今年6〜7月に行われたU17アジアカップで大会史上初の2連覇を果たし、世界への扉を開いたU-17日本代表だったが、その結果をもって現状に満足している選手は一人もいなかった。見据えているのは「世界との差」。年上世代がグループリーグ敗退に終わったU-20ワールドカップの教訓も活かし、11月に開幕するU-17W杯に向けた競争が再び始まっている。

　清水エスパルスユースのMF矢田龍之介はU17アジア杯から帰国後の取材対応で「自分の課題が明確になった大会だった」と振り返った。大会中はボランチの一角で5試合に出場。そのうちグループリーグ2試合、準決勝、決勝の計4試合は先発出場を果たし、準決勝イラン戦では得点も決めるなど、優勝の立役者といえるパフォーマンスを見せたが、すでに課題に目が向いていた。

「球際の部分、プレスバックはまだまだ自分の課題で、確実に変えていかないと世界でやっていけない。そこは変えていきたい」。その課題は森山佳郎監督や反町康治技術委員長からチーム全員に伝えられたものでもある。矢田は素直にアドバイスを受け止めながら「上手くて、強くて、タフな選手が世界で通用すると言われたので、それを目標にして成長していきたい」と意気込んだ。

　ルヴァン杯ではすでにトップチームデビューも飾っているが、目標はJ1リーグ戦の戦力になること。やはり足りないのはそうした課題の部分だと感じている様子。「上手くても強くなきゃダメだなと。世界でもそうだし、Jリーグでもそう。守備ができないと使ってもらえないし、使ってもらえないと自分の良さである攻撃も出せない。そこは強烈に感じているので、変えていかなきゃいけないなと思う」と危機感すらにじませた。

　矢田は今年3月、クラブが提携するスペイン・マジョルカで練習参加を行い、U-19チームに参加しながら欧州基準の強度も経験した。

「いっぱい刺激を受けた。印象に残ったのはやっぱりスタジアム。あそこで相手がボールを持ったらすごいブーイングが来たり、審判にも圧力がかかる。一つ一つのプレーで観客がオオーってなるし、観客がコーチみたいで何か言ってるんですよ。そんな中でもプレーしたいなと刺激になりました」

　それでもU-17アジア杯を通じて「今までも海外に行ってきたけど、大会にかけてくる選手たちの迫力、球際は今までで一番強かった」とアジアレベルでも公式大会の凄みを感じたという矢田。いつか異国の地で真剣勝負を経験すべく、「まずはJリーグでデビューして、スタメンで勝ち取りたい。最終的にはスペインでプレーしたい」と高い基準を掲げ、この夏を過ごしていくつもりだ。

(取材・文　竹内達也)

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