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「試練を与えて…」3戦連続起用に込めた森保監督の思い、差別発言も受けた鈴木彩艶「サッカーに集中できた」

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日本代表GK鈴木彩艶

[1.24 アジア杯グループD第3節 日本 3-1 インドネシア アルトゥママ]

 期待と信頼の表れであり、今後の成長を信じての先発起用だった。日本代表は引き分け以上でグループリーグ突破が決まる一戦にスタメン8人を変更。3試合連続で先発となったのはキャプテンのMF遠藤航と、21歳の若き守護神、GK鈴木彩艶(シントトロイデン)の2人だけだった。

 初戦のベトナム戦(○4-2)、第2戦のイラク戦(●1-2)と、2試合連続2失点の守備面には批判の声もあがっていた。「1、2戦目と2失点していて本人にもプレッシャーはかかっていたと思う」。森保一監督はそう認めたうえで、「彼はまだ若い。いろんな経験を積んで、さらに大きくなってもらうために、厳しいけど試練を与えて、チームの勝利に貢献して、成長してもらえればと思った」と、起用の狙いを明かした。

 イラク戦後にはSNSを通じて差別的な発言を受け、「控えていただきたい」と強く抗議した鈴木。試合前日の公式会見では森保監督も「我々の大切な選手であり、日本の大切な選手である鈴木彩艶に人権侵害の言葉、差別的な言葉を向けた人には断固として抗議したい」と力説し、チームとして全力でサポートしていくことを約束した。

 日本サッカー協会(JFA)も試合前に「SNSにわれわれが掲げるリスペクトとは異なる差別的発言、誹謗中傷などが投稿されました。断じて許されない行為であり、JFAとして断固抗議します」との田嶋幸三会長の談話を発表。「JFAは人権や名誉、プライバシーなどを侵害する行為を決して容認せず、法的措置も辞さない姿勢でその根絶を目指していく考えです」とした。

 鈴木は試合後、「チーム、日本サッカー協会全体で(差別的発言を)許さないという強い意志を示してくれた」と感謝。「自分の中で差別的な発言は気にする問題じゃないし、サッカーに集中できていた」と試合への影響はなかったと強調した。

 チームは3-1の勝利で決勝トーナメント進出を決めたが、後半アディショナルタイムにロングスローから1失点したことに、「最後は悔しい」と唇を噛んだ。それでも後半9分には相手のセットプレーに対し、果敢に飛び出してボールをキャッチし、すぐさまパントキック。前線に飛び出すMF堂安律にピタリと通し、決定機を演出した。

 鈴木の真骨頂ともいえる場面で、「クロスに対するところと、そこからチャンスを作るという部分はどんどん出していきたい」と胸を張ると、森保監督も「(鈴木)彩艶だからこその飛距離というのはチームとして共有し、武器として使えるというのを選手たちがあの状況で表現してくれた」と評価していた。

(取材・文 西山紘平)

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西山紘平
Text by 西山紘平

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