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ユース取材ライター陣が推薦する選手権予選注目の11傑vol.2

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土屋氏が推薦するMF陣田成琉(成立学園高3年)

 第101回全国高校サッカー選手権の都道府県予選が、各地で開催されている。ゲキサカでは「選手権予選注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター陣に選手権予選注目の11選手を紹介してもらいます。第2回は(株)ジェイ・スポーツで『Foot!』ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任し、現在はフリーランスとして東京都中心にユース年代のチーム、選手を取材、そしてゲキサカコラム『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』も連載中の土屋雅史氏による11名です。

土屋雅史氏「もう15年近く継続的に取材させていただいている東京の高校サッカー界に限定して、選手権予選のAブロック、Bブロックともにベスト8まで勝ち上がってきたチームの3年生の中から、11傑を選出しました。今年の3年生は入学時からコロナ禍に見舞われ、思うようにサッカーをすることが叶わなかった世代。この最後の選手権で、今まで溜めてきたすべてのパワーを解放して、良い思い出を作ってくれることを切に願っています!」

以下、土屋氏が注目する11名

GK森田颯太(国士舘高3年)
昨シーズンからレギュラーを任されてきたアグレッシブなGKだ。思い切りのよい飛び出しからのビッグセーブはデフォルトだが、スピード豊かな選手の揃ったアタッカー陣を走らせる正確なパントキックも魅力的。足元のテクニックにも秀でた現代型のスタイルで、チームを最後尾から支えている。今季はキャプテンマークを巻く試合も多く、チームメイトを鼓舞する声もより増加した印象。名将・本田裕一郎テクニカルダイレクターの元、4年ぶりとなる冬の全国を狙う国士舘の絶対的な守護神に要注目。

DF百瀬健(実践学園高3年)
『心で勝負』を掲げる実践学園では伝統となっている“10番でキャプテン”を、今シーズンに入って継承したのがこの男。「毎回自分に10番が来るわけではないですし、キャプテンをできるわけではないという覚悟を持ってやっています」と常に危機感を抱きながら、自分にできることと地道に向き合ってきた。試合に出られない時期もあり、グループをどうまとめていくかに腐心してきた中で、ここに来てようやくチームの雰囲気も上向きに。2022年の“10番でキャプテン”はしぶとく、泥臭く、戦い続ける

DF池田歩柊(関東一高3年)
国立競技場への帰還を真剣に目指す関東一で、センターバックの定位置を掴んだ努力家。全国4強の“次の世代”の3年生として、なかなか結果に恵まれない時期を送ってきたが、「去年の方が良いプレーをしてやろうという感じだったんですけど、今年は自分も下級生の立場を経験しているので、1,2年生にもっと自由にやらせてあげようというマインドでやっています」と責任感のある発言も。チームを率いる小野貴裕監督もその人間性に太鼓判を押している、懐の深いディフェンスリーダーだ。

DF大澤郁輝(大森学園高3年)
近年は上位進出の常連となりつつある大森学園のディフェンスリーダー。丁寧なビルドアップを志すスタイルの中、確かな技術でパスワークの起点を創出し、ペナルティエリア内では身体を投げ出してのシュートブロックも厭わない勇敢さも併せ持つ。昨年度の大会では関東一高と対峙した西が丘の準決勝でもピッチに立っており、結果的に全国4強まで駆け上がった強豪を1失点に抑えるも、悔しい惜敗。リターンマッチとなる次戦の準々決勝に並々ならぬ意欲を携えていることは想像に難くない。

MF柳本華弥(東海大高輪台高3年)
悲願の選手権初出場を期す東海大高輪台の中盤を引き締める、10番とキャプテンを託されたゲームメイカーは、ピッチの中央で全体のバランスを監視しつつ、3列目から積極的に前へと飛び出し、自分でゴールを奪いに行く強気な攻撃性も兼備。「東京都ナンバーワンの力を付けて、全国にチャレンジすることが目標ですし、高輪台の10番は伝統や責任があるので、それにふさわしい選手になれるように、チームの顔をとしてやっていけるように頑張りたいと思います」と言い切るメンタルも頼もしい。

MF東舘大翔(堀越高3年)
1年時の選手権ではスタメンで全国を経験したものの、昨年度はチームの敗退をベンチで味わうことに。得意の左足を駆使した高い技術が目を引くが、「自分は比較的おとなしい方なんですけど、声を出して、身体を張って、しっかりチームのために戦いたいなと思います」と意識改革を断行。頼れる大黒柱に進化しつつある。中学までは柏レイソルのアカデミーで育っており、当時のチームメイトの活躍も刺激に変えているとのこと。このレフティの躍動が、チームで掲げる東京3連覇の大きなカギを握る。

MF松原智(駒澤大高3年)
昨シーズンはサイドハーフでチャンスメイクを繰り返していたが、3年生になってボランチの位置でより“司令塔”感を出しながら、攻撃のタクトを振るう。本人も「ドリブルは得意ですし、スルーパスもいい所に出せるかなと思います」と認めるように、地上戦で力を発揮するタイプ。伝統の武骨な力強いスタイルを継承する駒澤大高の中でこそ、その高い技術が際立つ。また、今季は関東大会予選準決勝やインターハイ予選準々決勝と大事な一戦でゴールを奪うなど、ここ一番での勝負強さも身に付けている。

MF陣田成琉(成立学園高3年)
実に17年ぶりの全国出場が懸かる成立学園の攻撃は、この男からスタートする。「今年は前で自由にやらせてもらっているので、より自分の良さが出ているのかなと思います」と話したように、今シーズンは主に1.5列目でプレーしており、得意のスルーパスを操るのはもちろん、自らゴールを狙う意識も十分。中学時代を過ごしたF・マリノス仕込みのテクニックが、チームの攻撃に彩りを加える。なお、練習会の参加時に先輩の吉長真優(ジュビロ磐田)の上手さを見て、入学を決意したというエピソードも。

MF田中遥稀(帝京高3年)
決勝まで駆け上がった夏の全国では大会優秀選手に選出。高いキック精度には定評があり、「どうやってポイントを合わせられるかの会話は中の選手としています」というセットプレーはチームの大きな得点源。インターハイでも3回戦の丸岡高戦では後半35+10分という土壇場に直接FKで決勝弾を叩き込み、チームの危機を鮮やかに救ってみせた。周囲のアドバイスに耳を傾けられる高い成長欲も特徴の1つ。選手権で完全復権を目指すカナリア軍団におけるキーマンであることに疑いの余地はない。

FWパク・ソラ(東京朝鮮高3年)
1次予選から逞しく勝ち上がってきた東京朝鮮のエース。2年時はサイドで自由自在に高いテクニックを披露する姿が印象的だったが、キャプテンを託された今季はよりチームの勝敗を担う責任感が漂う。今大会も3回戦の明星学園高戦では1ゴール1アシストを記録し、準々決勝進出を結果で牽引した。チームとしても近年は上位進出を阻まれてきた流れの中で、3年ぶりとなる西が丘のピッチを、そしてその先にある悲願の全国出場を手繰り寄せるためには、この10番の得点に直結するプレーが必要不可欠だ。

FW塩貝健人(國學院久我山高3年)
いわゆる“剛のストライカー”だ。圧倒的な身体の強さを生かしたポストプレーも、スピードとパワーを高い次元で融合させた推進力抜群のドリブルも、間違いなく全国レベル。ゴールパターンも豊富に揃え、チームの絶対的エースに成長を遂げた。指名されたキャプテンの役割にも「みんなに支えてもらっているので、オレがもっと成長できたら、チームももっと強くなると思います」とポジティブに向き合っている様子。4年ぶりの全国を切望する國學院久我山のスペシャルなフォワードから目が離せない。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。Jリーグ中継担当プロディーサーを経て、『デイリーサッカーニュース Foot!』を担当。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。ゲキサカでコラム、『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』を連載中。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」

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