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動かないイラン陣営に交代策遅れた森保監督の悔い「延長勝負も考えられる中で…」

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森保一監督

[2.3 アジア杯準々決勝 日本 1-2 イラン エデュケーション]

 厳しい対応を迫られ続けた守備陣への修正は行われないまま、最後の最後にゴールを破られた。日本代表は後半アディショナルタイム3分、何度も狙われていたクロス攻撃からエリア内での連係ミスが起き、慌てて対応したDF板倉滉のファウルでPKを献上。同6分、これをMFアリレザ・ジャハンバフシュに決められ、早すぎる敗退が決定づけられるゴールを許した。

 1-0で後半を迎えた日本だったが、その後は相手のロングフィードに押し込まれる時間が続き、同点とされていた終盤は特に板倉と毎熊の上を一貫して狙われていた。決壊するのは時間の問題かと思われたが、選手交代は行われず、空中戦に強みを持つDF町田浩樹、DF渡辺剛はベンチに座ったまま敗戦を迎えた。

 試合後、交代に踏み切れなかった森保一監督は「相手のサイド攻撃が圧力になっていたので、3バックにすることやSBを代えることを考えてはいた」と振り返りつつも、1-1で試合が進んでいた中での起用に迷いがあったことを明かした。

「耐えていって、できるだけ前線の交代カードを切りたかった。守備で受けるのではなく攻撃のカードを切ることを考えた」。記憶に残っていたのは前日2日に行われたオーストラリア対韓国戦の逆転劇。1点リードのオーストラリアが5-4-1にシステムを変えた後、勢いを増した韓国に押し切られていた。

「オーストラリアが5-4-1にして下がりすぎてジリ貧になっていた。3バックにしたからといって守備的になるわけではないが、いままで守備的に逃げ切る局面で使っていたので攻撃の部分でシステムなどを変えたいと思っていた」。スタジアムがイラン応援ムードで声が通りにくい中、意識が後ろに向くような起用を避けたい思いもあったようだ。

 また決勝トーナメント1回戦で120分間を走り切っていたはずのイランが、試合中に全く交代カードを切らなかったことも逡巡する一因となった。実際に指揮官は後半22分、FW前田大然、MF久保建英に代わってMF三笘薫とMF南野拓実を入れ、最初の交代カードを切っていたが、思ったように劣勢を打開できていなかった。

「相手に南野と三笘を入れて推進力を上げることが狙いだったが、相手の対策もあり上げられずに試合が押されてしまった。(終盤は)守備で弾き返せる選手がいるのでどうしようかと考えたが、相手が交代カードを切っていないことで、時間を見て延長勝負も考えられる中で、そこでどう勝負をするか。相手の出方も見ながらどう上回れるかでカードを切ろうと思った」

 しかし、その狙いは大きく裏目に出た。

 欧州トップレベルで日々戦っている守備陣が、トップレベルの舞台で日々見せているようなパフォーマンスを発揮できていれば、その劣勢を耐えることはできたのかもしれない。しかし、この日はそうはならなかった。試合後、選手たちからはアウェーの雰囲気、トーナメントにかける熱量、日本相手の対策など、さまざまなチーム外の敗因を指摘する声が上がっていたが、それらはどれも相手の攻勢時にのしかかる。一つ一つが差となり、致命的な誤算につながり、この敗戦という結果に至った。

 試合後、報道陣の前に姿を見せた指揮官は「優勝を目指してここに来て、選手もスタッフも準備段階からチームのために100%日々頑張ってくれた。結果に結び付けられなかったのは監督として非常に残念」と自身に責任を向けつつ、昨年の連勝時のような結果をもたらせなかった理由を指摘。「アジアの戦いでピッチ状態、対戦相手の我々に対する警戒が非常に強く、対策がこれまでより厳しくなったと感じている。中東、カタールでの戦いで中東勢と戦うのは雰囲気的にも難しい。日本に対する対策を乗り越えていけるようにしないといけない。戦術的なところもそうだが、モチベーションのところで相手が非常に高く、死に物狂いでやってくるところを我々も必死に覚悟を持ってやらないといけない」と敗戦を噛み締めた。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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