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[MOM4071]國學院久我山FW塩貝健人(3年)_誰よりもスタンドを沸かせた絶対的エースが2ゴールの奮闘で帝京撃破の立役者に!

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國學院久我山高の絶対的エース、FW塩貝健人

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ supported by sfida]
[11.5 高校選手権東京都予選Aブロック準決勝 帝京高 2-3 國學院久我山高 味の素フィールド西が丘]

 この男にボールが入ると、スタジアムの空気が一変する。前へ。前へ。圧倒的なフィジカルと、抜群のスピードを融合させ、とにかくゴールを目指して突き進む。その上、大事な局面ではゴールまで奪ってしまうのだから、相手にとってみればその存在は厄介極まりない。

「1対1になったらフィジカルでは負けない自信があるので、1人で行けるというところが自分の武器ですね。周りよりは技術がないというか、このチームの中だったら下手だと思うんですけど、『オレが1対1で持ったら行ってやる』という気持ちの強さは出ているんじゃないかなって」

國學院久我山高の10番を背負うキャプテン。FW塩貝健人(3年=横浜FCジュニアユース出身)が2ゴールを奪う活躍で、夏の全国準優勝・帝京高撃破の主役を鮮やかにさらっていった。

 いきなりの衝撃は前半10分。右サイドバックのDF井料成輝(3年)から斜めのクサビが入ると、塩貝はマーカーを背負いながら鋭く反転。そのまま躊躇なく振り抜いた左足から放たれた軌道は、あっという間に左スミのゴールネットへ到達する。

「練習で1週間やって1回出るかなというようなヤツですよね。2対2の練習とかでも、背負って反転シュートというのはほとんど外れるんですけど、本番のここで持ってこれたというのは、自分が練習を誰よりもしてきた成果が出たのかなと思います」。スタンドもどよめくようなゴラッソで、チームに先制点をもたらしてみせる。



 これで10番は完全に勢いに乗った。「自分はファーストプレーでその日のコンディションが決まるタイプなので、そこで1点獲れたことで『オレにボールを持ってくれば点が獲れるぞ』みたいな感じで行けました」。積極的にボールを引き出すと、果敢に勝負を繰り返す。常に漂うゴールの香り。帝京ディフェンスを単騎で苦しめ続ける。

 前半のうちにスコアを引っ繰り返されたものの、簡単に引き下がるつもりは毛頭ない。「インターハイで負けた借りをここで返そうと。同じ相手に2回も負けるのは許せないし、『負けてたまるか』という感じでやってきたので、全員が言葉には出さないですけど、心の中では絶対に勝ちたいと思っていたはずで、アップから一体感を持ってやれて、みんな気合が入っていました」(塩貝)。インターハイ予選の準々決勝で、帝京に延長の末に敗れた悔しさはもちろん忘れるはずがない。

 後半13分。キャプテンはその瞬間を虎視眈々と狙っていた。MF保土原海翔(2年)が蹴った右CKはファーサイドへこぼれ、MF近藤侑璃(1年)が上げた左クロスから、DF鷹取駿也(3年)が打ち込んだシュートは相手DFがライン上で掻き出すも、ルーズボールに誰よりも早く反応した塩貝がすかさずプッシュ。ゴールネットを確実に揺らす。

「何も考えずに振り切ったという感じです。『ここにこぼれてくるんじゃないか』と思って、スペースに走り込んだら鷹取がシュートを打って、アイツのこぼれ球を振り抜くだけでした」。ゴールを確認してから、ボールを抱えてセンターサークルへと一目散に駆け出し、最後は華麗に“トライ”。「あれはラグビーのトライです(笑)。どこかでやってやろうかなと思って、1点目もやろうとしたんですけど、相手のGKからボールを取れなかったので、2点目は普久原からボールを奪って、やりました」。狙い通りの『ゴールとトライ』を一連で決めてみせるメンタルも頼もしい。

 同点で迎えた23分にも中央でボールを引き出し、裏へ通したスルーパスから最後はMF高橋作和(3年)が逆転ゴール。一気にスコアを引っ繰り返すと、以降は帝京の攻撃にさらされながらも、懸命の守備で対抗。確実に時間を潰していく。そして、聞いたタイムアップのホイッスル。3-2。再逆転で勝ち切った80分間の中で、間違いなく塩貝の存在感はピッチ上の誰よりも際立っていた。

 そもそも今年のチームでキャプテンに指名されたことは意外だったという。「絶対に自分じゃないと思っていました。自分はそういうタイプではないので」と苦笑しながら、「みんなに支えてもらっているので、オレがもっと成長できたらもっとチームも強くなると思います」と言い切る塩貝を、李済華監督はこう評している。

「このチームはどちらかというとおとなしくて、プレーも綺麗にやる感じなんですけど、ウチの今までのイメージの子ではないです。ヤンチャで監督にいろいろ言ってくるのはアイツくらいですから(笑)。でも、センターフォワードで、キャプテンをやるというのはそれくらい気持ちの強いヤツがいいんでしょう。責任感も強いんですよ。1年の時から後片付けもこっちが指示しなくても率先してやるヤツだったんです。そういう子なんですよ」。

 確かにこの日の試合後も、誰よりも早くロッカーから出てきて、掃除用具を探していたのは塩貝だった。「片付けの部分とかで自分がしっかりしていれば、『アイツがしっかりやっているから話を聞こう』となると思うんですけど、逆にオレがやっていなかったらみんなも『オマエがやってないだろ』って話を聞かないと思うので、自分から意識を変えれば、みんな変わってくれるんじゃないかと思っています」。つまりは、そういうキャプテンなのだ。

 目標にしてきた全国大会は、もうすぐ目の前にある。自分を信じてくれた監督や顧問の先生方、コーチはもちろん、チームメイトたちへの感謝を表わすため、やるべきことは十分過ぎるほどにわかっている。

「さっきインスタを開いたら通知が止まらなかったんですけど(笑)、小学校や中学校で自分に関わってくれた人たちが応援してくれていて、『頑張れ!』と言われていますし、キャプテンをやらせてもらって、10番を付けたセンターフォワードとして、自由にやらせてもらっているこの久我山というチームに恩返しをしたいです」。

 東京から全国へ。この冬の確かな主役候補。塩貝の躍動はファイナルの舞台でも、きっとスタンドの大観衆を誰よりも楽しませてくれるに違いない。



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(取材・文 土屋雅史)

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