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足りなかった勝利への執着心…冨安健洋が語るもう一つの解決への道「良くないときすら帳消しにする超越した選手に」

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日本代表DF冨安健洋

[2.3 アジア杯準々決勝 日本 1-2 イラン エデュケーション]

 すべてが物足りなかった。逆転負けでベスト8敗退が決まった試合後、日本代表DF冨安健洋(アーセナル)は「勝ちへの執着心が足りなかった。良くないときに声を出すとか、プレーで、DFだったらがっつりボールを奪って雰囲気を変えるとか、攻撃陣ならドリブルを仕掛けて雰囲気を変えるとか。それはこのチームにないところ」と課題を正面から受け止めた。

 言葉はなおも止まらず、「淡々とやるだけじゃなくて、何かを変えようとする選手がもっといないといけない。昔のことは知らないけど、僕が代表に入ってから成長できていないところ」ともどかしさを前面に出した。

 日本は前半28分にMF守田英正のシュートで先制に成功したが、1-0とリードしていてもピッチ内ではさまざまなところで“ズレ”が見受けられた。

「前半に前の選手に言っていたのは、相手のセンターバック2人が広く取っていたので、できれば2トップじゃなくて、(前田)大然くんや(堂安)律のところで外からプレッシャーをかけること。それを言いたかったが、ゲームの中でなかなか言えず、ハーフタイムに話して修正をかけようと思ったけど、そうなる前に押し込まれた」

 ハメ方の部分だけでなく、球際の厳しさや相手より走るという部分でも劣っていた。「寄せのところはまだまだ足りないと感じたし、後半は運動量も落ちて、一人ひとりがバラバラになって一歩遅れるとか、そういうシーンがかなり見受けられた」と指摘する。

 後半10分に同点とされると、その後も押し込まれ、際どいオフサイドに何度か助けられながらも最後まで立て直せなかった。迎えた後半アディショナルタイム3分、日本はまたもハイボールから攻め込まれ、PA内の対応で冨安とDF板倉滉がかぶってイランの選手にボールがこぼれる。思わず板倉が後方から倒してしまい、PKを献上。これを決められ、1-2と逆転を許した。

 冨安は「コミュニケーションを取って、僕が声を上げたが、ギリギリの判断になってしまった。ペナルティーエリア内で大振りもしたくなかった。でもハッキリやるべきだった」と悔やむしかなかった。

 優勝候補筆頭とされて今大会に臨んだが、ベスト8で敗退。目標にたどり着けずに敗れ去るのはカタールW杯と同じだが、「W杯のあととはまた違う感情ですね」と言う。その感情とは何か。「イラクやイランという中東勢に苦戦して、中東勢の勝ちへの執着心に劣ったという見方もできなくない。僕も含めて足りない」と率直に言う。

 では、足りないものを補うには何が必要なのか。「難しい状況に陥ったときに何ができるのか。良いときはだれでもできる。良くないときに何ができるかを求めていかないといけない」。そう言って最後に付け加えたのは「良くないときすら、それすら帳消しにしてしまうクオリティー、能力。前の選手も含めて、超越した選手になるというところも一つの違った道」という方法論だった。

「できることはチームに帰って少しずつでも成長していくこと。僕もアーセナルに帰ったらスタメンを取らないといけない立場なので、まだまだ成長しないといけない」。すべてをレベルアップすることしか勝利への道はないと強調した。

(取材・文 矢内由美子)

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矢内由美子
Text by 矢内由美子

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