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“打倒青森山田”志して八戸学院野辺地西へ…東京出身の1年生GK喜村孝太朗「どれだけ変われるか」0-9大敗から決意の再出発

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GK喜村孝太朗

[11.5 選手権青森県予選決勝 青森山田高 9-0 八戸学院野辺地西高 カクスタ]

 7年連続で選手権青森県予選の決勝に進んだ八戸学院野辺地西高は今季、東京都出身の1年生GK喜村孝太朗(=東京SC)を先発起用し、絶対王者の青森山田高に挑んだ。しかし、結果は0-9の大敗。期待のルーキーは来季以降に向けて「1年目から山田とやれたのはすごくでかいと思うけど、全く通用しなかった。来年は自分自身も変わって、もっと対応できたらと思う」と再起を誓った。

 直近7年間で3度の日本一を誇る絶対王者との県決勝。近年は接戦を演じることも少なくなかった八戸学院野辺地西だったが、今季は衝撃的なゴールラッシュに沈められた。立ち上がりに決定機を迎えたものの、これが相手GKのファインセーブに阻まれると、前半12分に喫したセットプレーでの失点を皮切りに前半だけで7失点。後半も2点を追加され、0-9の大敗に終わった。

 試合後、喜村は「チーム的にもっとやれるかなと思っていたけど、準決勝でうまくいっていたところがあった中、決勝でみんなで戦えなかったことでああいう結果になった。こんなに失点すると思っていなかったし、最初の1〜2点が入ってから立て直せなかった。前半でゲームが決まってしまった」と悔しい表情を浮かべた。

 喜村がチーム全体の課題を語ったように、多くの得点がペナルティエリア内を完全に崩されており、なかなかGKが仕事をするのは難しいシチュエーションでもあった。しかし、先制被弾はヘディングで股下を抜かれたもの。「僕らの最初のチャンスは山田のGKに防がれて、僕らはそこで失点して流れを取られた。最初の失点をどれだけ防げるかにかかってくる中で、僕の守備範囲が足りなくて失点した」と責任を背負った。

 相手の強みであるセットプレーやクロス攻勢では、積極的な飛び出しとパンチングでピンチを未然に防ぐなど、ポテンシャルの高さは随所に見せていた。それでも「全然対応できていなかった」と喜村。「ボールが来る前の動き出し、ボールがない時の動きやスピード感が他のチームとは全然違う」と青森山田との差を冷静に見つめ、成長を誓っていた。

 八戸学院野辺地西は大半の選手が地元・青森出身の選手で構成されており、他都道府県からの越境入学組は珍しい。それでも喜村はあえて、異例のキャリアを選択した。

 街クラブの東京SC時代には都選抜、関東選抜の経験があり、都内の強豪校からもスカウトの声がかかっていたという喜村。しかしながら「どこも通学で1時間半くらいかかるので、それなら寮に入ったほうがサッカーに集中できると思った」と県外への挑戦を模索していたところ、三上晃監督と知り合いの指導者から紹介されたという。

 進学にあたってのモチベーションはやはり、“打倒青森山田”だったという。

「寮に行きたくて探していた時に声がかかった中で、(野辺地西は)6年連続で決勝に行って山田とやっていて、去年は惜しいゲームをしていた。山田とやるのも楽しみだったし、山田に勝ったら気持ちいいのかなと思ってここに来た」

 その挑戦権は1年目から自らの手で掴み取った。シーズン後半戦で主力に定着し、7年連続の決勝進出に大きく貢献。しかし、選手権での初対決は0-9という屈辱的な形で幕を閉じた。青森県リーグでは10月上旬に青森山田3rdと対戦し、1-3で敗れていたが、それ以上の完敗に「ここまで差があるとは思っていなかった」と振り返るしかなかった。

 それでも喜村には再挑戦のチャンスが残されている。「今まで経験した強さとは違う強さがあったし、1年目で知れたことはすごく良かったと思っている」とこの経験は大きな糧になり、来季に向けては「今年は1年生でみんなをまとめられなくて悔しかったけど、2年生になってちょっとはチームをまとめて、今年みたいなゲームにならないように頑張っていきたい」と新たなモチベーションも芽生えた。

 何よりGKとしての課題も見つかった。「自分は身長がそんなに高いわけではないので、フィジカルや守備範囲を広くて、もっと安定感のあるプレーができたら」。0-9からの再出発に失うものはない。

 まずは今週から始まる新人戦、そして12月に控えるプリンスリーグ東北参入戦から違いを見せていく構えだ。プリンスリーグに参入できれば、青森山田2ndと同じカテゴリに入り、日常のレベルを上げていくチャンス。喜村は「参入戦もこのままだと勝てないので、あと1か月でどれだけ変われるかにかかっている。僕自身もあと1か月で変わっていきたいと思う」と決意を新たにしていた。

(取材・文 竹内達也)
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竹内達也
Text by 竹内達也

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