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[MOM4537]名護GK松瀬真之介(3年)_「自分が止めて、決めて、勝つ」…快挙達成の最大要因となったチームの象徴

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名護高GK松瀬真之介(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.11 選手権沖縄県予選決勝 名護高 0-0(PK4-3) 那覇西高 黄金森公園陸上競技場]

 179cmと、ゴールを守る選手としては小柄なタイプともいえるが、不思議とそれを感じさせない風格が彼にはある。最後尾からチームを鼓舞する姿、ゴール前での窮地に冷静に対応する姿、堂々とした佇まい、そして目力。那覇西高の繰り出すシュートの雨をまるで自分のテリトリーに収めるかのごとく正面で弾き返す姿は今年の名護高の象徴であり、相手が枠のギリギリを狙わざるをえない感情にさせたのも、彼が醸し出す威圧感からの誘導であるようにも感じさせた。PKの6人目を直訴し、チーム一のキック力と自負する右足で決めて全国切符を決めたGK松瀬真之介(3年)のメンテリティーは快挙達成の最大要因である。

 父母姉がバスケットボール経験者という松瀬は、小学生の頃に友達の誘いを受けて一人サッカーにのめり込んだ。決して天邪鬼というわけでなく、「純粋にサッカーが楽しいと思った」という魅力に取りつかれた自分の意思で決めた進路である。小学生の頃から身長があったため、自然の流れでGKに。中学時代に一度CBでプレーしたこともあったが、再び自分の居場所へと帰ってきた。

 心がけていることは「声を出してゲームを作る」こと。ポゼッションサッカーを軸に鍛えてきた名護のGKはビルドアップの起点にもなる。いかに自分のキックからゴールにつなげられるかを意識していて、そのために必要なキック精度を高めるべくエデルソン・モラエス(マンチェスター・C)のプレーをプレーモデルにしている彼は攻撃の意識が高い。だからこそ今大会の準決勝・コザ高戦、そして決勝の那覇西高戦と自信を持ってPKキッカーを名乗り出た。「自分が止めて、決めて、勝つ。そのつもりでいた」という松瀬の強気の姿勢が功を奏した。

 そんなアグレッシブさを持つ守護神も実際のところ、苦い経験を繰り返してきた。そのひとつが2年生で出場した九州総体で、このとき神村学園高と対戦。「試合始まって3分ぐらい、縦中央へ長いゴールキックからすぐに右へ展開されたと思ったらクロスが入ってきて、いつのまにか福田師王選手(現ボルシアMG)に頭で決められていた。衝撃でしかなかったです」。松瀬はその後もシュートの雨に打たれ、初めて全国レベルを肌身で知った試合で1-15の惨敗を喫し「心が折れそうだった」と苦笑いした。

 しかしその稀少な体験を力に変えられた成功体験も。選手権前の遠征で大阪桐蔭高に1-0で勝利、近大附属高にも引き分け。しっかりとリバウンドメンタリティーを示した直後に挑んだ選手権で、ついに沖縄高校サッカーの歴史の1ページに名を刻んだ。

「全国の場で最後まで諦めない姿勢を見せる」という沖縄代表としての使命感を抱く松瀬の将来の夢は体育教師。そしてサッカーの指導者になりたいと語った。将来、この壮大な結果をもたらした名護高の選手たちは地元、そして沖縄全体に高校サッカーの新たな息吹を注ぎ込む存在になるかもしれない。

(取材・文 仲本兼進)

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