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「やってきた努力は間違いじゃなかった」中央大FW小山駿が後半45分の同点オーバーヘッドキック

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オーバーヘッドキックで同点弾を挙げた中央大FW小山駿(4年/中央)

[12.19 インカレ準決勝 桐蔭横浜大3-1(延長)中央大 NACK5]

 スタジアムが歓喜に揺れた。中央大FW小山駿(4年=帝京三高)は試合終了間際、豪快なオーバーヘッドキックを放ち、ゴールに突き刺す。劇的な同点弾となり、劣勢だった試合を振り出しに戻した。

 準々決勝でも2得点を挙げていた小山はベンチスタートも「絶対に出番が来る」とそのときを待っていた。中大は前半21分に失点。チャンスはつくるものの、なかなか追いつくことができない展開に後半10分、佐藤健監督は「ちょっと停滞していたので、そこのところは懸けました」と満を持して小山を投入した。

 だが、投入直後にアクシデント。競り合いでジャンプした小山は着地した瞬間に足をひねってしまい、その場に倒れる。苦痛で表情をゆがめる様子に周囲も心配そうに見守るが、なんとか立ち上がってプレーを続行した。「めちゃくちゃ痛かったです」と小山。しかし「逆に気持ちが入りました」とそれがスイッチになったようだった。

 そして、後半45分に小山が試合を大きく動かす。中大は敵陣内でボールをクリアさせず、粘りの中でMF小野智史(4年=佐野日大高)がPA右の深い位置に抜け出して右足クロス。ファーサイドの小山は少し後退しながら難しい体勢になるが、そのまま右足を振り上げ、ドンピシャのオーバーヘッドキックでボールを叩き込んだ。

「今シーズンは苦しかった」と一年間を振り返る。リーグ戦では7試合先発で6試合は途中出場。しかし最後のシーズンで得点を挙げることはできなかった。支えてくれたのはチームメートであり、主将のMF宮城和也(4年=興國高)。「インカレで大逆転するぞって毎日一緒に欠かさず筋トレとかシュート練をしてきました」。そして小山は最高の舞台で光り輝く。インカレ準々決勝では2得点を挙げ、準決勝でも1得点。「やってきた努力は間違いじゃなかった」と強調した。

 劇的得点に会場は沸き立つ。小山も「勝ったって思った。これは勝つパターン」とその瞬間を思い出す。「そしたらダメでした」。中大は延長戦で2失点を食らい、惜しくも1-3で敗戦となった。

 卒業後は関東1部リーグの日立ビルシステムサッカー部で競技を続ける。「悔しいですけど、悔いがないといえば嘘になりますけど」と思いを語るが、その表情は晴れやかだ。「サッカーは楽しいと思えました。次のステップでもまた頑張りたいなって気持ちが出ましたね」。最高のオーバーヘッドキックで、自身の大学サッカーを締めくくった。

(取材・文 石川祐介)
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