beacon

[大学選手権]夏冬2冠を狙う流通経済大、「予定通りの辛勝」で8強へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

[12.18 全日本大学選手権2回戦 流通経済大1-0愛知学院大 西が丘]

 接戦は必至、苦戦も当然――低姿勢の総理大臣杯王者は、しぶとくて強い。第62回全日本大学サッカー選手権大会は18日に2回戦を行い、味の素フィールド西が丘での第2試合では、総理大臣杯全日本大学トーナメント優勝の流通経済大が1-0で愛知学院大(東海3)を下した。

 流経大にとっては誤算だらけの初戦となったが、きっちりと乗り切るところに強さが表れた。中野雄二監督は試合後、初戦の相手は愛知学院大ではなく全国大会での実績に勝る福岡大(九州3)になると想定して対策を練っていたことや、試合当日には先発予定だったFW田上大地(2年=流通経済大柏高)が発熱のために戦列を離れたことを明かした。

 福大は速さ、高さ、強さといったフィジカル能力を生かすサッカーに特徴があるが、福大を破った愛知学院大は丁寧なパスからサイド攻撃を組み立てるテクニカルな集団だ。試合は、ボランチの中山雄登(4年=広島ユース)を中心に攻撃を組み立てる流経大に対し、左の水谷侑暉(2年=暁高)と右の鈴木貴也(4年=磐田ユース)という両サイドMFがチャンスメークする愛知学院大という様相で進んだ。流経大は15分にFW石井雄輔(4年=流通経済大柏高)がクロスバー直撃のシュートを放つなど攻め込んだが、狙いが的確な愛知学院大に押し返されてペースはつかめず、一進一退の攻防となった。

 しかし、後半の立ち上がりに流経大は貴重なチャンスを物にする。3分、相手GKのクリアを前に出ながらカットした右MF椎名伸志(4年=青森山田高)がドリブルシュート。値千金の先制点を挙げた。ただし、得点で勢いが出るかと思われた流経大は、なかなか攻撃のテンポが上がらなかった。愛知学院大は10分に水谷がシュートを放つが、相手GKが好守。24分にも水谷がゴール右にわずかに外れる際どいシュートを放つなど、徐々に勢いを盛り返していった。

 32分には鈴木の右からのクロスを相手GKがファンブルし、途中出場のMF西中寿明(3年=東邦高)がプッシュを狙う際どい場面があったが、これはブロックに阻まれた。流経大も何度かカウンターを仕掛けたが、主導権を握っているのは愛知学院大だった。試合終了間際の42分には左からのクロスをMF佐野渓(3年=愛工大名電高)がヘッド。45分には右、左、右とクロスやファーサイドへのシュートが相手ゴール前を何度も横切るチャンスを迎えたが、前線に上がっていたDF三浦祐希(2年=浜松開誠館高)が最後に放ったシュートは、わずかにゴール右に外れた。

 長く感じられたアディショナルタイム4分を耐え抜いた流経大は、虎の子の1点を守り切って準々決勝へ駒を進めた。中山は「リードしたけれど、最後の最後まで危ない場面があったので、見ている方もそうだったと思うけど、やっている方もドキドキした。本当に耐えて、次につなげた勝利だったと思う。攻撃というよりも前から連動して守備をすることと、前線に当てられたときに後ろに戻ってパックする(封じ込める)ことを意識した。あとは14番(水谷)がドリブルが上手くて速い選手だったので、2人がかりになるところもありながら対応した。守備での声かけの方が多かった」と辛勝を認めた。

 しかし、今季のチームには、「接戦上等」の覚悟がある。流経大と言えば、毎年プロ内定選手を抱えているタレント集団のイメージがあるが、今季はやや小粒。中野監督は「今まではスター選手がいて横綱相撲のようにゲームを進めてきたが、今年は比較すると個々のスケールは小さい。ただ、チームとしては一番強い。一人ひとりが役割を持っていて、連動性や距離間、バランスが良い。そこまで上手くはないけど、みんなで戦うということに関しては、応援も含めて素晴らしい。延長戦でもPK戦でもやり通せる。スターがいない分、粘り強い」と今季のチームを評した。

 個の力を見せつけて圧勝するチームではなくなった。しかし、土俵際での強さを身につけた。夏の王者は、驕ることなく常に接戦を覚悟の上で勝利を目指している。準々決勝の相手は、同じ関東勢の国士舘大。指揮官は「今年は一度も勝っていない。2度負けているので『倍返し』はできないけれど、借りを返したい」と意気込んだ。

[写真]後半3分、流通経済大はMF椎名(10番)の先制ゴールを喜ぶ

(取材・文 平野貴也)
▼関連リンク

第62回全日本大学選手権特集ページ

TOP