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土壇場で追い付き、延長終了間際に決勝弾!! 新潟明訓が北越との大熱戦を制し、決勝の舞台へ

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延長終了間際に新潟明訓高FW佐藤椋輔(3年)が決勝点

[11.3 選手権新潟県準決勝 北越 2-3 新潟明訓 新発田市五十公野公園陸上競技場]

 北越高新潟明訓高。お互い負けたくないライバルであり、両チームとも赤いユニフォームであり、スタッフと選手同士も仲の良い彼らは、これまで新潟で数多くの激闘を繰り広げてきた。選手権予選準決勝第2試合でこの両チームが激突し、延長戦までもつれ込む大熱戦を演じた。

 先制したのは新潟明訓だった。23分、相手のビルドアップのミスを突いて、FW佐藤椋輔(3年)が冷静に蹴り込んだ。ここから北越も反撃を開始。MF鈴木優真(3年)とMF羽賀聖人(3年)のダブルボランチ、左の技巧派MF小林謙心(3年)を軸にテンポの良いパス回しから、2年生エースストライカーのFW高橋航輝が新潟明訓ゴールに迫った。

 34分には北越・荒瀬陽介監督は「高さのある長谷川諒育を出して前線で起点を作ろうと思った」と183cmのFW長谷川諒育(3年)を入れて、1トップから2トップにシステム変更してさらに攻撃の手を強める。後半開始早々の1分、北越は左サイドでボールを持った小林のクロスを中央で長谷川諒育がヘッドで合わせて同点ゴールを挙げると、22分に北越らしい圧巻の崩しを見せた。CB伊藤優心(3年)から左サイドの小林に展開すると、小林はクロスオーバーをしてきた左サイドバックのDF小田優人(3年)へパス。小田の左足のクロスをファーで待ち構えたMF三浦航生(3年)がヘッドで落とすと、中央で長谷川諒育がドンピシャの鮮やかなダイレクトボレーを突き刺した。

 この瞬間、「プリンス北信越でも前半1-0で勝っていて、後半立ち上がりに追いつかれて、逆転されて負ける試合が凄く多かった。そこはハーフタイムでも強調したのですが、本当に嫌な流れが来てしまったと思った」と新潟明訓・坂本和也監督の脳裏に不安が過ぎった。しかし、「積極的に交代策を打つことで流れを変えようと思った」と、19分にMF平井壱弥(2年)に代えてDF岡村拓宙(2年)、MF大桃義隆(2年)に代えてMF矢澤阿月(3年)を投入。さらに27分にMF中村凌也(3年)に代えてFW高井乃海(3年)を、32分にはDF中山暖斗(3年)に代えてドリブラーのMF羽生朝陽(3年)を次々と投入。システムも4-4-2から3-4-2-1に切り替えて、両ウイングバックに岡村と羽生のフレッシュかつドリブルを得意とする選手を配置。するとこの両翼が大きく躍動をした。

 左で羽生が何度も鋭いドリブル突破を仕掛け、右からは岡村が正確なクロスを供給し、中央では矢澤と高井がゴール前に何度もスプリント。試合終了間際の38分についにこの攻撃が実った。中央で高井がルーズボールを頭で繋ぐと、胸トラップで抜け出した矢澤がトップスピードから鮮やかなスライディングシュートをゴール左隅に突き刺し、新潟明訓が土壇場で同点に追いついた。

 2-2のまま延長戦にもつれ込んだ試合は、強度で上回る新潟明訓が追いついた勢いそのままに北越を押し込む。だが、北越もGK内田智也(3年)を中心に必死で耐え忍んだ。だが、PK戦突入かと思われた延長後半10分に新潟明訓が北越ゴールをこじ開けた。

 左サイドで高井が粘って味方につなげると、ボランチのMF加藤光輝(2年)のスルーパスに佐藤が抜け出した。パスを出した瞬間、佐藤はオフサイドポジションにいたが、その前にDFの足に当たっており、パススピードも遅く咄嗟のディフレクションでなかったことから、オフサイドは成立せず。佐藤がワントラップから落ち着いて決めて、新潟明訓が劇的な勝利を収めた。

「延長戦は本当に厳しかった。我慢をしてワンチャンスを狙おうと思ったが、明訓の強度の高さに押し切られてしまった」。試合後、北越・荒瀬監督がこう口にしたが、すぐに「選手たちはこの厳しいシーズンの中で本当によくやってくれた」と労いの言葉を口にした。今年、北越はプリンス北信越から新潟県リーグ1部へ降格。昨年度のプリンスはコロナの影響で5試合未消化のまま、勝率で9位になってしまっての降格だった。さらに今年の県1部リーグは10チームの1回総当たりというレギュレーションになり、彼らは年間でリーグ戦を9試合しか経験できなかった。

 同格もしくは格上の相手との公式戦がほとんどない状況で、彼らは試合強度を求めて立正大や筑波大に行って大学生と試合をしたり、強度にこだわった練習をこなしてきた。しかし、プリンスを経験しているチームの前でその差は出てしまった。

「延長戦でほとんどの選手がエネルギー不足になってしまった。そこは本当に指導者としても悩みましたし、選手たちに申し訳ない気持ちでいっぱいです」(荒瀬)。だが、12月のプリンス北信越参入戦への進出は決まった。相手は強豪・丸岡。勝てばプリンス1部、負ければ来年から発足するプリンス2部への参入が決まる。1部参入を目指して、苦しんだチームは有終の美を狙う。

 一方、決勝進出を手にした新潟明訓はプリンスで苦戦し、最下位と来季のプリンス2部降格が決定。彼らもまた苦しい1年を過ごしたからこそ、意地の勝利を見せた。次は決勝でプリンスで1分1敗の日本文理を倒し、7年ぶり7度目の選手権出場を手にせんとモチベーションは高い。

 最後に、この準決勝の印象的なシーンは試合後にもあった。「これぞ高校サッカー、これぞ選手権予選という試合でした。北越には感謝しかありません」と坂本監督が語ったように、スタジアムの外では両チームの選手が肩を組んで話をしたり、一緒に写真を撮ったりと交流の場所となっていた。

「明訓は学校も近いですし、選手同士も仲が良いんです。私も坂本監督やスタッフもよく知っていますし、交流も多い。そういう意味では毎回面白い試合になるので、いいライバルであり、仲間。その分、負けた悔しさは大きいですよね。悔しいです」

 荒瀬監督の言葉が両校の関係性を物語っていた。来年はどのような名勝負を見せてくれるのだろうか。両チームのこれからが楽しみになった一戦であった。

(取材・文 安藤隆人)
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