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[MOM936]京都産業大MF食野壮磨(4年)_初の大学日本一に王手、超快進撃を支える強胆の主将

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京都産業大MF食野壮磨(4年=G大阪ユース/東京V内定)

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.21 インカレ準決勝 流通経済大2-2(PK3-4)京都産業大 流通経済大学龍ケ崎フィールド]

 快進撃は大学の頂点まで止まらない。京都産業大はインカレ準決勝の死闘を制して初の決勝進出。チームを支える主将、MF食野壮磨(4年=G大阪ユース/東京V内定)は自身が並べたPK戦の順番で5人目のキッカーを選んだ。「勝負が分かれるのはやっぱり5番目。自分が責任を持って絶対に蹴らないといけない」。冷静に決め切り、後攻・流通経済大の5人目のキッカーにプレッシャーを与えた。

 関西学生リーグ1部で初優勝を成し遂げた京産大は、勢いそのままに2大会ぶり8回目のインカレで躍動する。シードで2回戦から登場すると、2回戦・東洋大戦を2-0で勝利。3回戦・福岡大戦も2-1で制し、初の全国4強入りを決めた。

 関東勢の強豪・流経大にも、食野は動じない。「この大会は初めての相手が多い。こちらが相手のことをわからない分、向こうもこっちのことがわからない」。どちらに転ぶかわからない難しい一発勝負も、わずかなクオリティで上回ってベスト4進出。食野は自信をつけながら流経大戦に臨んだ。

 開始序盤から積極性を見せると、前半33分に食野がゴールを演出する。流経大GKデューフエマニエル凛太朗(1年=流通経済大柏高)にボールが収まった隙を逃さずに猛プレス。こぼれたボールをMF伊藤翼(1年=C大阪U-18)が仕留めた。その3分後には再び追いつかれ、1-1で後半へ。起点を作ったのは再び食野。後半20分、食野のアシストをG大阪ユースからの盟友MF福井和樹(4年=G大阪ユース/相模原内定)が決め切り、2-1とした。

 終盤は押し込まれ、後半36分には再び同点に追いつかれる。延長前後半30分でも決着はつかず、勝敗はPK戦に委ねられた。重圧がかかるPK戦のキッカー選びは指揮官が決めるか、立候補によるものが多い。だが京産大は主将・食野が順番を決めた。

「1番目か5番目を蹴ろうと思っていた」(食野)。結局、勝負を決める5番目を自身で蹴ることにした。1番目には副将・MF川上陽星(4年=作陽高)を置いたが、GKデューフのセーブに阻まれる。「すごくプレッシャーがあったと思う。結果は置いといて、副将としてチームを支えてくれたので信頼して任せた」。主将はその選択に揺るがない。その後は味方が成功し続ける。PK戦は3-3のまま5人目、食野の順番が来た。

 先攻・京産大の5人目として、食野がキックポイントに出てくるまで時間がかかった。寒さをしのぐために重ね着をしており、脱ぐのに時間がかかったという。極限の緊張感が漂うなかで起きた嫌なハプニングだが、食野に緊張はない。「いやおもろ…みたいな感じでした。なんか恥ずかしいなと思いながらもおもろって(笑)」。自信ありのPKキックをゴール右上隅に決め、スタンドの仲間に咆哮。後攻・流経大の5人目がゴール枠外に外し、京産大が決勝進出を決めた。

 G大阪ユースから京産大の門を叩いた。当時は残留争いが続く下位チーム。「(日本一は)正直まったくなかった。関西で強豪にしようと思って入ってきたので」。食野の世代は3年次から主力を担う。その年は苦しみ抜いてリーグ6位に終わったが、その経験を生かして最終学年で悲願のリーグ初優勝。快進撃はインカレでも続いている。

「スタッフの皆さん、同期の4回生、後輩、長く京産を率いられてきた古井(裕之)総監督、すべての人の力あってのこと。すごくいい年に主将としてやらせてもらっているのは幸せ」。インカレ優勝は京都勢にとっても初。京産大としても名門・ラグビー部の最高成績が全国ベスト4ということもあり、食野が背負うものは大きい。だが、頼れる主将は「また頑張る理由が増えた」と冷静だ。残り一勝に向け、24日の決勝でも躍進を誓った。

(取材・文 石川祐介)

●第72回全日本大学選手権(インカレ)特集
石川祐介
Text by 石川祐介

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