームを束ねているからだろう。
100回目の埼玉を制した西武台高のキャプテン。DF原田蓮斗(3年=HAN FC出身)の謙虚なリーダーシップは、このチームにとって必要不可欠だ。
嫌な展開だったことは間違いない。全国への出場権を懸けて挑んだ浦和南との決勝。攻めても攻めても点が入らず、相手の徹底した戦い方に苦しめられる。それでも、焦りはなかった。「とりあえず1対1で負けないとか、徹底的にやってくるのは分かっていましたし、この1週間は関根先生や守屋先生の指導の元、浦和南戦に向けての準備ができたので、焦りというよりは自信を持ってプレーできたかなと思います」。原田は冷静に戦況を見極めていた。
延長に入ってもなかなかスコアが動かない時間が続いたが、PK戦への突入が濃厚になってきた延長後半7分。右サイドで原田が素早く投げ入れたスローインを、MF丸山実紀(3年)は正確なクロス。飛び込んだDF安木颯汰(3年)のヘディングが、ゴールネットへ到達する。
「PKは毎日この大会が始まってから練習していたので、たぶん相手は実際にPK狙いだったと思うんですけど、自分たちはPK戦に行っても絶対に負けない自信はありました。もし『PKに行ったらヤバい』という感情があったとしたら、絶対に焦りが出て得点も生まれなかったと思うんですよね。チームが『PKに行っても全然いいよ』という感じだったので、あの得点が入ったのかなと思います」。そう話す原田も、チームメイトも、積み上げてきた確かな自信を持っていた。そういう意味で土壇場での決勝点は、偶然ではなかったのかもしれない。
「優しいです。でも、時には厳しくて、良い意味でお父さんみたいな存在です」と評した守屋監督から試合前に掛けられた言葉が、原田にはとりわけ響いたという。「守屋先生が今日の試合前のミーティングの最後に『負けて泣いてくるなよ』と言葉を残したんです。それで『あ、これはヤベーな』と引き締まりましたね。『カッコいいな』って。カッコ良かったです」。
だからこそ、優勝を決めた試合後には少し“心残り”があった。「胴上げしようと思ったんですけど、守屋先生が『自分はいいよ』って(笑)。でも、今日させてもらえなかったのは、たぶん『全国で優勝するぞ』というメッセージだと思うので、全国で優勝して、改めて胴上げしたいと思いますし、そこまで連れていきたいです」。さらなる目標を与えてくれた指揮官に感謝しつつ、ここからは全国の舞台へと照準を合わせていく。
今の西武台には同校を卒業したOBのコーチが揃っている。「外部から入ってくるよりは、OBで西武台を経験している人たちの方が、いろいろなことを言えると思うので、良いかなと思います。西武台で全国大会に行っている先生もいるので、以前は練習を見て『この雰囲気じゃ全国に行けないぞ』とか言われていたんですよ。でも、今年はあまり言われていないですし、『練習の雰囲気で分かる』と言っていたので、『良い雰囲気なのかな』と自信を持ってやれました」と原田。まさに“オール西武台”としての力が結集して、この栄冠を引き寄せたこともよく分かるエピソードだ。
全国での目標を問われ、答えたキャプテンの言葉が力強い。「西武台らしく戦うということと、全国ベスト4以上を目指して戦いたいと思います。まだ西武台はそこまで行ったことがないので、まずはベスト4を目指して、そこからですね」。
あえて言わなかった『そこから』の先。おそらく原田の頭の中には、新・国立競技場の宙を舞う指揮官の姿が、おぼろげながらイメージとして浮かんでいるに違いない。
(取材・文 土屋雅史)
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