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“10年越し”初先発の宮市亮、伊東純也に重ねた自身の姿「プレー集を参考にしていた」「彼との決定的な違いは…」

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FW宮市亮(横浜FM)

[7.24 E-1選手権 日本0-0中国 豊田ス]

 2012年2月の初招集から10年、FW宮市亮(横浜FM)が日本代表で待望の初先発を果たした。爆発的なスピード、鋭くゴール前に届くクロス、相手の裏をかく切り返し——。5バックで守ってくる中国に対し、これまでのサッカー人生で積み上げてきた武器はいかんなく発揮した。しかし、約70分間のプレータイムも含めてゴールをこじ開けるには至らず、悔しさの残る一戦となった。

 試合後、オンライン取材に応じた宮市は「スタメンというより結果が出なかったこと、0-0で終えてしまった悔しさが残る。爪痕を残すという面でも結果が欲しかった」と自身のプレーを総括。「こういう難しい試合でも決定的な仕事のできる選手が求められるし、結果に結びつけるプレーを出していくことが今後につながる。今日はそれができず悔しかった」と心境を明かした。

 中京大中京高を卒業後、イングランド名門アーセナルでプロ生活をスタートさせた宮市は19歳で迎えた2012年2月、ブラジルW杯3次予選で初の日本代表選出。その後、5月23日のキリンチャレンジカップ・アゼルバイジャン戦(○2-0)の後半17分からデビューすると、続く6月の最終予選でも継続招集を勝ち取った。ところが、同年10月16日のブラジル戦(●0-4)で後半終了間際にピッチに立ったのを最後に、9年9か月にわたって代表から離れる形となった。

 その理由は度重なる負傷だった。12年末以降は期限付き移籍先のウィガンで足首やハムストリングの怪我を繰り返し、15年のドイツ移籍後は選手生命に関わる前十字靭帯断裂を左右の膝で経験。ピッチに立つことさえできない時期が長く続いた。今回の活動期間中の取材対応では「ドイツで3回目の前十字靭帯損傷をした時、このまま手術したら引退しないといけないかもしれないと言われた。ちょうど契約が切れる段階で、このままキャリアが終わってしまうんじゃないかということがあった」と当時を回顧。悲痛なリハビリ期間の思いを口にしていた。

 それでも宮市は復帰への道を諦めず、初招集から10年半後、A代表の舞台に帰ってきた。転機となったのは横浜FMへの移籍。初のJリーグ所属となった昨季はJ1リーグ戦2試合の出場にとどまったが、身体作りを続けられたことで「サッカー選手としてやれているだけで幸せなんだというところは感じていた」。そうして努力を重ね続けてきた結果、今季はチームがJ1の首位を走る中、ジョーカー起用中心ながら3ゴールを挙げる活躍を見せてきた。

 その武器は初招集当時と変わらず、爆発的なスピード。その片鱗はこの日、初先発のピッチでもいかんなく発揮した。前半2分、右サイドの突破でカウンターの先陣を切り、最初のチャンスを導くと、前半の日本の攻撃はほとんど宮市のドリブルを起点に行われており、カタールW杯最終予選で大ブレイクを果たしたMF伊東純也(ゲンク)のような存在感を発揮していた。

 宮市によると、同学年にあたる伊東の存在はこの代表活動中も深く意識していたという。「ミーティングでも出てくるシーンが多かったし、自分もスピードが長所なので、伊東純也選手のプレー集を見たりして参考にしていた」。前半21分にMF脇坂泰斗(川崎F)に出したラストパス、同43分にMF橋本拳人(ウエスカ)に通したクロスなど、本家さながらのチャンスメークも担っていた。

 ところが、結果は伴わなかった。宮市は0-0のまま後半24分、MF満田誠(広島)との交代でベンチへ。その後もチームは攻撃の形を構築できず、反対サイドで途中出場したMF相馬勇紀(名古屋)の突破頼みのまま試合に幕を閉じた。試合後、宮市は「決定的な違いは彼は結果を出しているということ」と伊東との差を痛感。「彼は常にどの試合でも結果を出している。結果が出なかったので悔しいけど、切り替えて韓国戦にやっていきたい」となんとか前を向こうとしていた。

 もっとも宮市の自己評価とは裏腹に、森保一監督からは宮市の存在によるポジティブな側面も語られた。「宮市は基本的にワイドの位置から背後を取っていくことができる。そしてインサイドに小池やボランチ、トップ下が絡んでいくイメージは持っていた。右サイドの部分は機能していて、得点に至ってもおかしくないプレー、相手にダメージを与えるプレーができていた」。起用したポジションは普段横浜FMで結果を出している左ではなく右。代表の右ウイングは伊東がレギュラー争いを大きくリードしている中、イメージを重ねての起用だったとも推測できる。

 そうだとすれば、宮市に必要なのは伊東との決定的な違いである「結果」を残し続けることだ。「この悔しさからしっかり切り替えることが大事。準備期間も2日しかないなか、しっかり前を向いて、勝利すれば優勝は間違いない」。最終節の日韓戦へ、優勝の決意を示した宮市は「出た時には自分の良さを出していって、もし出なかったとしてもチームのためにというのを意識して頑張っていきたい」とひたむきにチャンスを待つつもりだ。

(取材・文 竹内達也)

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