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こだわるのは「次の試合」。U-22日本代表MF山内翔の忘れられない「U-17W杯のあの日」と、国際舞台への思い

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MF山内翔

「自分のプレーをやるだけだと思っていた」

 久々に「日本代表」として臨む国際舞台をMF山内翔(筑波大)はそうシンプルに受け止めていたと言う。

 実際、ピッチに立てば「久々」を感じさせないプレーぶりだった。積極的にボールを引き出してパスをさばき、的確な位置で味方をサポート。山内の“らしさ”はしっかり見せて、3-1での勝利に貢献した。

 もっとも、本人の評価は渋めである。

「スムーズにやれていたとは思うんですけど、2-0の状況で出たのにチームとしての戦い方として課題が出てしまった。結果だけなら『突き放せて良かった』ということになるかもしれませんが、失点したところも、失点したあとの時間帯も、自分は中盤の選手として教訓にしないといけないし、次の試合に活かさないといけない」

 そうやって厳しく戒めるのは、国際大会のシビアさを知っているからでもある。「目の前の試合を観ないと本当に痛い目にあうことになる」とする山内が、「もう4年前の話ですけど、あれを経験しているので」と語るのは、神戸U-18時代に出場した2019年のU-17ワールドカップ・ブラジル大会だ。

 優勝候補で欧州王者だったオランダを破るなど勢いに乗っていたU-17日本代表はラウンド16でメキシコと対戦。破竹の勢いに見えたチームだが、落とし穴が待っていた。

「本当にあのときが典型でした。メキシコに勝ったらベスト8はここが相手かな、その次はどこかなとか、先を見てしまっていた。あのメキシコ戦にスタートで出た選手として、本当にそこは強く感じているので、この大会ではまず次の試合のことだけを考えたい。僕がこの代表に入るのは今回が初めてですけど、そこは全く関係ないと思っているので、ああやって自分が経験したことはチームに還元したいですし、伝えなきゃいけないと思っています」

 国際経験の浅い選手が多い今回のチームにあって、若い時期から国際大会に出てきて場慣れしている山内の存在は小さくない。そうした経験値に加え、大岩監督が目指すチームの方向性も、山内の個性を活かせるものだろう。

「自分も監督の求めるものに対してやり甲斐を感じていますし、練習でやっている中でも良くなっている感触はあるので、実際に試合でこれを出していければ、自分も生きていくと思う。その上で自分にしか出せないことを出せないようだと生き残ってもいけないと思っている」

 止める・蹴る・運ぶといった基本的な技術レベルの高さと鋭い戦術眼を持つ山内は、大岩サッカーの肝であるアンカーへの適性は間違いなくある。あとは本人が語るように、「それを実際の試合でどれだけ出せるか」どうか。

「本当に毎日やっていて楽しいし、充実している。国際大会に出られるのは本当に選ばれた人にしかできない経験なので、まずは次の試合。そこへ向かってみんなでしっかり準備して、自分にできることはすべてやっておきたいと思っています」

 神戸と筑波で培ってきたモノをすべてぶつける。山内翔の「次の試合」での輝きに期待したい。

(取材・文 川端暁彦)

●第19回アジア大会特集ページ
川端暁彦
Text by 川端暁彦

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