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生まれも育ちもスペイン。U-16日本代表の新星DFバンデラ吉田健太、母の故郷を背負って奮闘中「とにかく前進するだけ」

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スペイン語で取材に応じたDFバンデラ吉田健太

 ベティスのカンテラ(育成組織)に所属する日本人選手が、年代別の日本代表に選出されたのは今年2月のこと。3試合の国際親善試合に挑むU-16日本代表の一員として、初めて日本代表のユニフォームに袖を通すことになった。そこで確かな力を披露したDFバンデラ吉田健太は今回、第51回モンテギュー国際大会に臨むU-16日本代表に再び選出。自身の力を示す舞台に挑んでいる。

 父がスペイン人、母が日本人というバックボーンを持つ吉田は、スペインで生を授かった後、ほとんどの時間を日本から遠く離れた地で過ごしてきた。住んでいる場所はアンダルシアの最南端となるカンポ・デ・ジブラルタル。日本のコミュニティもなければ、日本人自体がまったくいない。そんな場所で日々を送ってきたからこそ、スペイン語が第一言語となり、勉強はしているものの日本語はまだほとんど話すことができないという。

 そんな吉田は地元のクラブチームでプレーした後、5年前にベティスの下部組織に加入。CBを主戦場に左SBなどでもプレーし、一つずつステップアップを続けてきた。今季はカデーテA(U-16)に入ったが、数試合程度出場したところで、さらに上の年代となるリーガ・ナシオナル・フベニールに昇格。今はそこで仲間たちと切磋琢磨しつつ、トップチーム入りを夢見てトレーニングに励んでいる。

 モンテギュー国際大会の初戦となったU-16メキシコ代表戦では、左サイドバックとして先発出場を飾った。試合前に大雨が降ったこともあり「ピッチ状況が悪かった中でボールがどのように転がるのか」を掴むのに時間がかかり、そこのフィットに遅れたことで「もう少しいいプレーができた」と振り返る。それでも、攻撃面では自身の武器と語る「スペースを見つけて運んでいく」推進力を見せれば、セットプレーではルーズボールに対して素早く反応。二度のシュートチャンスは惜しくも枠を捉えなかったが、こぼれ球に対する嗅覚を見せてゴールに迫った。

 一方、守備ではチームとしての相手との兼ね合いもあり、吉田のサイドで数的不利を強いられるシーンが散見。クラブと代表の違いとして「よりフィジカルレベルの高いところでプレーしている」こともあって対峙した際に奪い切る強さを見せる場面もあったが、後手に回る守備になってしまうことも多く、前半のうちにファウルでイエローカードをもらってしまったことで、この試合ではハーフタイムでピッチを去ることになった。

 この日はもう一つ自分の良さを出すことはできなかったが、日本でプレーしている選手とは異なる勝負どころの見極めなど、唯一の海外組がチームにもたらす刺激も大きいと廣山望監督は語っている。

「細かいテクニックなどは日本の選手のほうが上手いですけど、ここぞというところでボールに行けたり、ゴール前に現れたり、理屈ではなく、個人戦術で解決できる部分がある中で、どこが大事かというツボを押さえている。そこはスタッフが何かを言わなくても他の選手も認めている部分があると思う。それは一緒にいてくれてすごく影響があると思います。お互いに足りないところがあると思うので、追いつけ追い越せでやっていってもらいたい」

 まだまだ言語の壁に苦労するところはあるが、「代表チームのために戦い続ける、日本を背負って戦うという気持ちが僕たちを団結させ、仲間意識に繋がったり、お互いを助け合う場面がたくさんあると今日も感じた」と吉田自身も新たな刺激を受けている様子。加えて「日本代表でプレーすることは誇らしいし、100%の気持ちでプレーできている」と日の丸を背負うことへの喜びも感じている。

 スペインと日本の国籍を持つ中、「今後ももし招集してもらえるなら前進していきたい」と将来のA代表にも視線を向けた吉田。「クラブでも代表でもとにかく前進するだけ。次のレベルに向かってよりステップアップしていきたい」と語る男が、ここからどんな成長を遂げていくのか楽しみでならない。

(取材・文 林遼平)

海外組で唯一の選出

左サイドバックで出場

サイドでマッチアップをこなした

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