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U-17日本代表 U-17ワールドカップメンバー発表 森山佳郎監督会見要旨

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森山佳郎監督

 日本サッカー協会(JFA)は25日、都内で記者会見を行った。11月開幕のFIFA U-17 ワールドカップ インドネシア 2023に臨むU-17日本代表メンバー21人が発表され、会見では森山佳郎監督とナショナルチームダイレクターの山本昌邦氏が質疑に答えた。

 U17アジアカップで2連覇を果たした日本は、3大会連続のU-17W杯出場を決めた。大会は11月10日に開幕し、グループDの日本は11日のグループリーグ初戦でポーランド、14日の第2戦でアルゼンチン、17日の第3戦でセネガルと対戦する。

●山本昌邦ナショナルチームダイレクター
「代表チームをいつも支えていただきまして、特に、パートナーの皆さんには本当に感謝しかありません。いつもありがとうございます。この大会に限らず、いつも選手のためにご協力をいただいてる学校関係者の皆さん、そしてクラブの皆さん、U-17で言うと未成年の子供たちを温かく見守ってもらって、応援してもらって、そして、この世界大会に送っていただける。ご協力に感謝申し上げます。W杯を目指すというところで、森山監督は世界の基準をU-17で知っている最も経験のある監督。新しい歴史をこの大会で、インドネシアで築き上げてくれるということを、本当に期待している。ぜひ皆さんのご声援ご支援がすごくエネルギーになると思うので、会見を聞いていただいて、さらに日本の皆さんがひとつになって、一体になって、応援してくれるような雰囲気を作っていただけたらと思っている」

森山佳郎監督
「本当に日頃から、年代別代表の活動に対して、ご理解、ご協力、そしてご支援、ありがとうございます、特に今回選ばれた選手たちはリーグ戦さなか、あるいは高校選手権の予選のさなかに、本当に大事な時期に、重要な選手を派遣していただけることを、心から感謝しております。そして何よりも、この度選ばれた選手たち、おめでとうございます。ただ、自分たちの力だけじゃなくて、本当に日頃から支えてくださる、あるいは関わってくださった皆さん方のご協力あってこそのこと。感謝の気持ちを忘れないで、本大会で力を爆発させてほしい。そしてもうひとつ、自分は選ばれるだろうと思っていながら、残念ながら落選した選手たちがいる。本当に心が痛むが、この悔しさを強烈な反発のエネルギーに変えて、ここから先、上の代表で逆転して、本当にあの悔しさ、あの挫折があったから自分がここまで来れたんだと言ってもらえるような頑張りを見せてほしい。それも含めて、このU-17の活動、これまでやってきた活動だと思っているので、そういう選手たちの気持ちも背負いながら、なんとかインドネシアの地でいい成績を収めて帰っていきたい」

──森山監督は過去2大会を経験済み。その経験を今回の選考にフィードバックしたことはあったか。
「もう相手が違うし、プレー強度というか、フィジカル的な部分もそう。今回もアフリカとかFIFAランク1位のアルゼンチンとか、そういう相手と戦うというところで、その相手と戦うときにこの選手は躍動できるんだろうかというところは、必ずひとつの見方としてはあった。国内でプレッシャーがない中でうまいプレーをしていても、結局激しいプレッシャーを受けたときに何もできなくなってしまう。そういう選手も過去たくさんいたし、そういう選手もどこかでまた成長してということはあるが、この現時点でもう選ばざるを得ないので。将来性というのもあるが、僕らはA代表に繋がるような選手にできるだけいい刺激を与えたい。過去10年前、20年前は、このアンダー世代で選ばれた選手がほとんどA代表に入らないということを言われてきていた。このところ少しずつだがそういう選手が、今回も中村敬斗とか、久保建英、菅原(由勢)、(鈴木)彩艶とか色々、そういうアンダー世代のワールドカップとか、あるいはワールドカップは行けなかったけど代表活動で育成年代から海外の国と切磋琢磨してきたような選手たちが代表に入ってきている。選んで刺激を与えていく選手というのは、間違ってないんじゃないかなというのは感じている。ただ、今回も将来性はあるけど今じゃないなみたいな、将来性だったらこっちのが上じゃないかというのもあったが、やはり将来性だけでは勝負の世界なので、これまでの活動の中ではそういう選手たちに刺激を与えてきたが、この本番で、この相手に対して一番力を発揮できるメンバーということを考えて選考した」

──前回のW杯はグループリーグが好調だったが、トーナメントでメキシコに敗れた。そこで得たものはあるか。
「前回は本当にグループステージで死の組と言われた。今回もそれに変わらないぐらい厳しいグループ。前回もヨーロッパチャンピオンのオランダに3-0というまさかの得点差で勝つことができて、グループステージを1位で突破できた。ブラジルのメディアの方も、グループステージで一番よかったのは日本だと言われながらも、決勝トーナメントになって本当にチャレンジする姿勢がなくなってしまった。自分の中でも、なんでこうなっちゃうのというような部分があった。やはりそこでブラジルのメディアとかも言ってたことで、僕も本当に覚えていて、そのグループステージでいくら良くても、本当にここから、ここからが戦いなんだというところで力を発揮できなかった日本みたいな。そこで消極的になってしまったというか、やはりそこでギアを1つ、2つ上げるチームじゃないと、上に勝ち上がっていけないということは強く感じている。というところで逆算して、今回もグループステージはなかなか突破するのも厳しいが、そこでいっぱいいっぱいでやっとのことで突破できた、では多分上に勝ち上がっていけない。まず、こういう年代の選手なので、いろんな選手をフィールドに出して経験させながら、あるいは競い合いながら、できれば余力をもって決勝トーナメント1回戦、その辺で1つのピークが来るような感じでイメージして、決勝トーナメントに入ってからが本当のワールドカップだよと言えないと。上の年代、U-20とかオリンピック、A代表でもそこでエネルギーを使い果たしてるようでは、上の準決勝、決勝とか狙えるような、そういう戦いはできない。できれば、おそらく相当厳しいとは思うが、グループステージを突破した時に、さあこれから始まるぞ!と言えたらいい」

──本大会への手応えはあるか。
「僕はまだまだ足らないところばっかりだと思っている。やや出力的には足りない選手が、特に中盤の選手はボールを扱うのは上手いけど、例えば守備で奪い切る力とか、戦う部分というのはまだまだ足りない選手が多い。そのあたりはキャンプ初日からそっち側に振り切ってやる。今まではかなり個人戦術の部分とか、技術、テクニックの部分とか、個人個人に働きかけながら、あるいは攻撃も丁寧にやりながら作ってきた。アフリカチャンピオンのセネガル、FIFAランク1位のアルゼンチン、ポーランドもヨーロッパ3位だが、優勝したドイツに終盤まで3-3で最後にやられたという感じ。その後の準備段階のトレーニングマッチで6試合連続4点以上入れて、国際ゲームでは圧倒的な力を出している。そういうところと戦う中でかなり守備をしないといけない時間もあるし、ボールを奪えなければ僕らの攻撃ができないというシーンもある。アジアのときは僕らが攻撃を構築しながら、ちょっと相手もリスペクトしてくれた中で、ちょっと気持ちよくボールを動かせた。だが、そういうゲームとはまったく違う様相を呈してくる。もしかしたらマンツーマン気味で、フィジカルの強い相手が完全に潰しに来るかもしれない。そういう意味では、攻撃がなかなかできない、あるいは向こうのフィジカルベースにした戦い方の中でボールを奪えないという局面もある。合宿初日からその辺の僕らの足りない強度の部分は、大学選抜ともトレーニングマッチできるので、テーマとして本番までにもう一段階上げていきたい」

──今大会の目標はあるか。
「2006年生まれ、06ジャパンと言っているが、彼らには発足当時からベスト4を目指そうぜと言ってきた。そこから徐々に自信をつけながら目標設定を上げていこうという作戦。いまA代表の森保監督はじめ選手たち、あるいはUー20の選手たちも優勝優勝という言葉で、僕は言ってなかったので、なんでお前は言わないんだって、あのちょっと厳しい目を向けられるところもあった(笑)。ただ、この世代は根拠もなく優勝というのもまだまだ難しいかなというところで、国際大会をしながら優勝したね、じゃあもうちょっと上を目指せるねみたいな。そういう段階で最後ワールドカップ迎える前に優勝しようぜと言おうと思った。だけど、アジア杯が終わって最後フランス遠征に行ったが、そのキャンプでフランスに0-2で敗れた。これじゃ優勝とは言えないねという感じ。一応ひとつだけ上げてファイナリストになると。決勝に進んで最終日までプレーする。7試合を行う。W杯で1試合行うごとに信じられないような成長をしていくので、3試合で終わったらもったいないし、4試合じゃなく5試合じゃなく、ベスト4までいけば3決、準決勝、決勝と。そういう試合数をこなしていきたい。最後の最後まで残っていきたいねという話。でも最後まで行ったら、優勝しろよっていう話だけど(笑)。とりあえずちょっとひとつ上げたけど、あまり根拠もなく優勝優勝と言うのではなくて、こういう17とかで失敗も成功も含めて、嬉しい思いとか悔しい思いをしながら、上の年代でさらに高い目標を持っていけばいいと思う。初めてこういう世界大会を戦う選手たちが、1試合でも多く戦うこと。よく菅原とかあいつらが言うが、決勝トーナメント1発目でフォーデンとかイングランドと戦って、圧倒的に優勝したイングランドが点を入れなかったのが日本。0-0でPK負けだったが、谷(晃生)が触りながらも取れずに負けてしまった。その彼らが、あのイングランド戦があるから今の俺たちがいるみたいな、そういう自信というか、どこでやっても俺ら全然怖くねえぞみたいな、そういうメンタリティをつけていく。そういう経験をさせてあげれたらいい。自分の決意は……まぁ死ぬ気でやるだけです。結果はお約束はできないが、寝ずにとは言わないが、睡眠時間少なく頑張ります」

──このチームの特徴は何か。
「2000年(生まれ)のチームは本当に個人個人のキャラクターが濃く、本当に勝手なことするような奴らをまとめないといけないという難しさがあった。前回のチームは総合的にはかなりいいチームで、どこでやっても負けないなという自信を持って乗り込めた。今回のチームはまだまだ伸びしろがあるなというか、もしかしたら大化けする。もしかしたら、お前らこんなしょぼい負け方したのか、と言わないといけないような可能性を秘めている。その辺はうまく試合の流れで乗っかっていければ。アジア杯も初戦ウズベキスタンと引き分けスタート。負けそうになったぐらいのスタートから試合をこなすごとに成長していけた経験もある。今回も一戦ごとに成長できる。コロナ禍でまだまだ経験が少ない選手たち。中2、中3、高1ぐらいが(コロナ禍)。中3のときは全国大会とか、あるいは海外キャンプも一度もできなかった。高校1年のときにやっとちょこちょことできたというところで考えると、これまでのグループよりもかなりそういう経験が少ない。この前のフランス遠征で初めて、トップ10と言われるような国と試合することができて、ガツンとやられたというグループ。まだまだ経験が少ないと思うが、キャラクター的には面白い選手たちはいる。そういう選手たちが自信つけて持っていけば、爆発力も秘めているのではないかと。そういうものを表にバッと出してあげれるような働きかけをしていきたい」

──アジア杯はFW3人。その選手たちを入れ替えることなく、今回井上愛簾徳田誉の2人が増えた。その意図と期待するところは。
「この1か月弱、スタッフで見逃すことなく見てきた。この年代というのはFWにいい選手が多い。選べなかったがまだ選びたい選手がまだ複数いる。名前とか言ったらまずいですよね(笑)。本当にギリギリで外した選手はポテンシャルがかなりあって、最近ググってきた選手もいた。選びたかったが選べなかった。ただ、徳田はアジア杯の予選では主力として活躍していて、アジア杯は怪我で来れなかった。元々このグループでも中心でやってた選手が帰ってきた。アジア杯では(徳田分)1人マイナスで行ってたので、これは普通に戻ってきた。広島の愛簾選手は、広島のBalcom BMW CUPという大会で観た。アジア杯に行かなかったU-17で参加した大会だったが、そのときに対戦相手の広島にいた。もう把握はできていたが、そのとき僕らに対して強烈なシュートをねじ込んですごく嫌だなというところで、本人にもそのとき話はしたが、お前は入ってこいよと発破はかけていた。その後フランス遠征に連れていき、イングランド戦で2ゴールするという。そして、このチームの中心のボランチで中島(洋太朗)というのが広島。彼との相性が抜群で、お互い気心知れていて、中島が持ったら背後に走り出してというようなシーンから、この3週間ぐらいでもう本当に何点かその形から取っていた。これはそのままワールドカップで使えるなという、そういう主力の選手との相性の良さもある。そんなに大きいわけじゃないが、その戦闘力というか、グリグリ体をぶつけていける。フィジカル的に強靭とまでは言えないが、やっぱりメンタリティが良くて、体を張ってボールをなんとか自分のものにして、味方に預けてまた背後に走っていくようなそういう部分が、この1か月2か月で強烈に上がってきた。その前までは広島でも出てなかったが、この1か月2か月でかなり力を上げてきて、そういう旬と言えば旬の選手でやってくれるんじゃないかなという期待を持たせてくれた」

「FWの枚数について、フィールドプレーヤーが18人なのでどこを削るかということで、もうずっと何回もミーティングをしてきた。ここを外したら、でもこうなったとき困るぞみたいなところで、それなのにFWを余分に4枚以上入れたというところでは、ゲームシチュエーションとかいろんな状況がある。例えば1人大きい選手がいて、もう本当に負けてる状況のところで、もう1人大きい選手が入ると。こいつが待ってたときにもう1人行けるとか。特に負けているときに、負けているままじゃなくてなんとか殴り返して、もう1点取られても2点返しに行くぞみたいな戦いをしようと思ったときに、やっぱり前線の選手のフレッシュさとか飛び込む迫力とか、そういうものは出していきたいという意味でもFW。下手したら毎試合スタートを変えて、途中でまた変えていくみたいな戦い方も含めて。この年代はFWの選手が多い。特長のある選手が多いだけに、それを伸ばさない手はないかなと。その分、SHとかボランチも3枚、CBも3枚。この辺が薄くなる分、布施(克真)という日大藤沢の選手が、ある意味どこでもボランチもサイドもできる。まだチームではスタメンではないが、ボランチもサイドバックも、センターもできるみたいな、そういうユーティリティーのある選手がいるから、困ったときにはこいつここできるなというところで、布施くんというのが入ってきた。その分、今まで選ばれた選手で悔しい思いした選手も出てきたところはある。あとは、まだ怪我が治っていない選手もいる。一応選んだぞというとこで、道脇(豊)とか永野(修都)とか。彼らはまだ骨折からゲームに復帰してない。彼らが本当にできるのかどうかはチェックして、今のところはできるという見込み。差し替えも大会前日までできるので、しっかりコンディション調整しながら、試合が始まるぐらいにコンディションを上げてくれればいい」

──トレーニングパートナーが4人、そのうち2人は現地まで帯同する。怪我人がいるから現地まで連れていくのか。
「それもあるし、フィールドプレーヤーが18人なので、向こうでトレーニングするときに11対11をやりたい。そのメンバーを確保した。彼らには次の世代の中心になってほしいという意味も込めて帯同してもらって、そこで色々経験してもらう。1試合ゲームを見て帰ってもらうので、そういう大会の雰囲気とかも味わって帰ってもらうというところ。国内にも2人追加してサポートしてくれる。コンディションがまだ整わない選手や、選手権予選が終わって疲れてしばらく休ませたほうがいい選手とかそういうところもあるので、2人追加した」

●山本ナショナルチームダイレクター
「データ的なご報告だが、ここまでU-17は安定して世界大会に出れるようになってきた。そして、先ほど森山監督から話があったように、世界のトップレベルで何人も活躍するような成長にうまくつなげてもらった。過去の積み上げの数字だが、ここまでU-17は世界大会で13勝6分14敗。ひとつ負け越している。歴史的な転換点として、世界でU-17が勝ち越していくことをずっと続けていけるような、そういう時代になろうかと思う。テレビ中継もあるし、それを見ていただいて、歴史が変わっていく日本サッカーの勢いを感じ取ってもらいたい。彼らは2026年の北中米W杯のときに20歳もしくは19歳というところ。道脇もそうだが、実際にJリーグでプレーしている選手がU-17には何人もいるというスピード感がある。U-20W杯が2025年、そして2026年の北中米W杯にこの中から何人か入っていくという、そんな流れができてくれば。今いるサムライブルーの前線の選手たちのクオリティやレベルはすごく上がっている。それを乗り越えるような選手がこの中から出てくる可能性があるという夢を持ちながら、ぜひテレビもしくは現地で応援をしてもらえれば。日本の未来が、この子どもたちがやってくれるんじゃないかと思う。ぜひ期待をしていただきたい」

(取材・文 石川祐介)
●U-17ワールドカップ2023特集ページ
石川祐介
Text by 石川祐介

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