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“即興メモ布陣”で輝いた久保建英、新生森保Jに手応え「第1次よりすごい進化している」

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ハンドサインで指示を送る日本代表MF久保建英(ソシエダ)

[3.28 キリンチャレンジ杯 日本 1-2 コロンビア ヨドコウ]

 1点ビハインドで迎えた後半33分、日本代表はMF守田英正に代わってFW浅野拓磨を入れると、これまで一度も練習で取り組んだことのなかった4-3-1-2のフォーメーションにトライした。トップ下に入ったのはMF久保建英。所属先のソシエダでは基本布陣として採用されており、慣れ親しんできたシステムの要所を託された形だ。

 この“サプライズ変更”は浅野がベンチからのメモを持ってピッチに入り、ゲームキャプテンのMF遠藤航に渡される形で伝達された。久保は「メモは見てないから(何が書いていたかは)分からない」と間接的に詳細を聞くような形となったが、このトライ自体は前向きに受け止めていた。

「4-4-2の菱形と言われて僕はトップ下に入って、普段はトップ下と2トップを両方やっているけど、即興性というかすごく思い切りがいい判断。人にハメないといけないので人と人との交替じゃなくてフォーメーションを変えて攻撃的にというのはすごくいい判断だったと思う」

 報道陣からの「練習で試していたのか」という質問には「やったと思います?」と笑顔でサラリとかわした久保。そして「4-3-3、4-2-3-1とあるけど、そんな3個も試してる余裕はない。(クラブ)チームじゃないので2個が浸透しているだけでもすごいことだと思う」と言葉を続けたが、“ぶっつけ本番”であっても効果的な戦法だったと感じていたようだ。

 実際、久保のチャンスシーンはほとんどそれ以降の時間帯だった。後半35分にエリア内からの右足シュート、同42分には右斜め前から左足ミドルシュート。一つは相手DF、一つは味方に当たってしまったが、「僕は4-4-2の菱形に変えた時のほうがボールが入りやすくてよかったと思う」と慣れ親しんだ“久保システム”に手応えを語った。

 だからこそ反省点はそうしたシーンをゴールにつなげられなかったことだけ。「あとは最後。僕は落ちていたけど、そこから運んでパスを散らして、いいシーンは作れていた。彼らは2、3回のチャンスで決め切れってきていたので、僕たちも3、4回チャンス作った中で、決め切れずに惜しいで終わってしまったのはちょっと良くなかった」と決め切れなかったことを悔やんだ。

 ちなみにカタールW杯でも、ほとんど練習で取り組んでいなかった3-4-3へのシステム変更をきっかけにドイツ、スペインを破るジャイアントキリングを演じていた森保ジャパン。だが、久保はそうした第1次体制におけるサプライズ布陣と、第2次体制における今回のトライは異なるものだと捉えているようだ。

「僕が見てきた代表の中でも…と言っても、これまでの第1次とこれからの第2次、二つしか見ていないですけど、第1次よりすごい進化していると思う。ミーティング内容もはっきりしていて、全体練習に3日間しか参加していない僕でも、ミーティングを1回見るだけである程度はチームのやりたいことがわかるような内容だった」

 今回の布陣変更は「それがありつつ、やっぱり点を取りに行かないといけないというところ」のもの。「全部が(ミーティングで)言われた通りにやってうまくいく訳でもないので、最後は選手の力を信じてということの即興性だったと思う。ディフェンスの選手に誰がつくかというのもよかったと思う」と特定のベースがある上での決断を前向きに受け止めていた。

 では果たして、ミーティングではどのような点が変わったのか。久保に問うと、次のような答えが返ってきた。

「新しい風というか新しいコーチ・スタッフも入って、新しい選手も入って、選手が若くなって、形が増えたというか、『こうして、こうして、こうしようよ』って提示されることが増えたので、特に新しい選手がやりやすいのかなと。『はい、どうぞ。好きにしていいよ』って言われるより、新しい選手はこうしてくれと言われたほうがやりやすい。ベテランの選手、経験のある選手はそこからアドリブを利かせていくというのがあるけど、まずはベースのところ。今日だったらカシーフ選手(DFバングーナガンデ佳史扶)、町野(修斗)選手、西村(拓真)選手のように初スタメンや初出場の選手がすんなりとチームに溶け込めているのは、そういった決まり事がしっかりしているからなのかなと思います」

 もっとも、そうした手応えを確かなものとするため、久保は結果へのこだわりも忘れなかった。「選手間でも話したけど次の活動は勝たないといけないなと。ひとまず内容は時間が経てば良くなってくると思うので、次は相手がどこであれ勝ち点3というか、日本のホームでやれるので、ホームでしっかり観客の前で勝つっていうのを意識したい」。次の活動は6月の2試合。3年後の北中米W杯に向けたトライは着実に積み上げつつも、必勝を期して日本に帰ってくるつもりだ。

(取材・文 竹内達也)

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