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「アジアをナメてるだけ」の屈辱的敗戦に10番・堂安律「チームが悪い時は俺が必要になってくる」

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 日本代表にとって35年ぶりのグループリーグ黒星という屈辱的な結果を経て、決勝トーナメント進出をかけて臨むインドネシア戦。ここまで2試合続けてベンチスタートだったMF堂安律(フライブルク)は今大会初先発が見込まれる中、気迫に満ちあふれた様子で前日練習を終えた。

 決勝トーナメント進出条件は引き分け以上。敗れても3位通過の可能性が残っているが、楽観ムードを引き締めた。

「みんな(ラウンド16)で日韓戦があるんじゃないかとかいろんな話をしているけど、まだ決まっていない。インドネシアだってベトナムに勝っていて、その相手(ベトナム)に苦しんだ。インドネシアも勝てば可能性がある中で、先を見ている場合じゃないと思う。森保さんはいつも言っているけど、1試合1試合やっていく中で先に優勝があると。それがいま必要な言葉だと思う。目先の試合にまず集中して、そこから先のことを考えたい」

 後半16分からピッチに立ったイラク戦後、多くのシュートを放ちながらも無得点に終わったことには「決定機を決められないというのは自分の課題」と振り返った堂安。それでも屈辱的な敗戦を受けて、自身が2ゴールを決めたカタールW杯敗退直後に宣言した「ずっとエースになりたいと言っていたけど、これからはリーダーにならなくちゃいけない」という使命感にみなぎっていた。

「悪くなった時にどれだけチームにリーダーがいるか。上手い選手だけじゃ勝てないのは全員がヨーロッパで戦っている中で分かっている。チームの中にリーダーが多ければ多いほど立て直せる力があるチームだと思っている。上手いチームから強いチームに変わっていくために良い試練が来ていると思う」(堂安)

 そう話した翌日、堂安はDF中山雄太(ハダースフィールド)とともにいち早く練習場のピッチに立った。イラク戦の先発メンバーはホテルでのリカバリー調整だったため、練習が閑散とした雰囲気になりかねない中、積極的に周囲とコミュニケーションを実施。次の出番を狙うサブ組に更なる活力をもたらしていた。

 その日の振る舞いについて堂安は「いつも通りやっているつもり。もちろんこういう時に出てくる選手が必要なのは分かっているけど、かといって普段してないのかってことになってくるので」とサラリと振り返る。しかし、いまやるべきことは誰よりも分かっていたつもりだ。

「チームがいい時は基本的に活躍しやすい環境にある。チームが悪い時、いわゆる活躍しにくい環境で誰が立ち上がって活躍できるか。まさにチームを助けられるかだと思う。そういう選手になりたい」

「大会前は全選手がコンディションが良かったし、チームがいい状態だった。そこで監督が(選手を)代えづらかったし、調子が良いのに代えられる選手は納得いかないと思うし、その状況は理解していた。ただただチームが悪くなった時には俺が必要になってくると自分のメンタリティー的に分かっている。自分がやってやろうと思っている」

 過去2戦では前半のうちに失点が重なり、苦しい展開に持ち込まれた。その姿をベンチから見つめた堂安は「勝つために最悪、前半0-0でOKという形も持たないといけない。それはW杯で僕らが学んだはずなのにアジア杯でできなくなっているというのは、やっぱりアジアをナメてるだけだと思う。1点差で勝てれば試合は勝ちなので、その感覚はもう一度持たないといけない」と厳しい言葉も口にする。インドネシア戦では立ち上がりから闘う姿勢を見せ、チームを変えていくつもりだ。

「まずはベースのところ。球際であったり、相手より走るとか、セカンドボールを戦うとか、背後を狙うとか、コンパクトなディフェンスで守るとか、抜かれたら一発でファウルでも良いから止めるとか。そういうところをやった上で自分たちのクオリティーを見せれば、絶対に負けちゃいけない相手。まずはそこからじゃないですか」

 チーム内では過去2戦からの反省を活かすべく、選手間のディスカッションが進む。セカンドボールの回収や最終ラインの押し上げなど、細かい部分にも話が及んでおり、敗戦を機に戦術面が突き詰められている。だが、その議論の中で堂安は「何も言ってません」と不敵に笑う。まずは新たに活力を加える者として、闘う姿でもってチームを蘇らせていく構えだ。

「戦術はもちろんあるし、ディテールもいろんな確認はしているけど、そこはもう日本は勝っていると思う。ヨーロッパで僕らは最先端のスタイルでやっている中で、(いまは)そこじゃないのかなと俺は思う。もちろんそこを突き詰めるのは大事だけど、相手が100%以上の力でやってくる中で、それ以上の力を出すのはメンタル的に厳しいかもしれないけど、できる限りそれに近いメンタリティを揃えないとああやって足をすくわれると思う」。

 リーダー宣言から1年、背番号10を託されて半年。真価を見せるべき試合がついにやってきた。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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