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[練習試合]U-19日本代表候補はスタイル表現できず戸惑いも関根、小川ゴールで競り勝つ

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[3.25 練習試合 U-19日本代表候補2-1VONDS市原 ゼットエーオリプリスタジアム]

 今秋ミャンマーで開催されるAFC U-19選手権2014へ向けて千葉県内で強化合宿中のU-19日本代表候補は25日、関東サッカーリーグ1部のVONDS市原と練習試合(45分2本)を行い、MF関根貴大(浦和)とMF小川直毅(G大阪)のゴールによって2-1で勝った。U-19日本代表候補は合宿最終日の26日、味の素フィールド西が丘でU-21日本代表候補と練習試合を行う。

 鈴木政一監督が「1本目は予想通りになっちゃったなという感じです。やろうとするサッカーがやれない。(2か月半前の)ベトナムの時のサッカーに比べたら、彼らも『えーっ』と思っていると思う」と振り返ったように、前回の代表チーム活動(ベトナム遠征)から2か月半ぶりとなる実戦だった1本目は、継続的に取り組んできたスタイルを表現することができなかった。「前線が空いているところに入っていくサッカーをしないとチャンスはできない。前線へ入れることでどういうメリットがあるのか、彼らにはずっと言ってきて、分かっているはずなんだけれど・・・」と指揮官は首を傾げたが、攻撃のテンポ、パススピードが変わらず、攻める時間がかかってしまったことによって自分たちでスペースを消してしまう格好。ボールを保持しているものの、相手に持たされているような時間帯が続いた。

 昨年はAFC U-19選手権予選を首位突破。8月のSBS杯国際ユース大会(静岡)を制し、今年1月のU-19国際フットボールトーナメントNutifood Cup 2014(ベトナム)もU-19ベトナム代表とU-19ローマ(イタリア)に勝って優勝した。1本目の選手たちは1年間を通してほぼ固定したメンバーで戦ってきたことで連係面、結果も上々。ただ、鈴木監督も懸念していたとおり、各クラブのキャンプなどで招集間隔が開いたことでこの日はU-19代表の戦い方をいきなり取り戻すことができず、それが苦戦の原因となったようだ。

 このVONDS市原戦はFW南野拓実(C大阪)とFW高木大輔(東京V)、FW越智大和(産業能率大)の3人が疲労を考慮されるなどして欠場。1本目のメンバーは右から広瀬陸斗(水戸)、内山裕貴(札幌)、三浦弦太(清水)、内田裕斗(G大阪)の不動の4バック。中盤は川辺駿(広島)とゲーム主将の松本昌也(大分)のダブルボランチでトップ下が金子翔太(清水)。右MFが関根、左が小屋松知哉(名古屋)、1トップは宮市剛(湘南)が務めた。なお、GKは阿波加俊太(相模原)が先発し、吉丸絢梓(神戸)、高木和徹(清水)の順で約30分間ずつ務めた。

 U-19代表候補は8分にスコアを動かす。最前線で強烈なプレスをかけ続けていた宮市が相手のミスを誘発。GKと1対1となった金子が右前方へつなぎ、最後は宮市が右足で狙った。これはDFに阻まれたが、すぐさま2次攻撃を繰り出すと、右中間の関根がDFをかわしてゴールライン際へ切れ込み、そのまま角度のない位置からゴールを陥れて先制点を奪った。

 リードを得たU-19代表候補はその後も常に楔のパスを狙いながら攻撃をコントロールする川辺中心にボールを動かす。川辺がダイレクトでの縦パスやループパスを狙うなど、攻撃に変化をつけていたが、指揮官の指摘通り、相手の急所を鋭く突くような攻撃は少なかった。18分には左CKをファーサイドで折り返されて痛恨の失点。直後に三浦が思い切った中央突破を見せるなど、失点から切り替えて勝ち越しゴールを目指したものの、自陣でボールを失ったり、相手の大きな展開からクロスやシュートへ持ち込まれるなど、流れの悪さは変わらなかった。

 それでも前半終盤は宮市や小屋松がサイドのスペースへ飛び出し、これに金子や松本が絡む。ただ2点目が生まれない。31分に右サイドを駆け上がった広瀬からの折り返しをミドルレンジから宮市が右足で叩くが、GKが好セーブ。自陣から徹底してボールをつないでくる相手に対するプレスがハマり、39分にはPAやや外でのインターセプトから金子が右足で狙ったが、わずかにゴール右へ外れてしまう。43分にも左サイドでの崩しから最後は金子のラストパスを松本がスルーし、宮市が左足シュート。だがこれも決めきることができず、1-1で1本目を終えた。

 1本目については自分たちのサッカーの確認に多くの時間を費やす形となったが、ハーフタイムに鈴木監督からアドバイスを受けて臨んだ2本目は、指揮官も「(1本目の反省点について)話をしてやったら彼らはスッとできる部分を感じると、あまり不安はないと思っている」と頷いたように一変。相手の運動量が落ちたことも大きかったが、バイタルエリアやDFの背後のスペースを効果的に突いて得点機を増やす。

 右から藤谷壮(神戸U-18)、三竿健斗(東京Vユース)、茂木力也(浦和ユース)、山口真司(神戸U-18)の4バック、望月嶺臣(名古屋)と宮原和也(広島)のダブルボランチ、右MF小川、左MF中野雅臣(東京Vユース)、トップ下・田村亮介(京都)、そして1トップが北川柊斗(筑波大)の陣容で臨んだその2本目は10分に中野がクロスバー直撃の左足ミドル。19分には田村の展開から左サイドの中野が左足で中央へ完ぺきなラストパスを通し、右サイドから飛び込んできた小川がダイレクトでゴールへ押し込んで2-1とした。

 後半は攻撃の軸となった望月が積極的にボールを受けて、縦横へと振り分けていく。その望月が左サイドへ絶妙なスルーパスを通してSB山口がクロスを放り込んだほか、山口のクロスに北川が飛び込み、北川、田村、中野の連係でチャンスをつくり出すシーンもあった。ただ追加点を奪えず。逆に終盤はVONDS市原に立て続けに決定機をつくられた。それでも、三竿を中心とした高校生4バックが何とか相手のラストパスを触るなど、1点リードを守り切った。
 
 今回の合宿はこれまで継続してやってきたサッカーを確認することに充てられている。鈴木監督は4大会ぶりのU-20W杯出場を懸けたAFC U-19選手権へ向けて、昨年からの継続路線を進むことを明言。「このサッカーは相手がどう守ってきても、その状況を見据えて、どう仕掛けてというサッカーだから、これは継続した方がいい。その中の味方同士の特長を活かしたコンビネーションや、パス一つひとつの精度、判断のスピード、こういうものを彼らがゲームを経験しながら高めていくことによって個が膨らんで来れば、チーム力はもっと膨らむはず。(逆に)それをしていかないと最終予選は苦しむかなと思う」と語った。選手たちが集まってすぐにU-19代表のサッカーができるように、コミュニケーション、コンビネーションを高めてアジア決戦へ臨む。

[写真]2本目19分、U-19日本代表候補はMF小川が決勝ゴール

(取材・文 吉田太郎)

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