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代表戦初勝利でW杯出場を決めたい井手口 “選ばれし者のスパイク”でいざ決戦へ

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W杯アジア最終予選の大一番に臨む日本代表MF井手口陽介

 日本代表は31日のW杯アジア最終予選でオーストラリア代表と対戦する。MF井手口陽介(G大阪)は6月7日に行われたキリンチャレンジ杯のシリア戦でA代表デビュー。同13日のW杯アジア最終予選・イラク戦では初先発を飾ったが、結果は2試合とも引き分けだった。

「日本代表の試合に出場したことで、これから代表に定着していくという新しい目標ができた。僕自身も選ばれていないときはサポーターと同じ目線で見ていたから、日本代表が勝ったらうれしいし、負けたらガッカリする。勝てなかったときの気持ちは分かる。イラク戦は中立地での試合だったけど、観客が少なくて、雰囲気も全然違った。大勢のサポーターの前で勝利できたら気持ち良いと思うし、早く(代表初勝利を)一緒に味わいたい」

 勝てば6大会連続6回目のW杯出場が決まるオーストラリア戦。勝利にかける意気込みは強い。井手口の特長は、何と言ってもボール奪取能力だ。ただ、ハリルホジッチ監督からの指示について「念には念を入れる人。『間合いを空けるな』『人にピッタリ付け』と毎回、同じことを言われている」と明かすと、「守備のことしか言われないけど、攻撃も求められるようになりたい」と、ボールを奪ったあとのプレーでのアピールにも意欲を見せた。

「ボールを奪ってからもっと縦パスを通したいし、もっと前に出て行きたい。ボールを奪えて、ゴールも決められて、何でもできる選手になりたい。ハリルホジッチ監督からはボールを奪うことを一番に求められているので、そんなに上がっていくわけではないけど、自分の色も出していきたいので、前に行って仕事ができるようにしたい。必要なのは、攻撃のクオリティー。タイミングの取り方を工夫することとか、イージーなミスを少なくすることが必要だと思う。ゴールやアシストが欲しい。最近、チームであまり点が取れていないので、最近は遠くからでもシュートを打とうかなという気持ちも持ってプレーしている。J1で2ケタは無理ですけど、7、8点くらい取りたい」

 中盤の底に位置するボランチで、守備のタスクをこなしながら前へ出る。貪欲さがゴールへつながれば、勝ったときの喜びはさらに重なる。攻撃力のアピール、自身の代表戦初勝利、そして日本のW杯出場決定が重なれば、“喜びの三重奏”となる。

 今月23日に21歳になったばかりの井手口だが、所属クラブでMF遠藤保仁やMF今野泰幸と日ごろから競争していることもあり、「プロになったときから、ガンバで先発のポジションを取れれば、自然と日本代表は見えてくると思っていた」と言い放つ。中学生の頃から年代別代表に選ばれながら、U-17W杯、U-20W杯という世界大会への出場を逃した。それでも昨年はリオデジャネイロ五輪に出場し、A代表にも初選出。世界で戦うための階段を着実に上っている。

 外国人選手と対戦するときは、普段以上に対人戦で負けたくないという気持ちに火が付くそうで、気後れするところはない。「リオ五輪では、外国人の勝負強さや球際の強さを感じた。真っ向勝負では無理なので、出足で差をつけたいですね。外国人の選手はそんなに上手くないのに、なぜか試合に勝ってしまう。あれは謎ですね。ああいう勝負強さが日本人には足りていないのかな」と、笑顔をまじえてケロリと話す。たくましく、これからが楽しみな選手だ。ただ、本人にはいつまでも「期待の若手」でいるつもりはない。

「昨年(11月に)初めて招集されたときは緊張して、いつもどおりのプレーができなかったし、試合にも出られなかったけど、6月は試合に出て、自由にやれたかなと思う。やっぱり選ばれるからにはベンチとかベンチ外ではなく、まずは途中からでも良いから毎試合出場する選手になりたい。W杯出場は小さいころからの夢でしたけど、現実味は全然なかった。今もまだ具体的なイメージは湧かない。でも、代表の試合に初めて出場してから、出たいという気持ちは強くなった」

 仲間に置いていかれるわけにもいかない。4歳年上のMF宇佐美貴史は昨夏、ブンデスリーガへ再挑戦。後輩のMF堂安律はU-20W杯での活躍直後、今年6月にフローニンゲン(オランダ)への期限付き移籍が決まった。2人と同じようにジュニアユースからG大阪で育ってきた選手として、刺激を受けないわけがない。「羨ましい(笑)。自分は自分なので、今はここで頑張りながら、ファンとして応援している。ただ、違う環境で、違う刺激が欲しいと思う気持ちは持っている」と、嫉妬心を隠さなかった。

 井手口への期待はスパイクにも込められている。世界各国で数多くの有望選手が契約しているスポーツメーカーのナイキは、これから世界での活躍が見込まれる、1995年以降生まれで各国代表歴のある選手に特別なデザインのスパイクを用意。日本では、96年生まれの井手口がただ一人、選出された。今後、一般販売されるものだが、契約プロでは限られた選手しか履くことができない。井手口は「限られた人しか履けないので、選んでもらったことは素直にうれしい。でも、まだ代表の試合にちょっと出ただけなので、自分に履く権利があるのかなと思ってしまう。やっぱり得点やアシストといった目に見える結果が欲しい」と、日本代表での存在アピールをあらためて誓った。

(取材協力 ナイキジャパン)

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