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9-0圧勝の口火切る先制ヘッド弾! 青森山田DF山本虎「ここで負けたら“負けた代のキャプテン”に…」絶対王者の重圧乗り越え27連覇

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ゴール後、DF小泉佳絃と抱き合うDF山本虎主将(3年)

[11.5 選手権青森県予選決勝 青森山田高 9-0 八戸学院野辺地西高 カクスタ]

 7年連続の同カード対決となった青森県決勝、ジャイアントキリングを狙う八戸学院野辺地西の希望を打ち破ったのは、絶対王者を率いるキャプテンの一撃だった。青森山田高DF山本虎主将(3年)は0-0で迎えた前半12分、MF杉本英誉からの右CKに反応すると、GKの股下を強烈に射抜くヘディングシュートで先制点。さらに8ゴールを重ねる圧巻のゴールラッシュの口火を切った。

 お家芸のセットプレーで奪った先制ゴール。「相手はマークがついてなくて、ゾーンの守備だったので良いボールが上がって来ればと。相手のGKも1年生で緊張しているだろうし、経験もないと思っていた」(山本)。杉本の左足キックの勢いと精度も見事だったが、山本は鍛え上げてきたフィジカルでも、冷静な駆け引きでも相手を上回った。

 CBからは相方のDF小泉佳絃も攻撃参加していた。本来のポジションでは山本がニア寄り、小泉がファー寄りに立つはずだったが、小泉から「一つ前に行かせて」というリクエストがあったため、立ち位置を変えた矢先のゴール。結果的には山本のもとにボールが巡ってきたが、相手の分析の裏を突く形となり、「正木さんからも自分と佳絃が2人でボールに合わせて入って、2人で決めろと言われている」(山本)というコンビの強みが実った先制点だった。

 県内では長年、絶対的な地位を築いてきた青森山田だが、近年躍進を続ける八学野辺地西に対し、19年には0-0からPK戦に持ち込まれると、一昨季は初めて先制点を奪われ、昨季も先制しながら延長戦にもつれ込むなど、その差は徐々に縮まりつつあるように思われていた。

 しかし、八学野辺地西が“打倒山田”の経験値を積んできているのと同様に、あるいはそれ以上に、絶対王者としても苦戦の経験は糧になっていた。

 0-0で試合を運びつつ、セットプレーから奪った先制点は一昨季の教訓を活かしたものだった。「一昨年みたいに先制されたら会場はあっちのムードだと思うので、とにかく失点しないのを心がけていた。絶対に前は決めてくれるとわかっていたので、後ろは絶対に失点しないようにと。そこで自分が先制点を決めて、チームの緊張が解けた」。頼れる主将がその姿勢を表現した。

 またそこからは先制しながら同点に追いつかれた昨季の反省も示した。「1点取ってももっともっと追加点を取ろうと話していた。去年の反省を活かして追加点を多く取れたことが良かった」。チームは2分後に追加点を奪うと、前半だけで7得点のゴールラッシュ。後半もしたたかに無失点を続け、2017年の11-0に続く大量得点での優勝を決めた。

 長年続く覇権の歴史への重圧は間違いなくあった。特に今季は黒田剛前監督が退任し、正木昌宣監督が新監督に就任。新たな体制で初めて迎える選手権とあり、山本にも「ここで負けたら、負けた代のキャプテンになってしまう」というプレッシャーが襲いかかっていたという。

 それでも過去の教訓を受け継ぎながら、県決勝の壁を乗り越えた。正木監督は主将を務めた1999年夏のインターハイで県予選敗退を経験した過去を持つ。山本は「そこの責任というのを一番わかっている人」の下、現主将として「自分もその責任をしっかりと持って、絶対に県では負けない、絶対に連覇を途絶えさせてはいけない」との思いを強く持ち、常勝の歴史をつないだ。

 ただ、勝ってしまえばそれは過去の話。目線はすでに首位で3試合を残す高円宮杯プレミアリーグEAST、2年ぶりの日本一がかかる全国選手権に向いている。そこでこだわるのは細部のディテールだ。「最後まで守備を突き詰めること。プレミアも再開するし、全国に向けて、もう一回、今日の課題になった守備のところを再確認したい」。3回戦敗退に終わったインターハイの悔しさも胸に、地に足をつけて晴れ舞台に挑んでいく構えだ。

(取材・文 竹内達也)
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竹内達也
Text by 竹内達也

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