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学びの鳥取13連覇。逆転勝ちの米子北は凡事徹底、普段を変えて全国制覇へ挑戦

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インターハイ3位の米子北高が逆転勝ちで13連覇達成

[10.29 選手権鳥取県予選決勝 米子北高 2-1 鳥取城北高 Axis]

 米子北が学びの13連覇――。第101回全国高校サッカー選手権鳥取県予選決勝が29日、鳥取市のAxisバードスタジアムで開催され、米子北高が13年連続18回目の選手権出場を決めた。今夏のインターハイ3位の米子北は決勝で鳥取城北高と対戦。先制されたものの、FW福田秀人(3年)の2ゴールによって2-1で逆転勝ちした。

 近年、圧倒的な力の差を見せつけてきた米子北が、決勝で7年ぶりの失点。同じく決勝の1点差ゲームは、12年度大会以来10年ぶりだった。ともにインターハイで活躍した左SB野田徹生主将(3年)とFW小橋川海斗(3年)が怪我で不在だったことも影響したかもしれないが、米子北は緊張の序盤から最後まで思うような試合ができず。勝ったことを素直に喜んだ一方、選手・スタッフは全く満足していなかった。

 中村真吾監督は「勝つことの厳しさをここで改めて教えてもらったので、本当に練習から『凡事徹底』じゃないけれど、今日できなかったのは普段ができていなかったから。全国の優勝目指して戦えるように準備していきたい」。元々、決勝翌日は砂浜での走り込みを予定していたようだが、選手たちは普段から見つめ直し、全国へ向かうことを誓っていた。

 富山の名門、富山一高OBの貫場貴之監督就任4年目の鳥取城北は、これが2度目の決勝進出。指揮官から「きょうは120%出せ」と送り出された選手たちが、立ち上がりから思い切り良く、狙い通りの戦いを見せる。

 万能型のCB松原巧武(3年)が中心になって、米子北のスピードある攻撃に対応。ダイレクトのクリアを相手の背後へ蹴り込む。また左の10番MF石田葵(3年)やゲーム主将のMF森木太陽(3年)中心に繋ぐ力も発揮。俊足MF本多春樹(3年)は試合を通して右サイドで主導権を握り続けた。

 15分には連続CKからその鳥取城北が先制する。MF初瀬颯太(2年)が左サイドからCKを蹴り込む。米子北DFのクリアが続けて中途半端に。最後は左中間から左SB武信有眞(3年)の放った左足シュートがゴール右を破った。

 絶対王者からの先制点に鳥取城北イレブンが歓喜を爆発させる。米子北はすぐに反撃を開始。前線でハードワークする福田や左サイドで突破力を発揮する10番MF中井唯斗(3年)中心に厚みのある攻撃を展開する。

 前線に残った相手FWのマークを除くと、PA近くに8人、9人と人数を掛けてゴールへ。ダイレクトのパス交換でサイドを崩し、また左右からロングスローを入れてゴール前のシーンを増やす。そして、ゲーム主将のCB倉田大雅(3年)のミドルシュートなどで相手ゴールを襲った。

 素早い奪い返しから連続攻撃を見せていた一方、奪い切れずに後退するシーンもしばしば。前半だけで9本のシュートを放ったが、無得点のままハーフタイムを迎えた。ただし、福田が「ハーフタイムに自分たちならできるという自信を持てて、絶対にひっくり返せるという思いが共通して持てていたので逆転できたと思います」と説明したように、米子北は自信を持って戦い続けて後半立ち上がりに試合をひっくり返す。

 後半5分、右サイドから森川がロングスロー。DFのクリアがゴール方向へ向かう。GKが何とか叩いたものの、落下点に詰めていた福田が頭でプッシュ。同点に追いついた。畳み掛ける米子北は7分、8分と連続でGKと1対1のビッグチャンス。鳥取城北はGK高橋伯明が2本続けてセーブし、食い下がる。

 だが、米子北は9分、連続攻撃から右のMF浅野颯真(3年)が縦に仕掛けてクロス。GKの頭上を越えたボールをファーサイドの福田が頭で押し込み、逆転した。この後、米子北はスルーパス、サイドからの崩しなど4度、5度と決定機を創出。だが、そのたびに鳥取城北GK高橋が立ちはだかる。

 逆に鳥取城北は本多が続けてクロスへ持ち込むなど反撃。交代出場の左SB岡凪勢(3年)のロングスローがゴール前に入る。絶対王者が押し返される展開。鳥取城北が攻めるたびにスタンドが沸いた。それでも、米子北はGK畠山壮哉(3年)が安定したキャッチングを連発。森川と倉田の両CBも崩れることなくゴールを守り続ける。彼らの落ち着きがチーム全体に波及できなかったことは反省点。それでも、全国切符は死守した。

 目標は全国制覇。インターハイで2年連続4強入りし、プリンスリーグ中国では堂々の首位だ。切り替えの速い攻守、ゴール前の守りの堅さ、スピーディーな崩し、セットプレーの強さなど日本一を争う力があることは確かだ。切磋琢磨してきた仲間たちの代表という思いの強さも特別。だが、この日はその力を発揮することができなかった。中村監督は「大人が思っている以上に(選手たちが)みんなの思いを背負って戦って重たくなった。そういう経験が少なかった」と選手たちに理解を示していたが、今のままでは目標を達成することは出来ない。

 まずは普段から改め、重圧の中でも力を発揮できる個人、チームになること。中井は「これまでやってきた練習の積み重ねで最後甘いところがあって、ああいう形で終わってしまったのでとても悔しい気持ちでいっぱいです。(選手権では)個人としても、チームとしても必ず結果を残して、必ず米子北らしいサッカーをして鳥取県代表として恥のないように頑張っていきたい」と語り、福田は「インターハイは2年連続でベスト4に入れて結果を残せているんですけれども、冬の選手権ではまだまだの結果なので、冬も日本一を目指して頑張りたい」と誓った。この日の「悔しい」戦いを忘れず、必ず力を積み上げて全国初戦を迎える。

(取材・文 吉田太郎)
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