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[MOM4508]青森山田FW米谷壮史(3年)_これぞエースの仕事!県決勝で貫禄ハット。決定力の秘訣は「ゴール前では常に冷静に」

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FW米谷壮史(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.5 選手権青森県予選決勝 青森山田高 9-0 八戸学院野辺地西高 カクスタ]

 献身的な走りで攻守の流れを整え、ゴール前では貫禄のハットトリック。9-0の大勝に終わった一戦とはいえ、青森山田高FW米谷壮史が青森県決勝で見せたパフォーマンスは際立っていた。正木昌宣監督が「技術的に高い選手がいるので、スペースがなくてもこじ開けられる」と太鼓判を押す今季の青森山田。エースが同様の働きを続けることができれば、2年ぶりの日本一も見えてきそうだ。

 27連覇がかかる青森県決勝、さすがの王者も序盤は固さが見られた。「1点が決まるまではプレッシャーとか緊張感があって、メンタルを作るのは難しかった」(米谷)。それでも乗り越え方は知っていた。「ただアップも含めて『チームでチームで』という声かけがあったので、自分だけの世界に入るんじゃなく、チームのためにというのを意識していた」。

 全員がやるべきことを続け、相手を力強く押し込んでいった結果、前半12分にセットプレーからDF山本虎(3年)のヘディングシュートで先制点を奪取。同14分には、クロス攻勢で相手守備陣を圧倒しつつ、混戦からMF芝田玲(3年)が押し込むというゴールが決まり、青森山田らしいしたたかな形で2点を先行した。

 その後は相手を圧倒しながらもなかなかゴールが奪えない時間も続いた。しかし、そこで輝きを放ったのがエースの決定力だった。

「監督からも『3点目だぞ』という声をかけられていた」(米谷)。前半23分、FW後藤礼智(3年)のボールキープでつないだこぼれ球に走り込んだ米谷は、左足での強烈なシュートをゴール右隅へ。エリア内には相手守備陣が何人も立ちはだかる中、トラップなしでコースを打ち抜く精度が光った。

 そこからは止まらなかった。前半28分、後藤からの浮き球パスにオフサイドギリギリで反応すると、GKが飛び込んでくる中でも冷静にトラップし、ゴールにパスするようなフィニッシュで2点目。同38分には右からのクロスに飛び込んだ上で、反対サイドからの折り返しに反応し、落ち着いたトラップからゴール天井に突き刺すボレーシュートで3点目を奪った。

 前半だけでハットトリックの大活躍。左手で「3」のゴールパフォーマンスを見せた米谷は「正直、ハットトリックは嬉しかった」と笑みを見せつつも、「ただ味方が繋いでくれて、自分にクロスとかパスで出してくれたので仲間に感謝している」とパスをつないでくれたチームメートに感謝した。

 いずれの得点もエリア内での緊迫状態の中、焦りを感じさせずに決めた形で、これらは「ゴール前では常に冷静にというのを意識していた」という心がけの賜物だった。また「ゴール前のこぼれ球、ルーズボールには常にアラートにしていて狙っているところ」という嗅覚、「普段の基礎の練習をすごく大事にしている」という技術も詰まった3得点だった。

 そんな米谷だが、昨季まではBチームの右サイドハーフ、Cチームのトップ下が主戦場。最前線で起用されるのは新チームになってからだ。昨季はBチームで出場していたプリンスリーグ東北で10得点を記録しており、ゴール前に入った時の得点力が高く評価されてのコンバートだった。

 もっとも、青森山田のストライカーはスペースを見つけてボールを収めるのも大事な役割。そこには中盤での経験も活きている。この日のチームの4点目は米谷が左サイドに流れ、相手と駆け引きしながら味方の攻め上がる時間を作ったことで、分厚いクロス攻撃につながったという形。171cmと小柄ながら相手DFとのデュエルもいとわず、チームをサポートするプレーでも貢献度は高い。

 チームの助けになりながら、ゴールを決め続ける。そうしたパフォーマンスにつながった原動力の一つは中学時代の悔しさだ。2020年度はコロナ禍真っ盛りだったため、夏の全国中学校サッカー大会が中止。年末の高円宮杯は2回戦で鳥栖U-15に0-5の大敗を喫し、米谷は無得点のままラストイヤーの全国大会を終えていた。

「中学校の時は全く点を決められないFWだった。そのせいで高円宮杯で負けてしまって、すごく悔しい思いをしたので、そこから高校に入ってからずっとシュート練ばかりしていた。それが高2になって実り始めて、今年に入ってから得点が取れたのでよかった」。3年越しの思いも実った今季の飛躍だった。

 それでも青森山田にとって、重要なのはここからの戦いだ。3試合を残したプレミアリーグEASTでは首位を走っており、米谷は16ゴールで得点ランキング2位。また年末には、過去2年間ではベンチ入りにも届かなかった憧れの舞台、選手権が待っている。

 目指すはMF松木玖生らを擁した2年前以来の日本一。「2年前の国立では玖生さんの代が圧倒していたので憧れていた。圧倒という点ではもっと自分たちが全国で優勝するために周りを圧倒するのが大事だと思う」。2か月後に国立で笑うため、米谷は「点を取れない試合がないようなFW」を目指し続ける。

(取材・文 竹内達也)
●第102回全国高校サッカー選手権特集
竹内達也
Text by 竹内達也

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