受け答えはとても落ち着いている。だが、内に熱いものを秘めているのがDF森重真人だ。レギュラーCBであるDF今野泰幸が微熱で前日練習に参加しなかったため、森重がニュージーランド戦で先発出場する可能性は少なからず高まった。だが今野が欠場しようがしまいが、「試合に出たい」という気持ちは変わらないようだ。

　試合に出場する可能性がわずかに高まり、意気込んでいるのかと思いきや本人は現状を冷静に捉えている。「チャンスがあれば試合にはもちろん出たいですが、出られるかどうかは分かりません。でも良い準備はしておきたいと思います」。だが、落ち着きながらも事あるごとに「とにかく試合に出たい」という言葉を残しているのが印象的だった。

　昨年の東アジア選手権で日本代表デビューを飾り、大会初制覇を経験すると、海外組が合流した『真のザックジャパン』にも続けて招集され、CBのレギュラー争いに食い込んでいる。4バックでも3バックでも対応できる柔軟性があり、強さとうまさも兼ね備えるが、今野とDF吉田麻也からレギュラーを奪うには至っていない。だからこそ、与えられた出場機会を確実にモノにしたいと考えている。

「チャンスをもらえたときにしっかりとプレーできる準備はしています。そこは主力組でもサブでも責任感を持ってやらないといけないと思うし、そこに温度差があってはいけません」。代表選手、そしてプロサッカー選手として準備を怠らないことは当然。だからこそ、出場した際にはアピールしたい気持ちは強いだろうが、「(出場しても)特別なことは今さらしなくてもいいと思っている。今までやってきたことをしっかりやるのが大事だから」と話したように今までの準備、そして積み重ねをピッチ上で表現することが何よりも大切だと話した。

　W杯イヤーを迎え、今まで以上にW杯に対する思いも大きくなってきているようだが、まだ現実感がないとも話している。「多少なりには意識も変わってきましたが、まだリアリティーがないと言うか、あまり先まで意識していません。目の前のことを一つひとつこなしていくだけです」と答えたように、まずは明日のニュージーランド戦での出場、そしてピッチ上での奮闘を誓った。

(取材・文　折戸岳彦)