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2年前に国立4強を経験し、高まった意識。山口5連覇の高川学園は「さらなる上の景色を見てみたい」

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高川学園高が山口県予選5連覇

[11.19 選手権山口県予選決勝 高川学園 2-0 聖光高 みらスタ]

 2年前の全国4強超えに挑戦する。第102回全国高校サッカー選手権山口県予選決勝が19日、山口市の維新みらいふスタジアムで開催され、5連覇を狙う高川学園高と11年ぶりの優勝を目指す聖光高が激突。高川学園が2-0で勝ち、5年連続29回目の全国大会出場を決めた。

 2年前の国立準決勝を知るU-17日本代表候補のエースFW山本吟侍(3年)やCB藤井蒼斗主将(3年)を中心に目標は全国4強以上、日本一。高川学園がまずは山口県予選を突破した。

 風上の前半、立ち上がりから相手ゴールへ迫る高川学園は7分、MF伊木樹海(3年)の右CKをファーサイドの山本が頭で折り返す。これをゴール前のMF松木汰駈斗(2年)が右足ダイレクトでゴールへ押し込んだ。

「嬉しい。流れの良い状況で先制点を早めに取れたので良かった」と松木。高川学園は攻守の切り替えが速く、球際の強度も高い。また、FW田坂大知(2年)や松木、MF宮城太郎(1年)が運動量を増加。そして、タイミング良くインターセプトしていた藤井とCB沖野眞之介(2年)が軸となり、スピーディーなパスワークも見せていた。

 サイドから素早く攻める高川学園は、突破力に秀でた右SB大下隼鋭(3年)や左SB村田吟(3年)がクロス。また、最前線の山本を活用した攻撃で追加点を狙う。21分には、右クロスをファーのMF佐藤大斗(3年)が折り返し、山本が右足シュート。だが、この日好セーブを連発した聖光の186cmGK濱本陽斗(3年)が立ちはだかる。

 その聖光は23分にファーストシュート。濱本を起点に速攻へ持ち込み、CB友弘青葉(3年)の縦パスに反応したFW林要汰(2年)が、強引な突破から右足シュートを打ち込んだ。だが、次の1点も高川学園が奪う。

 前半32分、右サイドの田坂が鮮やかなドリブル突破。ゴールエリアへのラストパスは相手GKに反応された。だが、こぼれ球を松木が後方へ落とし、最後は山本が右足で決めて2-0とした。

 0-2とされた聖光は、前半35分に“切り札”MF西田唯斗(3年)を投入。後半も立ち上がりは高川学園がチャンスを迎えたが、聖光はいずれも際のところでの強さが光るCB渡根直哉主将(3年)や友弘、1対1で好守を見せた右SB香川祐樹(3年)らが踏ん張る。そして、グラウンダーのパスワークを徹底。前線でボールを受ける西田やFW金丸大輝(3年)からサイドへ展開して崩しにチャレンジしていく。

 後半19分には、中盤でのインターセプトから攻め上がったMF西川輝琉(3年)の左足ミドルが枠を捉える。これは高川学園GK高城柊哉(1年)の好守に阻まれたが、後半に2ボランチへ変更した聖光は前からの守備も効果を発揮。高川学園はロングボールが増えたり、単独の仕掛けで奪われたりするなどボールを簡単に失ってしまっていた。
 
 聖光の渡根は「2点は切り替えてやっていこうと言っていて、後半はいつも通りの良いゲームができたと思います」と振り返る。一方の高川学園・江本孝監督は「(攻撃で)剥がしたい場面があったけれどちょっと怖がっていた。もう少し連係を取るべきだったし、3人目の関わりがちょっと足りなかった。80分間で、何かしら自分たちで良い流れを掴んで欲しかった」と指摘する。それでも、10番MF三好巧大(3年)の仕掛けや左足シュート、渡根の直接FKなど聖光の反撃をGK高城やCB藤井らDF陣が落ち着いて対応。無失点で全国出場を決めた。

 高川学園は今年8月にFW山本が負傷離脱。11月に復帰するまでの期間でチームは、以前の“山本頼み”から変化してきている。藤井は「困ったら(山本への)ロングボールというところがあった。誰かに頼るのではなくて、『自分が受けてどうしよう』とか『自分がやってやろう』という選手が増えたと思います」と説明する。

 攻撃パターンが増加。また、磨いてきた走力は自信を持つ武器になっている。江本監督が「どちらかというと30名を(選手権予選機関の)4週間競争ばかりさせていた。(選手権までの)この1か月間、連係のところや細部を詰めていきたい」と語ったように、ここから細部を突き詰めて全国大会で勝負。国立準決勝の景色を後輩たちにも見せる。山本は「先輩方に一昨年、ベスト4という景色を見せて頂いて、自分たちもそれを見たから基準が上がったので、自分たちも高川の歴史に残るような活躍をしていけたらと思っています」と誓った。

 また、藤井は「自分たちが実際に見た最後の世代なので、あの景色をもう一回見たいという気持ちと、あの景色をもう一回見て、さらなる上の景色を見てみたいという気持ちは凄くある。技術面もレベルは少しずつ上ってきているけれど、走力で上位に食い込んで行けるようになってきたと思います。目標はもちろん日本一なんですけれども、次の1年生、2年生、また今後入ってくる新入生の心を動かすような大会にしたいです」と力を込めた。

 インターハイは初戦から2試合連続4ゴールで快勝も3回戦で矢板中央高にPK戦で敗戦。勝ち上がることの難しさを学んだ。ここからの1か月を大事に過ごし、2年前のような勝ち切る力も身に着けて選手権に臨む。

(取材・文 吉田太郎)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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